学長挨拶

龍谷大学の歴史は1639(寛永16)年に西本願寺境内に設けられた教育施設「学寮」に始まります。この間、本学は幾度ものにわたる時代社会の激変を経験しながら、幾多の改革を積み重ね、学林、大教校、大学林、仏教大学などと名称を変え、1922(大正11)年に大学令による認可をうけて龍谷大学と名を改め、戦後、1949(昭和24)年に新制大学の認可をうけ、今年で378年目を迎えました。創立以来、「浄土真宗の精神」を建学の精神として、釈尊、親鸞聖人のご生涯に学び、その生き方を指針とした教育・研究の灯火を連綿と絶やすことなく受け継ぎ、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間の育成に努め、学術研究での多くの成果を社会に還元して、豊かな学術文化を形成し、諸科学の進展による社会の発展に寄与してきました。その長い歴史の中で培われてきたのは、新たなフィールドに挑戦する進取を尊ぶ伝統であり、本学ならではの深い人間洞察による滋味溢れる個性、そして学術研究に培われた誇りうる総合的な知力です。
さて、大宮キャンパス本館講堂や瀬田キャンパス樹心館には阿弥陀如来の立像が安置されています。深草キャンパス顕真館の壇上正面には、西本願寺が所蔵している親鸞聖人84歳の時、1256(康元元)年10月26日にしたためられた南無阿弥陀仏の名号が模刻されています。阿弥陀仏の「阿弥陀」は、梵語、サンスクリット語で「無量光」を意味するアミターバ、および「無量寿」を意味するアミターユスの「アミタ」の音写です。「南無」は、サンスクリット語で帰依、信順を意味する「ナマス」の音写です。つまり無量の光明(智慧)と寿命(慈悲)という私たちのの思議(思考)を超えたはたらきに帰依し、信順するという意味です。分析的な知性では把握できない、無量の光明・寿命のはたらきに目覚め、気づかしめる名のりが阿弥陀仏なのです。

親鸞聖人のご生涯、浄土真宗のみ教えに学ぶ私たちは、阿弥陀仏の光明にありのままの私が照らされ、目覚め、気づかしめられるのは、私の自己中心的な愛、欲望、願望であり、ひるがえってそれへの慚愧であるとともに、生きとし生けるものにはたらくいのちです。恵まれたいのちに感謝して、すべてのいのちを大切にする利他的な生き方を開いていくことを共有して、開かれた人間関係、社会的コミュニティを創りだすことを実践的課題としていくことです。龍谷大学が長きにわたって歴史を刻むことができたのは、常に問題・矛盾を抱える社会の現実に向きあいながら、いのちに対する根源的な意味、思議を超えたいのちのはたらきに目覚め、気づいて「人間とは何か」「いかに生きるべきか」との問いを持続しながら、学術研究を推し進め、その成果を社会に還元して、本学に寄せられる期待に誠意を以て応えようと歩みつづけて来たからでありましょう。

戦争の世紀といわれた20世紀から平和の21世紀への希望・期待は、たちまちに萎縮して、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件、その後のアフガン紛争・イラク戦争、2010年から2012年にかけてのチュニジアから始まったジャスミン革命は「アラブの春」といわれながらも、チュニジア・リビア・エジプト、そしてイエメン、シリアなどでの内戦・混乱が続発し、シリアから大量の難民、フランス・パリでのテロ事件などを引き起こして、世界政治は混迷しています。この間、2008年9月のリーマン・ショックは、アメリカ発の世界的な同時不況をもたらし、発展途上国の経済成長を失速させて、世界経済も混迷しています。グローバル化の進展は、モノ・人・カネなどの国民国家の枠を超えた流通・移動・取引などを加速化し、さらにIT革命による情報化の進展は情報の検索・収集・操作・発信などをもたらす一方で、画一的な国際標準への同調圧力、寡占的な情報管理の要因ともなっている。このようなグローバル化・情報化の進展は、ローカルな文化・言語・伝統・慣習・生活様式・地域などの固有性・多様性の空洞化・排除を招き、地域社会で安心して生活する人びとを不安化し、生きづらさを高め、地域の連携・共同性をカオス化して、社会の混迷を生み出しています。

