龍谷大学付属平安高等学校入学式学長祝辞

2012.04.05

龍谷大学付属平安高等学校の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。希望と可能性に満ちた未来に向かって、今日、新たなスタートを切られた皆さんに、龍谷大学を代表して、心からお祝いを申しあげます。

保護者の皆さまにもお祝い申しあげます。9年間の義務教育は終わりました。これからは、お子さん自らが自分の将来をしっかりと見据えながら、確かな学力と豊かな人間性を身につけ、そして大人へと成長していくようになります。そういう人生の区切りの時を迎えられたのです。お子さんを、時には励まし、また、時にはしっかりと見守り,支えてくださるようお願いいたします。

東日本大震災に伴う大津波は、たくさんのかけがえのない命や大切なものを奪いました。宮城県気仙沼市でカキの養殖をされている畠山(はたけやま)重篤(しげあつ)さんも、養殖用のイカダや船など、仕事に必要なものをほとんどすべて失なわれました。それだけでなく、お母さんも亡くされ、絶望の淵に立たれたそうです。しかし、それでも海を憎んではいないとおっしゃっています。三陸沿岸の人々はこれだけ痛めつけられても、誰も海を恨んでいないということです。それは、海が豊かだからです。 

畠山さんは、20年以上も前に豊かな海には豊かな森が必要だと気づかれ、気仙沼の海に注ぎ込む川の上流の山々に落葉樹の森を復活させるプロジェクトである、「森は海の恋人」運動を続けて来られました(*1)。

津波にどう立ち向かうかではなく、命の揺りかごであり、同時に命を奪うこともある海や山と、うまく付き合っていくことがずっと重要だ、という畠山さんの言葉から、私たちは深いメッセージを受け留めたいと思います。龍谷大学と同じく、浄土真宗の教えに基づく教育に取り組んでいる付属平安高等学校に入学された皆さんには、これから、命と向き合い、その大切さを感じ、考え、理解し、その上で行動できる人になることが期待されています。ぜひ、畠山さんの言葉の重みをよく噛みしめ、味わってほしいと思います。

命の大切さというのは“ともに生きる”ことの大切さであり、人と人との絆の大切さのことです。絆を築くためには、コミュニケーションの力が必要です。

上手にコミュニケーションし、絆を深めるためには、まず何よりも、相手が伝えようとしていることを、耳を澄ませて聞き、理解しようとすることが大切です。特に友人関係のような場合は、聞くことが一層重要になります。お互いに相手の話に耳を傾けることで、しなやかで強い絆がつむがれると思います(*2)。聞く力を養い、コミュニケーション能力を高めることは、今後、皆さんが社会で活躍し、社会に貢献していく上で、必ず役に立つことを確信を持ってお伝えいたします。

平安高校のすべての先生は、日々、生徒一人ひとりと真剣に向き合い、それぞれの個性に応じた成長を促すために、熱心に教育や生活指導をされています。このような先生の一つひとつの言葉をしっかりと聞いてください。また、課外活動など、仲間とともに取り組むさまざまな活動を通して、お互いに理解し合うことの大切さや、関係を築き上げることの大切さと喜びを学んでください。さらに、いろいろな知識も獲得してください。知識が豊富になるほど、人の話を理解しやすくなる、つまり聞く力が向上し、自分の可能性が広がります。授業はもちろん、読書やさまざまな経験を通して、知識を貪欲に求めてください。 高校の3年間は、人生の中で心とからだが最も飛躍的に成長する時です。どうぞ、仲間たちと切磋琢磨しながら、支えてくださるすべての人に感謝する気持ちを忘れることなく、夢の実現に向けてがんばってください。

龍谷大学は、独自の「高大連携教育プログラム」などを通じて、皆さんの学びと卒業後の進路を力強くサポートします。3年後、さらに豊かな人間性と広い学識を持った人間になるべく、多くの人が龍谷大学で学ばれることを期待しております。

龍谷大学の付属高校であることのアドバンテージを活かして、実り豊かな高校生活を送られることを、そして皆さんの前途に輝かしい未来があらんことを願って、私の祝辞といたします。

本日は、まことにおめでとうございます。

2012年4月5日

龍谷大学学長 赤松 徹眞


(*1) 『朝日新聞』2012年2月22日朝刊、オピニオン面「イオンタビュー 海はよみがえる」による。
(*2) 参照、伊藤進『〈聞く力〉を鍛える』(講談社現代新書、2008年)

このページのトップへ戻る