2016年度 9月入学式 式辞

2016.09.16

龍谷大学にご入学、ご進学された皆さん、おめでとうございます。大学を代表してお祝いを申しあげます。また、ご家族の皆さまにも、心よりお慶び申しあげます。

今日から皆さんは、龍谷大学の学生として懸命に学修・研究に取り組む、第一歩を踏み出した、記念すべき日です。同時に、自らの進路をたくましく切り開くために、歩み始める日でもあります。

龍谷大学でこれからの日々をかけがえのない、有意義な時間として過ごし、将来、飛躍するために必要な総合的な力を、知力・判断力・決断力・対話力などを養い、蓄えるには、何よりも「主体性」と「能動性」「熱意」「志し」が大切です。かつて、ドイツの哲学者、ショーペンハウエルは、「いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考えぬいた知識のほうが、はるかに価値がある」と語りました。

与えられた知識を無条件、無批判に受け入れるのではなく、また指示された課題をただ淡々とこなすのでもなく、これからのキャンパスライフの中で得られたさまざまな知的刺激を糧に、自ら主体的にかつ能動的に学び、考え、積極的に問題を発見し、そして熱意をもって解決する力を養うことが、本学での学びを価値あるものにします。そして、皆さんが、「このままでは滅びるかも知れない」という危機感を背景に、「持続可能な社会」を実現していく為には、依存型ではなく、「能動型」の社会参加をする人間になることが求められています。

グローバル化した現代社会は、国境の内外を問わず、経済的、政治的、軍事的、文化的にも、さらには自然環境的にも混迷と危機が深まっているように思えます。地球環境の異変、異常気象、新型感染症、社会全体の閉塞感や政治・経済にたいする不信感、近隣諸国との政治的・軍事的な緊張の高まりなど、さまざなな難題がそれぞれ複雑に関連しつつ、問題が山積しています。そのような現代は、“危機の時代”と言えます。私たちは、そのような時代を生きています。

こうした複雑な問題をいかに解きほぐし、再構成しながら、危機を乗り越えていくかが切実に問われる中にあって、皆さんがこれから本学で「経験」し、真剣に学びを徹底し、豊かな知識を柔軟な知性に鍛え上げ、的確な判断力、対話力を修得することが、どのような形であれ、有意義な成果をもたらすものと、私は確信しています。

浄土真宗のみ教えを建学の精神とする龍谷大学で、親鸞聖人の生涯とみ教えを学びつつ、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」ことのできる人間に成長したならば、危機の時代であっても、いや危機の時代においてこそ、一層、求められる批判的思考力と共感的想像力を発揮して、責任ある世界市民として、必ずや社会に、世界に貢献できるはずです。皆さんには、講義やさまざまな行事などへの積極的な参加を通じて、ぜひ親鸞聖人のご生涯に学ぶ縁をもっていただきたいと思います。

邪見な考えを持ち、驕慢になりがちな私たちが、阿弥陀仏の光に照らされて、誠実さ、謙虚さをもち、さらに人の痛みが解ること。そして、いのちを我がものと私有化することなく、生かされているいのち、恵まれたいのちであることに喜びを感じ、いのちの尊厳を大切にしていただきたいと思います。

すでに指摘されているように、大学で学び、研究する人がいかように知性を誇り、装おうとも、自己保身や自己主張、自己顕示欲、自己愛が強く、自己中心的であることに深く慚愧し、転じるものを体得しておかなければ、その知性は広く社会の中で対話力を持ち得ず、劣化するものでしかありません。

本学は、2010年から2019年にわたる10年間の第5次長期計画のもと、諸改革を推進して、「世界に躍動する大学」「自主的主体的に学ぶ学生の育成」「多文化共生キャンパス」などの大学像を実現することに全力をあげています。本学が高等教育機関として使命をはたし、学生、保護者、社会からの期待・信頼に応えるには、大学全体の質向上になお一層の努力を傾けなくてはなりません。学生の皆さんが知的探求心をもって、幅広い教養と深い学識、高い倫理観と豊かな想像力を身につけることができるよう、教育力の一層の充実、教育水準の高度化を図り、知性と活気に溢れる大学づくりに傾注して、皆さんを支援してまいります。

龍谷大学で真剣に学ぶということは、決して簡単に達成できることではありません。今までとは違った、精一杯の学修への努力、大幅な学修時間が必要です。皆さんにとって、まさにこれからが試練の時であり、人生の「初心」を形作る時です。長い人生において、決して忘れることのできないような人に、仲間に出会い、そして恩師に出会い、あるいは忘れてはならない試練に出会い、それを乗り越え、たくましくなっていく経験を、これからの学生生活で積み上げて下さい。

本日は、まことにおめでとうございます。

   

2016年9月16日
龍谷大学 学長 赤松 徹眞

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