こうした現代社会は、「危機の時代」「混迷の時代」とも言えましょう。こうしたさまざま領域の諸課題を解決し、持続可能な希望ある未来を拓いていくには、しっかりした知識基盤をもち、豊かな知性と対話・交流・交渉能力や柔軟な思考力・判断力・実行力などを兼ね備えた、新たな知の創造に専心することのできる人間の育成が、高等教育機関である大学、ほかならない本学に課された使命だと考えます。厳然たる少子化の動きに見据え、大学を取り巻く環境が大きく変化するなかで、龍谷大学の諸活動を主体的、発展的に改革し、総合大学こそが担いうる役割・使命を明確にしなければなりません。これまで本学は建学の精神に基づいて、豊かな人間力と総合的な学力・知性を有する学生を育成し、複雑化する社会の問題解決や持続可能な世界を実現する科学技術の発展に貢献する研究に取り組んできましたが、さらに大学全体の質向上、教育力・教育水準の質向上、研究力・研究水準の質向上に向けて全力を注入して、知の創造・発信・交流拠点として魅力ある龍谷大学づくりをしなければならないと考えています。

2016年4月からは、2010年度から始まった第5次長期計画第2期中期計画の2年目がスタートします。多岐にわたる実施案を精査し、果敢に施策を実行することにより、自主的主体的に学ぶ学生を育成し、正課教育のみならず、キャリア教育による「就職力のある大学」「就職支援に熱い大学」として、しっかり学生支援に取り組むことが何よりも重要であると考えています。

2015年3月に自主的主体的に学ぶ学生を支援するために、深草キャンパスに「龍谷大学ラーニングコモンズ」を開設し、瀬田キャンパスにも9月に開設しました。これらの環境を活用しながら、学生がより一層キャンパス内に多様な学びの居場所を見出し、学内に滞留しながら、学習・研究に切磋琢磨してほしいと思っています。正課教育はもちろん、グローバル教育やキャリア教育、就職活動や課外活動の支援をさらに強化してまいります。研究活動においては、世界仏教研究センターでの取り組みをはじめ、地域公共人材の育成など龍谷大学ならではの強みのある研究を推進するとともに、研究支援体制の整備、研究成果の発信力の向上にも努めてまいります。包括、協働、連携をキーワードに、障がい学生支援の充実、ボランティア活動の積極的支援、地域社会との連携強化も進めてまいります。

私たちが取り組むべき課題は多岐にわたります。大学を取りまく環境がいっそう厳しくなる現実をしっかりと見据え、時機を見逃さずに果敢に諸課題に取り組むことにより本学の未来が拓くことが出来ます。そのために大学構成員、教職員、学生が共通して、本学への理解を深め、目的意識や情報を共有して、それぞれの立場で能力を存分に発揮しながら、知性と活気に溢れる龍谷大学づくりにご努力をしていただきたいと思っています。

私は、2011年4月の学長就任以来、一貫して「対話のある大学運営」を目指してきました。今後も、対話のある組織運営を基礎に大学構成員との信頼のネットワークをつくり、総力を結集して、本学のかかえる諸課題に真摯に取り組むとともに、リーダーシップを発揮して必要な事業を着実に実行いたします。そして、龍谷大学の未来を、さらに日本及び世界の未来を切り拓く人間を育成するために、豊かな知性と活気に溢れる大学づくりに邁進してまいります。

皆さんのご理解と協力を賜りますようお願い申しあげます。

2016 (平成28) 年 4月1日
龍谷大学長 赤松 徹眞

学長イメージ

学長 赤松 徹眞

 

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