2024.09.03
「政策実践・探究演習」(海外)韓国PBL 現地レポート①【政策学部】
政策学部では2023年度と2024年度の2ヵ年、アジアプログラムとして「若者政策の日韓比較」をテーマに韓国PBLを実施しています。(担当:安 周永教授)2024年度は13名(3~4回生、大学院生)が受講中です。事前学習で日本の現状を学び、9月1日~8日、ソウルでフィールドワークを行いました。滞在中のレポートをお伝えします。
2024年9月2日(月)
<午前>
貸会議室フォレストググにて、青年ユニオン 金ジヒョン事務局長から「韓国青年運動現況と青年ユニオンの活動」について話を聞きました。青年ユニオンは、2010年に発足した韓国発の世代別労働組合です。現在、約2,000人の組合員が加盟しています。
<午後>
同じ会場で、ユニオンセンター Kim Jong-Jin理事長から「韓国の青年労働市場の特徴と政策課題」について話を聞きました。さまざまな統計を見ながら、韓国の若者がおかれた状況と課題、2010年に制定された青年基本法の特徴を理解しました。
講義のあとは学部生や大学院生から質問があり、日本の状況と照らし合わせながら学びを深めました。(*講義と質疑応答は、逐次通訳をしていただきました)
以下、受講生の報告です。
〈午前〉
金ジヒョン事務局長の講義を通して、韓国の若者政策における青年ユニオンの必要性を学びました。青年ユニオンは、労働相談を介して組合員になる人が多く、実際に労働問題を身近に感じている人達で構成されている団体です。
一般的な労働組合は大企業の若者を中心に構成され、中小企業に務める若者や、就業していない若者に関する問題への取り組みはあまり行われていません。そのような中で、青年ユニオンの存在は、韓国の若者の声を直接聞いて、一部に対してではなく、すべての若者が抱える労働問題を解消するきっかけになると考えられます。
また、日本と比較して韓国における、大企業と中小企業の賃金格差は深刻であり、韓国の若者は大企業を目指すしかないという実態を学んだことで、日本とは異なる就業難の原因があることを理解しました。
明日からも、日本の若者政策と比較しつつ、韓国の若者政策の実態について理解を深めていきたいです。
(政策学部 3回生 石田初葵)
〈午後〉
ユニオンセンターは「すべての将来の世代と働く市民の権利を保証し、社会的不平等をなくす」ために活動している団体です。そして、Kim Jong-Jin理事長はその代表を務めています。
長年にわたり労働者の権利向上に尽力してきた労働問題に関する専門家です。Kim Jong-Jin理事長は、「韓国は大学を卒業してから就職までに11ヶ月以上かかる。しかし、1年のうちに大半が離職する。この課題を解決しない限りは韓国に未来はない」と冒頭で話されていました。
この言葉はとても印象に残りました。
韓国の若者は、学費や居住問題に直面し、大学卒業後、就職までに平均11.5ヶ月かかる。競争率が高い大企業に就職することは難しく、また中小企業に就職したとしても、そこが不安定な就職先であることが多く、10人中7人が1年以内に離職しています。また、550万人の若者が非正規社員や個人事業者、ニートであり、これはソウル市の人口の半分に相当します。これに加えて、住居や健康など非労働市場にも目を向けなければならないと話されていました。
Kim Jong-Jin理事長は、この問題に対して「大企業と中小企業の格差是正だけでなく、公共機関の職を増やすことが重要である」と具体的な解決策を紹介していました。
このことから、韓国の若者が安定した雇用を得るための選択肢が限られているため、さらなる政策の見直しが必要だと学びました。明日は住居問題の話を伺いに行くので、今日少し話題にも出た「若者の非労働市場」について詳しく学びたいと思います。
(政策学部 3回生 金丸尚樹)