2022.03.30
新年度スタート!全国の上司・部下1,000人に聞く「世代間ギャップ」調査 「片想い上司」と「仮面部下」!? 話しづらい、踏み込みづらい…本音が言えない組織の課題が浮き彫りに
心理学を活用して組織内コミュニケーションの課題を解決!
第一歩は「前向きなあきらめ」
上司は「い・ざ・か・や」ミーティング/部下は「飴と無視」で、今日から良好な関係を
龍谷大学心理学部※1 水口政人教授 が考察
2023年に心理学部の開設を予定※1する、龍谷大学(学長:入澤崇、所在地:京都市伏見区、以下本学)は、新年度に向けて企業の上司・部下1,000人を対象に、その関係性や世代間ギャップについてのアンケート調査を実施。心理学を活用したコミュニケーションによって、持続可能な開発に向けた共創の推進を目指す龍谷大学心理学部は、今回の調査結果から、組織内における良好な関係について本学心理学部 水口政人教授(2023年度就任予定)が考察しました。
※1 龍谷大学心理学部(仮称)は、2023年4月開設予定(設置構想中)。計画内容は変更になる場合があります。
調査結果から、部下のことを理解したい、でも踏み込みづらいと感じている「片想い上司」と、仕事とプライベートにきっぱり線を引き、反応の読めない「仮面部下」の実態がみえてきました。
片想い上司
部下を理解したいが、考えていることが分からない…価値観が合わないとあきらめつつも、反応の薄い部下に困惑。部下に対して“踏み込みづらさ”を感じている。
仮面部下
ワークライフバランスを重視し、マイペース。反応が薄いと誤解されがちだが、実は気配りの意識は高い。ノリやテンポの合わない上司に“話しづらさ”を感じている。
調査サマリ
■ 上司・部下の約半数がお互いにギャップを感じている。要因の上位5位は「立場」「年齢」「常識」「時代背景」「コミュニケーションのすれ違い」。コミュニケーションに改善の糸口が?
■ 上司・部下の約7割が、価値観が合わないことをあきらめている。
■ 上司の75.0%が部下を理解したいとしつつも、45.2%が部下の考えていることが分からないと困惑。
■ 感じているギャップの自由回答では…
上司は、「反応がうすく真意が分かりづらい」「仕事の範囲に線引きをしている」などの部下の態度に困惑し、「踏み込みづらさ」を感じている様子がみられた。
部下は、上司とのコミュニケーションの中で「会話のテンポ、ノリが違う」「たとえ話が分からない」など、「話しづらさ」を感じており、「オンオフの切り替え」「ワークライフバランス」など、仕事への向き合い方にギャップを感じている様子がみられた。
■ そのほか、「SNSで休みを伝えても良いか」「飲みニケーションは必要か」「酒席では部下が上司にお酒を注ぐべきか」「会議の事前準備は部下がすべきか」… などの問いに興味深い結果がみられた。
【 本件に関するお問合せ先 】
龍谷大学学長室(広報) 担当:田中/山田
TEL 075-645-7882 FAX.075-645-8692 E-mail kouhou@ad.ryukoku.ac.jp
上司・部下の約半数がお互いにギャップを感じている。要因の上位5位は「立場」「年齢」「常識」「時代背景」「コミュニケーションのすれ違い」。コミュニケーションに改善の糸口が?
