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2022.04.22

新年度スタート!全国の上司・部下1,000人に聞く「世代間ギャップ」調査 第二弾 本年4月、「パワハラ防止法」全面施行! パワハラと指導の違いは曖昧!?部下が言われてうれしい褒め言葉に、パワハラにならない意識のヒントが?

心理学を活用して組織内コミュニケーションの課題を解決!
叱らずに指導することは可能! 「理由なき“反行”」を理解することが重要
龍谷大学心理学部※1 水口政人(みなくち・まさと)教授 が考察

 

2023年に心理学部の開設を予定※1する、龍谷大学(学長:入澤崇、所在地:京都市伏見区、以下本学)は、新年度に向けて企業の上司・部下1,000人を対象に、その関係性や世代間ギャップについてのアンケート調査を実施。
 
龍谷大学心理学部は心理学を活用したコミュニケーションによって、持続可能な開発に向けた共創の推進を目指しており、今回の調査では、本学心理学部 水口政人教授(2023年度就任予定)が、本年4月に全面施行された「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」を受け、上司・部下の意識の違い、その要因、解決策について心理学の観点から考察しました。 
※1 龍谷大学心理学部(仮称)は、2023年4月開設予定(設置構想中)。計画内容は変更になる場合があります。

◇    パワハラと指導の違いは曖昧と感じるか? 


 

2022年4月から「パワハラ防止法」が全面施行
「パワハラと指導の違いは曖昧と感じるか?」という質問に、上司は61.8%、部下は53.8%が「曖昧」と回答。パワハラ防止法全面施行を前に、半数以上が曖昧さを感じる結果に。上司も部下も半数以上が「曖昧」と感じているが、部下を指導する立場の上司の方が、部下よりも8ポイント高く、パワハラと指導の曖昧さを感じているようです。
特に5月の連休明けは、4月からの環境変化、責任の増大などによるストレスが休暇中に開放され、会社に行くのが憂鬱になってしまう時期です。上司と部下の意識のギャップを受け止め、良好な関係構築のための対策が求められています。


調査サマリ

■    22年4月から「パワハラ防止法」が全面施行。
パワハラと指導の違いは曖昧か?上司の61.8%、部下の53.8%が「曖昧」と感じていると回答。上司の方がパワハラと指導の曖昧さを強く感じている結果に。
■    「仕事は言われたこと以外も主体的に取り組むべき」「仕事は見て盗むもの」…
上司・部下の意識ギャップがパワハラの一因に?
■    部下が求める上司、求めない上司ランキング:「自分のことを認め、褒めてくれる」上司を求め、「人の意見を聞かず、自分の意見を押し通す」上司を好まない。
■    部下が求める「褒め言葉」ランキング:1位「信頼して任せられるよ」、2位「○○さんがいてくれてよかった」、3位「一緒に仕事ができてうれしい」。その理由は?…「感謝」「関心」「存在意義」を示すことが重要。


仕事に対する上司・部下のスタンスの違いがパワハラの一因に!?

 

◆ 仕事に対するスタンスの違いが要因か?


仕事は言われたこと以外も主体的に取り組むべきか?  
上司の87.4%、部下の75.4%が、主体的に取り組むべきと回答。その差は上司が12ポイント高く、部下に対する要求の高さがうかがえる。



 

 

仕事は見て盗むものだと感じるか? 
上司は66.6%が「仕事は見て盗むもの」と回答し、部下の55.6%よりも11ポイント高い意識がみられた。コロナ禍でリアルの機会が減少する中、これからのOJTの在り方について検討の必要性を感じる結果に。


 

水口教授は、「上司は、期待値に対して部下の行動が伴わない際にイライラし、その打開策を『厳しい指導』に向けてしまっている状態がある。何故部下は、期待する行動をとらないのか?その根本を紐解けば、パワハラを未然に防ぐことができる」と考察しています。


部下が求める上司、求めない上司ランキング:「自分のことを認め、褒めてくれる」上司を求め、「人の意見を聞かず、自分の意見を押し通す」上司を好まない。
 

部下500人を対象に、上司に「求めるタイプ」「求めないタイプ」のアンケート調査を実施。

◆    部下が上司に求めるタイプ
ランキング上位に「仕事ができて、頼もしい」「冷静で筋の通っている判断をする」「責任感がある」「決断力がある」といった昔から変わらない強いリーダーシップを持つ上司像がみられた。「上司かくあるべき」という昔から変わらない上司像がまだまだ部下の意識に根強いなかで、「自分のことを認め、褒めてくれる」といった点に、良好な関係構築への可能性がみられた。

◆    部下が上司に求めないタイプ
ランキング1位は「人の意見を聞かず、自分の意見を押し通す」となり、不健全なコミュニケーションに対して、部下の否定的な意識がみられた。

心理学部の水口教授は「部下を認める、話を聞くなど、まずは関心を示すことが求められている。尊敬できる上司像は昔から変わらない部分はあるが、“上から目線”に感じられることは好まれない」と話す(詳細は後述)。



部下が求める「褒め言葉」ランキング!その理由は?…「感謝」「関心」「存在意義」を示すことが重要。

「上司からあなたが言われたい褒め言葉は?」との問いには、1位「信頼して任せられるよ」、2位「○○さんがいてくれてよかった」、3位「一緒に仕事ができてうれしい」という結果に。心理学部の水口教授は、「上位3位くらいまで(と5位)の言葉には、部下への“感謝”“関心”“存在意義”を感じられる言葉がみられ、それ以下はともすれば “上から目線” に感じられる言葉が並んでいるのが特徴的」とし、「ただし、言葉だけに固執するのではなく、その時にあった言葉のバリエーションや、感情の表現も含めて、上司には“褒める”ことの本質を知ることが求められている」とアドバイス。


