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2023.01.25

模擬裁判に挑戦する高校生と一緒に学ぶ法教育:Part5「人はなぜハラスメントをするのか?」【犯罪学研究センター後援】

なぜ人はハラスメントをするのか~犯罪学の見地より

2023年1月21日(土)「第3回オンライン高校生模擬裁判選手権大会」*1に向けた事前講義がZoomを利用したオンライン形式で開催されました。本講義は、札埜和男准教授(本学・文学部、「法教育・法情報」メンバー)の企画です。

今回は、刑事政策の研究者であり,弁護士でもある石塚伸一教授*2石塚伸一教授(本学・法学部、前犯罪学研究センター長)より、「なぜ人はハラスメントを するのか~犯罪学の見地 より」について講義をいただきました。石塚教授は本学において6年間ハラスメント委員会のメンバーとしてハラスメント問題の解決に携わり、また当委員会の委員長の経験があります。大会に参加する高校生と一般参加者をあわせて36名の参加がありました。
【>>イベントページ】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-11925.html


石塚伸一教授(本学・法学部、前犯罪学研究センター長)

石塚伸一教授(本学・法学部、前犯罪学研究センター長)

講義の冒頭に「人はなぜハラスメントをするのか?」という質問が高校生に投げかけられ、「この曲の歌詞の言葉をよく聞いてほしい」と、吉田拓郎氏が歌う『ファイト!』を紹介しました。曲が終わると、「ハラスメントの申立ては、色々な圧力や差別などを感じている人が、『ファイト!』と自分を鼓舞して公の場で戦おうと思ってくれたのだから、その人たちの気持ちを挫いたり、足を引っ張ったりしてはいけないと思って、龍谷大学においてハラスメント委員を努めていた」とお話しされました。
そして、「ハラスメント問題と向き合うには、1時間でも2時間でも話をよく聞くことが大切である」と続けました。


『ファイト!』の紹介

『ファイト!』の紹介


パワーハラスメントの定義

パワーハラスメントの定義

講義の中では、ハラスメント問題を考える上で大切なキーワードである“人権”についてお話がありました。
「人権(を守る)とは、人の嫌がることをしない、とか友達をいじめない、とか考えがちであるけれど、それでは、仲良くしていたらいいのか。ただ、仲良くしているだけでは、人権が守られたわけではない」「人権とは、(その人の)人格や自尊心が危ぶまれるときである」と説明しました。石塚教授は、人権とは?という問いへの答えについて、ある幼稚園の先生のエピソードを紹介して説明をしました。「人は、トイレ(排泄)を我慢しなさいと言われ、我慢の限界を迎えた時の状況をイメージしてください。それが、人格や自尊心が危ぶまれるときである」と続けました。


「いじめ」「犯罪」「ハラスメント行為」について

「いじめ」「犯罪」「ハラスメント行為」について

講義の冒頭には、高校生に向けて、クイズ形式でハラスメントの略語についての問いかけがありました。25項目のハラスメントの略語が紹介されました。


25のハラスメント行為の略語

25のハラスメント行為の略語

最後に質疑応答の時間がありました。
高校生からは「ハラスメントにおいて、被害者と加害者の立場の上下関係の判断は何が基準になるのですか」といった質問がありました。
石塚教授は、「処分性(人事権を持っているなど相手に影響を与えることができるかどうか)を持っているかどうかが1つの判断基準となる。そういう観点から、学校生活における上下関係について、いつでも先生が上で生徒が下とも限らない。時に生徒が上の立場となり先生にハラスメント行為を行うということもある」と回答されました。ほかに「承認欲求が満たされないことが犯罪意識につながることを知って、最近の事件についてよく考えることができました」、「『ファイト!』の歌詞を聞いてみて曲の印象が変わりました。上の欲求が満たされないと、下に下がっていってしまうという話が興味深かったです」といった感想が高校生から述べられました。

次回は、1月29日(日)9:30-16:30 第3回オンライン高校生模擬裁判選手権の本番です。興味・関心のある方はどなたでも視聴可能です。ぜひHPよりよりお申し込みください。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-11935.html

【補注】
*1 関連情報
>>第3回オンライン高校生模擬裁判選手権<出場校を募集!>【犯罪学研究センター後援】
同大会は、2023年1月29日(日)にZoomにて開催を予定。大会のねらいとして次の2点を掲げている。(1)法的思考力や刑事(裁判員)裁判の意義の理解にとどまらず、広く人間や社会までを視野に入れた「国語的」模擬裁判を通じて、人間や社会を考える眼差しを深める。(2)「国語的・文学模擬裁判」という新しい教育手法を通じて新学習指導要領の理念でもある主体的・対話的で深い学びを実現する機会とする。

*2 石塚 伸一(いしづか・しんいち) 教授プロフィール
1954年、東京生まれ。中央大学法学部を卒業後、同大学院法学研究科博士課程に進学。同課程退学後、非常勤講師を経て、北九州市立大学法学部講師。同学部助教授・教授を歴任。1998年に龍谷大学に移籍。法学部・法務研究科教授を経て、現在、法学部法律学科教授。
この間、石塚伸一著『社会的法治国家と刑事立法政策-ドイツ統一と刑事政策学のゆくえ-』(信山社、1997年)によって、九州大学から博士(法学)の学位を取得。龍谷大学では、日本唯一の刑事政策に特化した大学附設の研究機関である矯正・保護研究センター(現同「総合センター」)の設立に参加した。専門は、刑事法学。特に、刑事政策・犯罪学を研究領域として、ゲッティンゲン大学の客員教授やギーセン大学の客員研究員に招聘された。なお、2004年から第二東京弁護士会に所属し、刑事事件を中心に弁護士として活動している。また、2014年から日本犯罪学会会長、2016年から龍谷大学犯罪学研究センター長、2018年からアジア犯罪学会理事を務めている。
研究テーマは、刑事法一般、受刑者の権利、監獄の歴史、死刑問題、薬物依存からの回復、宗教教誨、先端医療と生命倫理など。犯罪原因の科学的究明と合理的刑事政策の提案に寄与したいと考えている。