職場の上司や部下に「ギャップを感じているか」との問いに、部下の51.6%、上司の44.8%が「とても感じている」「やや感じている」と回答。「何故ギャップが生まれるか」という問いには、「立場が違うから」「年齢が違うから」「常識の考え方が違うから」「生まれ育った時代背景が違うから」「思い込みなどにより、コミュニケーションにすれ違いがあるから」が上位となった。立場や年齢など、変え難い要因のなか、コミュニケーションは改善できる可能性を見出せる。
上司・部下の約7割が、価値観が合わないことをあきらめている。
「上司と部下の価値観が合わないとあきらめているか」という問いに対して、上司の69.8%、部下の68.8%が「とても感じている」「やや感じている」と回答。心理学部の水口教授は、「あきらめることは、良好な関係構築の第一歩。ただし、前向きにあきらめることが重要」と話す(詳細は後述)。
上司の75.0%が部下を理解したいとしつつも、45.2%が部下の考えていることが分からないと困惑。
「上司・部下を理解したいと感じているか」という問いに、上司の75.0%が「とても感じている」「やや感じている」と回答。対して部下は62.0%に留まり、13.0ポイントのギャップがみられた。また「上司・部下が考えていることが分からない」という問いに、上司の45.2%が「とても感じている」「やや感じている」と回答。理解したいと感じつつも、部下の考えていることが分からず困惑している様子がみられる。
上司・部下に感じているギャップは?(自由回答)
「職場の上司・部下との間に感じるギャップは?(自由回答)」という問いに、上司は「不服の顔を見せるが意見を言わない」「反応がうすく真意が分かりづらい」「考え方がクール」「マイペース」など、部下の反応のうすさに困惑しつつ、「仕事の範囲に線引きをしている」「言われていないからやらないというスタンス」「我関せずみたいな感じがする」などの割り切る姿勢に「踏み込みづらさ」を感じている様子がうかがえる。
部下は、「会話のテンポ」「ノリの違い」「たとえ話が分からない」「言葉の違い」「話し方の違い」など、コミュニケーションの違和感による上司との「話しづらさ」を感じている様子がうかがえる。また、「オンオフの切り替え」「ワークライフバランスに対する考え方」「親睦会や飲み会などの必要性」「プライベートと仕事の両立の仕方」など、仕事とプライベートの境目が曖昧な上司への違和感を持っている様子がみえる。
SNSの活用、飲み二ケーションなどの問いに興味深い結果がみられた。
SNSで休みを伝えても良いか
部下の53.8%が「SNSで会社に休みを伝えるのは良い」と感じている一方で、上司は37.6%に留まり、16.2ポイントと大きな差が生じた。SNSの活用スタンスについては、まだまだギャップがある。
飲みニケーションは必要か
上司・部下ともに、必要と感じていると回答したのは4割程度に留まる。コロナの影響も後押しになり、飲みニケーションは消滅の兆しか!?
酒席では部下が上司にお酒を注ぐべきか
「酒席では部下が上司にお酒を注ぐべき」と感じている上司は3割程度にとどまり、部下の方が上司よりも10.4ポイント強く感じている。
会議の事前準備は部下がすべきか
部下の51.8%が「書類のコピーや会議の調整などの雑務的な事前準備は部下がするべき」と回答しており、上司よりも13.2ポイント強く意識している。
ともすれば「部下への強要」とも捉えられそうな項目について、ひと昔前の昭和な上司像は消え、部下に寄り添う姿が浮かび上がる。対して、部下の方が仕事への気配り意識について高く表れる結果に。
調査概要:調査方法:インターネットアンケート調査(全国)/調査対象:企業に勤める部下(20~30歳)、上司(45~60歳)/有効回答数:1,000人(部下500人、上司500人)/調査期間:2022年1月11日(火)~13日(木)
課題解決の第一歩は「前向きなあきらめ」
上司は「い・ざ・か・や」ミーティング、部下は「飴と無視」で良好な関係を
龍谷大学心理学部 水口 政人 教授(2023年度就任予定)
公認心理師、臨床心理士、MBA、プロコーチCPCC認定。
大学卒業後、商社でメキシコ駐在を経験し、帰国後MBAとプロコーチ資格を取得。コンサルティング会社を経て、独立。コーチング、カウンセリング、ビジネスパーソン向けセミナー講師として活躍。
2022年4月龍谷大学文学部臨床心理学科教授就任予定。
2023年4月龍谷大学心理学部心理学科(仮称)教授就任予定。
ホンネが言えない組織の課題
近年の働き方改革、社内教育やメディアの影響もあり、特に上司において「理想の上司像」が刷り込まれている印象を受けます。調査でも、自身が理解する「理想像」を定量で回答し、正直な気持ちが「自由回答」に表れているようです。
