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2023.08.07

心中未遂事件をめぐる全国高校生対抗オンライン文学模擬裁判を開廷 全国の6校が対戦。争点は、心中を遂げられなかった被告人による殺人か、嘱託殺人か!? < 8/11(金)オンライン開催、“傍聴人”はWebから要事前登録>

【本件のポイント】

  • 「国語とは言葉を通して人間を考える教科」であるという理念から開発されたユニークな文学模擬裁判。法的思考力や刑事裁判の意義の理解にとどまらず、人間や社会を考える眼差しについて深めることをねらいとした法教育イベント
  • 実際の事件やそれを模擬裁判化した書籍を参考に独自のシナリオ教材を作成。近松門左衛門『曾根崎心中』、1932年に起きた坂田山心中事件に関わる歌謡曲や映画、文学者の情死事件(有島武郎と波多野秋子の心中事件、島村抱月や松井須磨子の後追い心中)などを織り込み、文学的色彩を加えた
  • 参加校の高校生らが検察側・弁護側どちらかの立場の役になりきり、立証・弁護活動を展開


【本件の概要】
 龍谷大学文学部・札埜研究室は、2023年8月11日(金・祝)に、全国6チームの高校生が対抗する文学模擬裁判イベント「第3回夏のオンライン高校生模擬裁判交流大会」を実施します。当大会は2020年8月9日の初開催以来、選手権や交流大会などを含めて今回で7回目の開催となります。
 今回の題材は「心中」。心中とは情死とも言われ、悲恋の象徴として文学の題材としてよくとりあげられます。現実においても親密なカップルによる心中は、社会問題化することが多くあります。今回のシナリオでは、1932年に神奈川県で起きた「坂田山心中事件」や、近年頻繁に報じられる「介護殺人」「保険金殺人」などの要素も独自に盛り込んでいます。
 参加高校は、全国から応募のあった6校。当日は、参加校が検察官役・弁護人役に分かれて立証・弁護活動を展開します。審査員は、それらの内容を読解力、人間や社会への洞察力、論理性、表現力等の視点から評価・採点し、得点の高い順から優勝校・準優勝校を決定します。大会の様子は、どなたでも事前申込制で“傍聴”することが可能です。18歳裁判員時代の司法参加を見据えた法教育の在り方に一石を投じるイベントであると同時に、近時の話題について参加者と共に考える機会とします。

1.実施概要
- 名称:第3回夏のオンライン高校生模擬裁判交流大会
- 日程:2023年8月11日(金・祝)9:00~17:30(終了見込)
- 会場:オンライン法廷(Zoom・1法廷で実施予定)
- 傍聴(参加):無料 ※下記URLから事前登録制
- 主催:龍谷大学札埜研究室・オンライン高校生文学模擬裁判交流大会実行委員会
- 後援:龍谷大学犯罪学研究センター、一般社団法人刑事司法未来、龍谷大学矯正・保護総合センター、京都教育大学附属高等学校模擬裁判同窓会、龍谷大学法情報研究会、刑事弁護オアシス

2. 大会当日のプログラム(予定)※試合状況により、時間変更の可能性あり
9:00  Zoom入室開始   9:15-9:30   諸注意等の説明
9:30-11:30 第1試合(検察)済美平成VS(弁護)神戸海星 | 11:30-12:15 休憩45分
12:15-14:15 第2試合(検察)札幌龍谷VS(弁護)上智福岡 | 14:15-14:40 休憩25分
14:40-16:40 第3試合(検察)神戸女学院VS(弁護)京都女子
17:00頃 講評/成績発表・表彰式   17:30 終了見込

3.出場校(6校・順不同)
札幌龍谷学園高等学校(北海道)/京都女子高等学校(京都)/神戸女学院高等学部(兵庫)/神戸海星女子学院高等学校(兵庫)/済美平成中等教育学校(愛媛)/上智福岡高等学校(福岡)

4.大会主催者プロフィール
札埜和男(ふだの・かずお)准教授(本学文学部)
大阪府生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。博士(文学・大阪大学)。現場での教員生活31年(中学校2年・高校29年)。そのうち担任20回、最初の3年間は社会科教員(国語・社会・英語の中高免許状所有)。2017年4月から岡山理科大学教育学部准教授として赴任し、2022年4月から龍谷大学文学部哲学科(教育学専攻)に准教授として着任。龍谷大学犯罪学研究センター兼任研究員。日本弁護士連合会主催の模擬裁判甲子園では、京都教育大学附属高校を過去11回大会中8回優勝、3回準優勝に導く。「模擬裁判師」と名乗り模擬裁判を広めるために全国各地へ指導に赴き、模擬裁判指導歴は数百回に及ぶ。

5.詳細・傍聴(参加)申込方法
以下URLから詳細を確認のうえ、ページ内のフォームに必要事項を入力しお申込みください。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-13149.html
※申込期限:8月10日(木)正午

6.用語解説
1)今回の文学模擬裁判のシナリオ
【現代版近松「坂田山心中未遂事件」のあらすじ】:
 令和5年5月8日午後8時頃、神奈川県中郡大磯町のホテル坂田山において、夫が内縁の妻をベルトで首を絞めて殺害するという事件が起こった。
 妻はガンに冒され余命幾許もなかった。自分の命が短いことをわかっていた妻は、夫に以前から「殺してほしい」と漏らしていた。殺害された日はホテルで泥酔し、夫に「殺してくれ」と迫ったのである。妻を苦しみから救ってやりたいという思いから、夫は殺すことを託されたと判断し、妻の首を絞め、それでも殺せないとわかって自分のベルトで締めあげ、殺害に至った。罪の重みにたえかねた夫はそれから後を追って自分も死のうと試みたが死に切れず、警察に自ら電話して殺したことを告げ逮捕された。
 その後の調べで、確かに夫は妻を愛していたが、民間療法の高額な治療費で生活は圧迫され苦しい状態であったことが明らかになった。また消費者金融や以前在職していた会社に借金があり、ギャンブルもしていたことがわかった。そこで警察は取調べの結果、嘱託殺人ではなく保険金を狙った「殺人」にあたると判断した。
 こうして、この事件は検察官から横浜地方裁判所小田原支部に起訴状が提出され、公訴が提起された。
 検察官は「殺人罪」を主張し、弁護人は妻を殺したことには間違いがないとしつつも、嘱託があったとして「嘱託殺人罪」を主張した。  ※主な参考文献は上記URLを参照


問い合わせ先:龍谷大学 犯罪学研究センター
Tel 075-645-2184  crimrc2016@ad.ryukoku.ac.jp   https://crimrc.ryukoku.ac.jp/