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2023.04.03

ディビッド・ブルースター研究員が『違法薬物政策に関する実務家の見解』研究報告書を発行【犯罪学研究センター】

日本における多様な実務家の見解を体系的に比較する、初の実証研究の成果を発表

2023年4月、犯罪学研究センター治療的司法」ユニットのディビッド・ブルースター研究員(金沢美術工芸大学・講師)が『違法薬物政策に関する実務家の見解』研究報告書を発行しました。同報告書は、ブルースター研究員が龍谷大学博士研究員(PD)在籍時の2017年から取り組んできた研究課題で、およそ6年に渡る研究の集大成です*1


報告書カバー画像

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ディビッド・ブルースター研究員(金沢美術工芸大学・講師)

ディビッド・ブルースター研究員(金沢美術工芸大学・講師)

世界の薬物政策の潮流が変化してきたように、日本においても過去20年間の間に違法薬物使用者に関する政策の状況は大きく変化してきました。
ブルースター研究員は、報告書の序文で「この転換期において、実務家の違法薬物使用者への対応が変化しているだけでなく、この領域への多様な実務家の参入により、日本の薬物政策にまつわる議論も活性化してきている。 <中略> 政策対応の最前線で重要な位置を占めている実務家たちがどのような目標を優先する(または優先しない)かを理解することは、現代の違法薬物の状況を把握する上で、極めて重要である。」と述べています。

本研究の基盤となるデータ分析では、個人の主観的な視点を測定する体系的な方法で、価値観を共有する人々のグループを識別することが可能なQ技法が用いられました。刑事司法、保健、社会福祉、行政の各分野の組織に所属する89名の調査参加者を対象に、日本における違法薬物対策に関する64個の項目(目標)を、各人の優先度に応じて順位付けしてもらう調査を実施。この目標とは、「道徳、犯罪、刑事司法」、「健康と支援」、 「自律とコミュニティへの参加」、そして「組織的利益とサービス提供」というテーマに関連したものです。項目が置かれた位置ごとに数値を設定しており、各参加者の数値データをもとに因子分析を行いました。これにより、違法薬物政策に関して日本における多様な実務家の見解を体系的に比較したのです。

また、分析結果から4テーマごとに実務家の見解の類似点と相違点を論じた上で、質的アンケートデータから実務家の見解の経年変化と継続性に関して文脈化して説明することを試みています。

 
 
違法薬物使用者に関わる実務家の視点の調査・検討から見えてきた現代の様相とは何か。
デジタル版の報告書へのリンクはこちらです。ぜひご一読ください。
https://bit.ly/3M05dX4


報告書(デジタル版)QRコード

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・2021.01.22 『日本における違法薬物統制文化〜研究成果中間報告』を開催【犯罪学研究センター】
・2020.06.05 【犯罪学Café Talk】ディビッド・ブルースター(David Brewster)氏 (犯罪学研究センター・博士研究員)

【補注】
*1 研究資金:本研究はJSPS科研費 19K13548の助成を受けたものです。
日本学術振興会・科研費  若手研究(2019年4月 - 2022年3月)“The Japanese Culture of Illegal Drug Control: A Q-sort of Practitioner Values”