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2019.12.06

「台湾における供述証拠の心理学的分析」を共催【犯罪学研究センター】

台湾における法と心理学会の状況、供述分析について

2019年11月13日、犯罪学研究センター講演会「台湾における供述証拠の心理学的分析」を共催しました(於:本学深草キャンパス 至心館1階)。当日は約20名の方に参加いただきました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-4036.html


今回の講演会では、趙儀珊 助理教授(Teoh、 Yee-San;國立台灣大學心理學系暨研究所)による研究報告が行われ、笹倉香奈 教授(甲南大学法学部/本学犯罪学研究センター客員研究員)が通訳を担当しました。趙 助理教授は、台湾における供述証拠の心理学的分析の専門家で、これまでに裁判において20件の専門家証言を行っています。


趙儀珊 助理教授(Teoh、 Yee-San;國立台灣大學心理學系暨研究所)

趙儀珊 助理教授(Teoh、 Yee-San;國立台灣大學心理學系暨研究所)


まず心理学的分析に関する現状が紹介されました。台湾では、供述心理学に関する専門家が、捜査段階と公判段階の両方に関与します。捜査段階においては、目撃者や被害者の証言自体、また面接に不適切な点がないかどうかついての意見を提供したり、面接時に仲介者(intermediary)として同席して意見を述べたりなどしています。公判段階でも目撃者・被疑者の証言や面接に問題がないかについて専門家証言を行いますが、上訴された場合、その公判においても意見を求められることがあります。これまでに趙 助理教授が専門家としての意見を求められたのは、半分は裁判官からで、残りの半分は弁護人からの依頼でした。

つぎに実際の事例における問答をもとに、分析のポイントが紹介されました。分析は、捜査段階での面接ビデオや調書以外にも、精神鑑定書や教育機関のレポートなどを用いて行います。これらの資料をもとに、面接の文字起こしからは言語的な情報、面接ビデオからは非言語的な情報を抽出して、問題のある質問を指摘します。そのうえで、目撃者・被害者の供述に誘導質問の影響はないか、第三者からの汚染はないか、あるいはその他の要因による影響がないかを検討し、鑑定書を作成します。
専門家証言の内容が公判にどのような影響があったかはわからないことが多いのですが、趙 助理教授による心理学的分析の鑑定書が判決文に反映されたこともありました。さらに趙 助理教授らは、供述に関する心理学的分析について警察、検察、裁判官、弁護人らを対象に研修会を行い、面接の分析手法のトレーニングも提供しています。このように台湾では、供述証拠の心理学的分析の重要性が徐々に広がりつつあります。

講演後、仲真紀子教授(立命館大学総合心理学部)より日本の心理学鑑定への裁判官の反応や、仲介人としての責任などに関するコメントがありました。台湾同様、日本でも心理学的意見は供述の信用性判断に対しては求められていないこと、面接トレーニングを提供することで生じる面接結果に対する専門家の責任などについて意見交換が行われました。