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2023.02.14

連続無罪判決後、「揺さぶられっこ症候群(SBS)」問題は終わったか?シンポジウム「それでもえん罪はなくならない― 今西事件を通じて」を開催< 3月3日(金)18:00-20:00ハイブリッド開催(オンライン/梅田対面会場) Webから要事前登録 ※対面参加定員は先着50名>

【本件のポイント】

  • 揺さぶられっこ症候群(Shaken Baby Syndrome=SBS)1)あるいは虐待性頭部外傷(Abusive Head Trauma=AHT)をめぐる仮説は、アメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、フランスなど多くの国で疑問が指摘されるようになり、各国でSBS/AHTを疑われた事例で無罪判決が相次ぐように
  • 日本においては未だに仮説が広く信じられており、科学的根拠に基づかない、いわゆるえん罪と思われる事案が複数発生しているのが現状だが、無罪判決も多数出ている
  • 龍谷大学犯罪学研究センター2)はSBS問題に最も深く関わってきた研究機関。2016年に同センターの科学鑑定ユニットが主催する「法科学研究会」でSBS問題を取り上げて以降、注力してきた研究トピックであり、過去に国際シンポジウムを2回実施している
  • 今回のシンポジウムでは、逮捕段階から一貫して無実を主張し、控訴審係属中の今西貴大さんの事件3)を通して、現在の議論の問題点を共に考える機会に


【本件の概要】

 赤ちゃんを揺さぶって虐待したというSBS/AHTの事案は、本当に多発しているのか、その背景にあるSBS/AHT仮説に科学的なエビデンスはあるのか。このような問題意識からSBS検証プロジェクトが立ち上げられ、SBS/AHT事件の本格的な検証が開始されてから5年が経過しました。
 この間、SBS/AHTをめぐる議論は進展し、SBS/AHT仮説の科学的正しさが検証され、 SBS/AHTのえん罪事件について、2018年以降に9事件で無罪判決が確定しました。
 それでは、SBS/AHT問題は解決したのでしょうか。
 確かに最近では、SBSの「三徴候」(三つの症状)のみに基づいて起訴される事案は減りました。しかし、伝統的なSBS/AHT仮説に依拠する厚労省「子ども虐待対応の手引き」はいまだに改訂されていません。また、個々の事件では別の「徴候」に基づく虐待診断・判断が行われ続けています。その一つが、虐待えん罪・今⻄貴大さんの事件です。
 本シンポジウムでは、SBS/AHTをめぐる議論のこの5年の展開を振り返るとともに、今⻄貴大さんの事件を通して現在の議論の問題点を考えます。

 

1.実施概要
- 名    称:シンポジウム「それでもえん罪はなくならない― 今西事件を通じて」
- 日 時:2023年3月3日(金)18:00-20:00(開場17:45)
- 会 場:オンライン:zoom 対面会場:AP大阪駅前 会議室APホールII(大阪市北区梅田1-12-12 東京建物梅田ビル B2F)
- 参加費:無料 ※下記URLから事前申込制。対面参加定員は先着50名
- 共    催:SBS検証プロジェクト、イノセンス・プロジェクト・ジャパン、SBS/AHTを考える家族の会、 今⻄貴大さんを支援する会
- 協    力:今⻄事件弁護団、龍谷大学犯罪学研究センター・科学鑑定ユニット、IPJ学生ボランティア(京都女子大学、甲南大学、 獨協大学、立命館大学、龍谷大学)、KONANプレミアプロジェクト「冤罪事件の研究を通じた法教育の実践プロジェクト」

 

2.プログラム
1) はじめに  川上博之(大阪弁護士会)
2)今⻄貴大さんの事件の現状
    秋田真志、川﨑拓也、⻄川満喜、湯浅彩香、川﨑英明(大阪弁護士会)
    聞き手:IPJ学生ボランティア
3)今⻄貴大さんの家族からのメッセージ
4)家族会の活動の軌跡
    菅家英昭(SBS/AHTを考える家族の会代表、今⻄貴大さんを支援する会代表)
5)SBS検証プロジェクト5年間の歩み
    古川原明子(龍谷大学)
6)海外からのメッセージ
    ウェイニー・スクワイア医師 (イギリス・脳神経病理医)など
7)おわりに  笹倉香奈(甲南大学)

司会 宇野裕明・陳愛(大阪弁護士会)

 

3.取材・参加申込方法
取材申込は、本学・古川原教授(kogawara@law.ryukoku.ac.jp)宛にご連絡ください。
(対面/オンライともに)視聴のみの参加申込は、以下WEBページ内のフォームまたはチラシ記載のQRコードよりお申込みください。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-12094.html 
(申込期限:3月2日(木)正午 ※対面参加定員は先着50名。定員に達ししだい受付終了)

 

4.用語解説
1)揺さぶられっこ症候群(Shaken Baby Syndrome=SBS)
SBSはShaken Baby Syndromeの略称で「揺さぶられっこ症候群」のことです。一方、AHTはAbusive Head Traumaの略称で「虐待による頭部外傷」を指します。①急性硬膜下血腫の存在、②網膜出血の存在、③脳腫脹/脳浮腫の存在、④大きな事故エピソードの不存在があれば、SBS/AHTだと診断できるとされてきましたが、最近では「SBS/AHTに特異な所見がある」(例:多層多発の網膜出血)、「除外診断をしたから他の可能性はない」等、医師ごとに独自の説を主張しています。しかし、いずれにも十分なエビデンスはありません。現在SBS/AHTを根拠とした刑事裁判では無罪判決が続出しています。

 

2)龍谷大学 犯罪学研究センター
「犯罪学」(英:Criminology)とは、犯罪にかかわる事項を科学的に解明し、犯罪対策に資することを目的とする学問です。これまで建学の精神を具現化する事業として、犯罪予防と対人支援を基軸とする龍谷大学ならではの犯罪学の創生に向けた研究と社会実装活動を展開してきました。

 

3)今西貴大さんの事件
今西貴大さんは、当時2歳のAちゃんの頭部に強い暴行を加えて死亡させたなどとして、2021年3月に懲役12年の実刑判決を言い渡されました。しかし、逮捕段階から一貫して虐待を否定してきました。現在、今西さんは控訴審で無実を主張して戦っています。本件では証拠とされた医師の鑑定について争いがあります。詳細は、イノセンス・プロジェクト・ジャパンHP「今西事件」を参照。
https://innocenceprojectjapan.org/imanishi/ 
 



問い合わせ先:
龍谷大学 犯罪学研究センター  Tel 075-645-2184 Fax 075-645-2240
E-mail crimrc2016@ad.ryukoku.ac.jp    URL  https://crimrc.ryukoku.ac.jp/