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2022.12.15

DNA実験に取り組む米沢興譲館高校2年生が「環境DNA分析」ラボを見学【生物多様性科学研究センター、先端理工学部】

研究に強い関心と志を抱く高校生らに、山中裕樹センター長がレクチャー

12月6日(火)午後、山形県立米沢興譲館高等学校2年生の皆さんが、本学瀬田キャンパスの「生物多様性科学研究センター」を見学に来ました。同校は、令和4年度の文部科学省「スーパーサイエンスハイスクール」研究指定校であり、将来の国際的な科学技術人材の育成を図るため、理数系教育に重点を置いた研究開発を行っています。
今回は、探究科(理数探究科)に属し、生物科目を選択する高校生5名が、関西方面への研修旅行の目的地の一つとして、山中裕樹 准教授(先端理工学部・龍谷大学生物多様性科学研究センター長)のもとを訪れました。

生徒の中には「環境DNAを用いたキタノメダカとミナミメダカの生息域調査及びマップ作成」を研究課題としたポスターセッション*1で評価された方もいて、「最先端の環境DNA研究にふれたい」という意欲をもって来校したそうです。
山中センター長による見学ツアーは、はじめに講義と懇談を7号館・環境実習室1で行った後、7号館と智光館にある実験設備を案内しました。


会場:7号館・環境実習室1

会場:7号館・環境実習室1


山中センター長による講義風景

山中センター長による講義風景

講義では、まず、水試料など環境中にこぼれ落ちてきた生物の情報を解析する「環境DNA分析」のあらましや、関西地域での調査事例を紹介。桂川流域でのヌートリアDNA検出の例では、谷あいの急流部以外にはほとんど侵入していることが判明するなど、水と接している生き物であれば、魚類だけでなく、鳥類や哺乳類も分析できるそうです。

つづいて、「環境DNA分析」の核をなすPCR(polymerase chain reaction)法について紹介。分析方法は大別して2種類、特定の種の存在有無を1種ずつ検出する「種特異的分析」と呼ばれる方法と、種を限定せず魚類のような 1 分類群の種構成を推定する「メタバーコーディング」と呼ばれる方法があります。
「種特異的分析」では、プライマー(増やしたい配列の両端に結合するように作る合成DNA)設計が重要なポイントで、山中センター長は「PCR技術があってこそ、環境DNA分析が可能になる。偽陽性が出ないように、プライマーは適切に設計する必要がある」と述べました。


山中センター長のスライドより(環境DNA分析の核であるPCRの核)

山中センター長のスライドより(環境DNA分析の核であるPCRの核)

そして、びわ湖での調査事例*2や水試料以外の雪や深海での分析事例を紹介した後、今後「環境DNA分析」に期待することとして、「生き物と環境の調査手法として、広く一般に利用されること」「外来種の侵入検知や希少生息地の探索に生かすこと」「新種を見つけること」の3点を挙げました。また、アメリカで研究開発が進む「完全自動観測システム」や、DNAとは違い、歳やコンディションで変化するmRNAから状況依存的な変化を捉えられる「環境RNA分析」などの近時の状況を紹介し、講義を終えました。

講義後、生徒からは「採水から濾過は急いだ方がよいのか?」「プライマー作成にあたって教科書にはセオリーが書かれているが、適切な配列はどう考えるとよいか?」「メタバーコーディングをしてみたいが、装置導入には金銭的なハードルがある。専用のキットを販売し、分析結果を送ってくれるような会社はあるか?」といった具体的な質問が続きました。山中センター長は、個々の質問に対して回答するとともに、丁寧にアドバイスを行いました。


その後、瀬田キャンパス内の7号館と智光館にある実験設備を案内しました。


DNA抽出室見学の様子

DNA抽出室見学の様子


シーケンシング装置

シーケンシング装置

「環境DNA分析」に関わる実験室は、検出感度の正確性を保つために、①DNA抽出室(水試料のろ過とDNA抽出を行う場所)・②PCR準備室(PCR分析にあたっての準備を行う場所)・③PCRおよびシーケンシング装置室(PCRによるDNA増幅とDNAを構成する塩基配列を解明する場所)の3つに明確に区分・管理しています。実際にラボの装置を紹介しながら、運用ルールやポイントについて説明しました。

見学ツアー終了後、高校生らからは次のようなコメントが寄せられました。

○ 環境DNAの現状だけでなく未来についても知ることができ、とても興味深かった。
○ 装置の名前については知っていたが、ラボでiSeqやMiSeqなどの装置を目にしたことで、今後挑戦したいことが見えてきた。
○ 海外ではDNAキットや分析装置の小型化などが進み、個人的に分析を楽しむカルチャーがあることを知って面白く感じた。自宅をラボ化する構想が膨らんだ。
○ 環境DNA分析の最先端の研究、技術について知ることができ貴重な時間になった。
○ 「完全自動観測システム」や「環境RNA分析」の話題は初耳で、自らがやってきた「環境DNA」に関する研究と大学の研究との差に圧倒された。研究の本気度を知ることができた。

高校生らの熱心な質問や研究へのまなざしに、「環境DNA分析」の新世代の風を感じる機会となりました。


山中センター長と山形県立米沢興譲館高等学校の皆さん

山中センター長と山形県立米沢興譲館高等学校の皆さん

【補注】
*1 米沢興譲館高等学校 SSH通信>2学年探求活動中間発表会
https://www.pweb.jp/data/datakoujyoukan/koujyoukanjy0984.pdf

*2【関連記事】2022年度 びわ湖の日滋賀県提携 龍谷講座に山中裕樹センター長が登壇
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-11754.html