 

◇ 褒め言葉を選んだ理由(自由回答)



調査概要:調査方法:インターネットアンケート調査(全国)/調査対象:企業に勤める部下(20~30歳)、上司(45~60歳)/有効回答数:1,000人(部下500人、上司500人)/調査期間:2022年1月11日(火)~13日(木)


叱らずに指導することは可能!
部下の「理由なき“反行”」を理解することが重要
龍谷大学心理学部 水口 政人(みなくち・まさと)教授(2023年度就任予定)

 

公認心理師、臨床心理士、MBA、プロコーチCPCC認定。
大学卒業後、商社でメキシコ駐在を経験し、帰国後MBAとプロコーチ資格を取得。コンサルティング会社を経て、独立。コーチング、カウンセリング、ビジネスパーソン向けセミナー講師として活躍。
2022年4月龍谷大学文学部臨床心理学科教授就任。
2023年4月龍谷大学心理学部心理学科(仮称)教授就任予定。


「パワハラ」は、部下が期待した行動をとってくれないことへの間違ったアプロ―チ 
2022年4月から「パワハラ防止法」が全面施行されました。多くの企業は上司層に「この行為はパワハラになります」「このケースは微妙です」など、パワハラにつながりそうな行動を抑制する研修などを実施しています。しかし、これだけでは上司を消極的にさせるだけで、組織の良好なコミュニケーションに向けた根本的な改善にはなりません。まず考えるべきことは、上司がパワハラに至るのは何故かを考えることです。それは、上司が期待する好ましい行動を、部下がとっていないからではないでしょうか。

部下の“反行”(上司の期待に反する行動)の理由、3つの「ない」とは?  
上司の期待に反する部下の行動(反行)が、上司をイラつかせ、つい厳しい指導に至ってしまう、これがパワハラにつながります。部下は何故上司が思うような行動をとらないのか?行動心理学では、その理由は3パターンしかないことが分かっています。それは、「①知らない」「②出来ない」「③やらない」という3つの「ない」です。
①まず「知らない」と行動は起こりません。ですので、これは指示や情報提供することで解決します。②そして「出来ない」ことは、研修やトレーニングでスキルアップするという解決策があります。「見て盗め」と言わず、丁寧に教える必要があります。
③そして一番厄介なのが「やらない」です。部下が「やらない」時、上司はその部下の「主体性がないから」「モチベーションが低いから」と考えてしまいがちです。そうなると、部下の主体性やモチベーションを高めることが重要だと錯覚してしまいますが、部下が好ましい「行動」をとってくれるという目的を忘れてはいけません。

では、好ましい「行動」を促すためには、何が必要なのでしょうか?
たとえば、こんな子どもを想像してみてください。この子はトイレに行った後に「電気を消さない」「ドアを開けっぱなしにする」ことで、いつも親に怒られています。どちらも親から求められている行為であることを知っていて、それを改善する能力もあるのに、何故この子は「やらない」のでしょうか?電気をつけるのは「暗いから」であり、ドアを開けるのはトイレに入るためですが、一方で電気を消さないこと、ドアを閉めないことは、この子にとって「理由」がないからなのです。
「やらない」のは「理由がない」から、これが「理由なき“反行”」の正体です。これと同じような現象が、職場でも起こっていると思いませんか?


褒める技術で、部下の「行動」を促す  
部下の主体性やモチベーションをコントロールすることは難しいですが、部下の「行動」に影響を与えることは、上司の対応によって可能になります。そのヒントは、アンケート調査の「褒め言葉」の中にあります。
部下が生まれ育った時代は「食べるのに困らない」「若年労働力の売り手市場」であり、マズローの欲求5段階説※で言うところの生理的欲求、安全欲求が満たされ、社会的欲求(人とつながっていたい)、承認欲求が高い状態にあると言えます。ですので、部下は自分の社会的欲求、承認欲求が満たされる上司の言動を好み、そうでないものを嫌います。
部下が好ましい行動をとった際には、上司は部下の欲求を満足させるような、部下への「感謝」「関心」「存在意義」を示すような声がけ(褒め言葉)ができるとよいでしょう。ただし、アンケートにあるような部下が好みそうな言葉を連発して、部下に気に入られようとすることは本質ではありません。組織を良好に保つために、部下に関心を持ち、部下に合わせた「感謝」を示すことで部下の行動を促し、組織のパフォーマンスを高めていくことが重要です。

※    心理学者アブラハム・マズローが、人間の欲求を5段階に理論化したもの。「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」という5段階の「欲求」を、順に満たそうとする心理的行動。

心理学は、これからの時代を生きる必須スキル 
上司も部下もお互いに好意的な状態であると、思っていることを気兼ねなく発言できるようになり、心理的安全性が高い組織になるという研究があります。心理的安全性の高い組織は生産性が高まり、結果が出ている組織では構成員の行動や態度も前向きになっていくといった好循環が生まれます。
心理学的なアプローチを実践してもらい、パワハラとは無縁の職場が増えることを期待しています。これらの取組を通じて、心理学がビジネスパーソンに必須の学問であることを体感いただけると思います。


当リリースに使用しているデータ等は以下よりダウンロードください
https://www.ryukoku.ac.jp/r/0421/


龍谷大学心理学部
 
2023年4月設置予定。浄土真宗の精神を建学の精神とする龍谷大学の心理学部は、人と人との「つながり」を見つめ、「心」に向き合う心理学を目指しています。対人支援のコミュニケーション・スキルを身につけることで、現代社会の心理的諸課題に向き合い、ウェルビーイングな社会、持続可能な開発に向けた共創人材の育成を進めてまいります。

龍谷大学心理学部(仮称)特設サイト https://www.ryukoku.ac.jp/newfaculty/