心理学では「認知的不協和※2」と言いますが、人は上手くいかないことがあると「自分以外に原因がある」と思いがちです。本当の気持ちを抑えている組織では、困ったことが起こった時に「上司が〇〇だから、部下が〇〇だから」と、他者や周囲の環境のせいにして、改善も人任せになってしまい、生産性も高まっていきません。
※2 自分の考えと状態が一致していない場合に居心地の悪さを感じ、それを解消するために、自分が変えやすい都合の良い解釈をしてしまうこと。
課題解決の第一歩は「前向きなあきらめ」
組織の良好な関係構築には、良質なコミュニケーションが不可欠です。質を高めるために「傾聴スキル」を学ぼうとする人がたくさんいますが、私はまず「人間に対するスタンス」を考えることが大事だと思います。それは、相手の言動や態度をそのまま受け入れる「全肯定」の姿勢です。人は自分に好意的な言動を好みますので、肯定されることは良好な関係構築に必要な態度です。とはいえ、簡単に出来ることではないですよね。そこで「人はこういうものだ」という認識がまず必要なのです。
言動や態度を左右するのは性格です。性格心理学では、性格は「遺伝」と「環境」によって決まるとされていますが、どちらもいまさら変えようがありません。ですので、相手の言動が「正しい」かどうかを判断するのではなく、「相手がそう発言をするのも必然だ」と「全肯定」するスタンスが大切です。研修では「前向きなあきらめ」と言い換えると、さらに腹落ちしてくれます。まず「あきらめる」ことで、イライラから解放され、これからの「環境」に目を向けられるのです。調査でも価値観の違いをあきらめているという結果がありましたが、「あきらめ」をバージョンアップして、「前向きなあきらめ」にすると見込みがあると言えます。
今日から出来ること【上司編】:「い・ざ・か・や」ミーティングで、部下を受け入れましょう!
週1回、10分間の1on1ミーティングをすることをお勧めします。1on1のポイントは「い・ざ・か・や」です。飲みニケーションではありません。ビジネスモードのスイッチをいったんオフにして、関係構築の仕組みとして取り組む姿勢が大事です。
1on1ミーティングでは、まず聞くことを目的に「い:意見しない」「ざ:遮らない」ことを心がけてください。ビジネスモードがオンの状態だと、相手の話の課題を発見し、話を遮って自分の意見を言ってしまいそうになります。良かれと思ってアドバイスしたつもりでも、意見の相違が生まれる要因ですので控えましょう。つまり、問題を「か:解決しない」姿勢でいることが最も重要なことなのです。また、部下が話したがらず、上司が話し過ぎてしまうことも起こりがちです。具体的に「や:8分以上は部下が話す」と決めておきましょう。これを実践すれば3か月で劇的に変わるはずです。
今日から出来ること【部下編】:「飴と無視」で、チャンスを!
一般的に、部下は上司を選べない環境にあります。選べないことに不満を持つよりも、まずは「前向きにあきらめる」、上司が提供するチャンスを活かしきることで、自分の成長につなげるという心構えを持つことが大切です。
そのために心理学では「飴と無視」と言われる方法があります。まず「上司のどの言動や態度を増やしたいか」を具体的に洗い出します。そして、上司から自分にとって嬉しい、好意的なアクションがあった際には、笑顔や感謝などの反応(飴)を表し、増やしたくない行動はスルー(無視)するという方法は、行動心理学的にも効果があります。
心理学は、これからの時代を生きる必須スキル
上司も部下もお互いに好意的な状態であると、自己開示をすることが多くなり、心理的安全性が高い組織になるという研究がたくさんあります。心理的安全性が高い組織は生産性が高まり、結果が出ている組織では構成員の行動や態度も前向きになっていくといった好循環が生まれます。
心理学的なアプローチを実践してもらい、上司と部下の関係性が良くなっていくことを期待しています。実践することで、心理学がビジネスパーソンに必須の学問であることを体感いただけると思います。
調査の詳細、当リリースに使用している使用データは以下よりダウンロードください
https://www.ryukoku.ac.jp/r/0330/
龍谷大学心理学部
2023年4月設置予定。浄土真宗の精神を建学の精神とする龍谷大学の心理学部は、人と人との「つながり」を見つめ、「心」に向き合う心理学を目指しています。対人支援のコミュニケーション・スキルを身につけることで、現代社会の心理的諸課題に向き合い、ウェルビーイングな社会、持続可能な開発に向けた共創人材の育成を進めてまいります。
龍谷大学心理学部(仮称)特設サイト https://www.ryukoku.ac.jp/newfaculty/