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2024.04.05

ジュゴンがまだ琉球列島に生息している科学的証拠を公表【生物多様性科学研究センター/先端理工学部】

生物多様性科学研究センターの研究員らがDNA分析を担当、研究成果を国際ジャーナルに発表

(一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所 所長の小澤宏之氏をはじめ、本学先端理工学部・生物多様性科学研究センターの丸山敦教授、山中裕樹教授が関わる共同研究グループは、2019年以降に地域絶滅した可能性が高いとされていた南西諸島の海棲哺乳類ジュゴンについて、野外で採取された糞のDNA分析や遊泳個体の目撃情報から、現在も琉球列島に生息していることを突き止め、Scientific Reports誌(Springer-Nature社)にて公表しました。

【発表論文】
英文タイトル:Fecal DNA analysis coupled with the sighting records re-expanded a known distribution of dugongs in Ryukyu Islands after half a century
タイトル和訳:糞のDNA分析と目撃情報との組み合わせにより、半世紀ぶりに琉球列島におけるジュゴンの分布を再確認

著者:
小澤宏之(おざわひろゆき):(一財)沖縄県環境科学センター総合環境研究所 所長 ・・・総括・現地調査
吉浜崇浩(よしはまたかひろ):(株)蟹蔵代表取締役 ・・・ドローン撮影・現地調査
宜志富紹吾(ぎしとみしょうご)・渡邊那津季(わたなべなつき):沖縄県環境科学センター ・・・DNA分析
市川光太郎(いちかわこうたろう):京都大学フィールド科学教育研究センター准教授 ・・・現地調査
佐藤圭一(さとうけいいち):(一財)沖縄美ら島財団水族館管理部・事業部統括 ・・・現地調査
渡邊謙太(わたなべけんた):沖縄工業高等専門学校 ・・・現地調査
高野克彦(たかのかつひこ)・落合洋介(おちあいようすけ):日本放送協会(NHK) ・・・現地調査
山中裕樹(やまなかひろき)・丸山敦(まるやまあつし):龍谷大学先端理工学部教授 ・・・DNA分析

掲載誌:国際オンライン専門誌「Scientific Reports」(Springer-Nature社)
DOI:10.1038/s41598-024-58674-8 ※掲載日:2024年4月4日


2019年9月26日、伊良部島の沿岸部でジュゴンと思われる海獣の空撮写真(本論文の第2著者である吉浜崇浩氏がドローン撮影) 出典:https://doi.org/10.1038/s41598-024-58674-8

2019年9月26日、伊良部島の沿岸部でジュゴンと思われる海獣の空撮写真(本論文の第2著者である吉浜崇浩氏がドローン撮影)
出典:https://doi.org/10.1038/s41598-024-58674-8

2019年に沖縄県国頭郡今帰仁村で死亡個体が見つかって以降、南西諸島のジュゴンは地域絶滅した可能性が高いことが論文で報告されていました。このような謎の多いジュゴンの分布状況を知るには、地元の沿岸漁業者などから提供される目撃情報が有効ですが、合わせて海域で採取された糞のDNA分析を行なうことでより正確な情報が得られます。
今回、丸山敦教授、山中裕樹教授らが関わったDNA分析では、ジュゴン固有の配列をもつDNAが、沖縄島東部の久志(くし)で採取された糞、宮古諸島の伊良部島佐和田で採取された糞から、それぞれ検出されました。なお、屋那覇(やなは)島で採取された糞からは、検出されませんでした。

今後はこれらの技術を用いて日本におけるジュゴンの分布などの研究を進め、絶滅が危惧されるジュゴンや餌場となる海草藻場の保全対策に取り組んでいく必要があります。
詳細はプレスリリースを参照してください。

 
今回のジュゴンのDNA検出に関して、丸山敦教授(本学先端理工学部/生物多様性科学研究センター・兼任研究員)のコメントを紹介します。

ジュゴンという愛くるしくて希少な動物が、まだ日本から絶滅していなかったことが、共同研究チームの数年間にわたる協力によって、ようやく明らかになりました。海域全体の保護・保全にとって重要な意味を持つ発見だと思いますし、そのような発見を総合的にサポートできたことを光栄に思っています。