2026.03.06
政策実践・探究演習(海外)イタリアPBL 現地レポート(2)【政策学部】
政策学部では、ヨーロッパの都市において現地大学と連携して国際CBLプログラムを2022年度より開講しています。2025年度は、イタリア・トリノ市において、トリノ工科大学と連携し、グリーン・トランジション政策について学んでいます。2026年3月1日~6日の現地プログラムについて、参加学生の報告を発信しています。
3月3日(火)
午前中は、昨日案内していただいたヴァレンティーノ城で、3つのレクチャーを受けました。1つ目のテーマは「グリーン・トランジションとは何か?」、2つ目のテーマは「気候変動に対する公共施設の介入について」、3つ目のテーマは「モビリティの持続可能性 - 歩行者の社会正義 - 」です。その後は、地下鉄Marconi駅からヴァレンティーノ城を結ぶ歩行者空間を実際に歩き、近くのレストランで昼食です。午後からは地下鉄とバスで移動し、トリノ市の北部地域を訪れました。現地ではトリノ工科大学の学生(Ph.D)にご案内いただき、工業地区の変容や緑地のあり方、地下鉄開通に伴うまちの反応について解説してもらいながらまち歩きを行いました。
【参加学生からの報告】
8時、ホテルを出発し地下鉄でトリノ工科大学に向かいました。
9時、トリノ工科大学の先生方と合流し、3つのレクチャーを受けました。
1人目のオンブレッタ先生は、都市部の気温上昇を課題に挙げ、欧州グリーンディールなどの政策によって義務付けられたグリーン・トランジションは、気候危機に対処するために公正かつ包括的に進める必要があるとお話されました。また、地域のレジリエンスを評価する指標を見せていただき、北欧などはレジリエンスに優れるものの、イタリアではその指標が高くないことを踏まえ、先駆的な事例としてバルセロナの気候シェルターの取り組みについて教えていただきました。
2人目のエレナ先生からは、都市部の気温上昇に対する気候シェルターの取り組みに関して、特に図書館に焦点をあてたお話をしていただきました。ヨーロッパでは日本と同様に高齢化が進んでおり、気候変動の課題と組み合わさって深刻な問題となっています。そのような弱い立場にある人向けに気候シェルターを提供しても、公正にアクセスすることは難しく、公共サービスのあり方を考える必要があります。
3人目のエリザベッタ先生からは、個人が望む活動・場所・手段を自由に選べる権利をアクセシビリティとして定義し、空間的・時間的・個人的・保護的に分類される多様な性質を持つことを教えていただきました。事例では、道路空間の経年変化を示してもらい、自動車優位性やデザイン性など、何を社会的正義とするかを考えるきっかけをいただきました。その背景にある、空間のあり方を決める意思決定組織に関しても示唆が与えられました。
12時半、ヴァレンティーノ城前の歩行者空間を実際に歩きつつ、レストランに移動し昼食をとりました。
14時、地下鉄とバスを乗り継いでトリノ市北部地域に移動しました。トリノ工科大学の学生(Ph.D)の方と合流し、解説を受けながらまち歩きを行います。まち歩きでは、その時々に目に入った様々なまちの要素に対して解説をしていただきました。
トリノにはフィアットという自動車会社があり、トリノの自動車依存に影響を与えていたそうです。特に、公共交通に関してもバスの製造が優先され、鉄道が敷かれるのが遅くなりました。その地上に敷かれた鉄道は、今は役目を終えて線路も剝がされています。その跡地は植物によって緑がもたらされましたが、現在ではポイ捨てによるごみの堆積が課題となっています。現在、その線路跡地の地下はトリノにおける第二の地下鉄路線になろうとしています。これに関しては住民の間でも意見が割れており、今までの緑地空間などの景観が破壊されてしまうことや、交通アクセスへの期待などの間で揺れているそうです。
緑地空間に関しては、ポー川周辺は自然環境を保護する区域に指定されているそうです。ポー川、緑地、土手、公園という構造になっており、人々が緑地に触れ、豊かな時間を過ごす空間が形成されていました。しかし、トリノの緑地は分断されているそうです。これは生物学の面から課題であり、生物が緑地と緑地の間を移動することで生物多様性が保証されることも、都市にとって重要な要素であることを教えていただきました。
歴史的な工業地区であることもトリノ市北部地域の特徴です。よくよくまちを見ていると、昔ながらのギザギザの屋根をした建物が残っていたり、昔は2,500人を雇用していたタバコ製造の工場跡地が残されていました。老朽化のため中には入れませんでしたが、まちの景観を形成する建物になっています。また、その工場周辺部に住む従業員の住宅も多く立地しています。集合型住宅やモダンな教会、石畳が残りカフェが立地する路地など、この地域での生活感があふれる場所をたくさん紹介していただきました。
18時半、6日に移動するトリノ→ローマの高速鉄道の切符を購入した後、各々が自由時間を過ごして本日の活動は終了です。
1日を振り返って
気候変動という社会課題に対して漠然とした課題感をもっていましたが、ヨーロッパで気候変動によってどれだけの人が亡くなっているのか、苦しんでいるのか、数値で示されて改めてその課題の深刻さを実感しました。普段私たちが当たり前のように享受しているエアコンも、イタリアではその恩恵にあずかれずに苦しんでいる人がおり、そのような人たちを含めて皆が暮らしやすいまちを作るためにグリーン・トランジションの政策が行われていることが理解できました。どのような政策が実施されているかだけでなく、なぜ政策が実施されなければならないのか、という背景にある課題を踏まえて政策を理解することが重要です。
また、「暑いからエアコンのある図書館に涼みに行こう」という感覚はイタリアも日本も同じように持っていますが、その日常的な行動において、立場の弱い人にとっての利用可能性を調査した点については、それって確かに役に立つ研究になるな、と着眼点の秀逸さに感心し、研究において福祉的な視点を持てるようになろうと思いました。
中心市街地を外れた場所でのまち歩きも、様々な発見があり楽しめました。工業地域と住宅地域が混在しているという点では京都と少し似た要素でありつつも、文化や政策によってまちの様相は全然違っています。ポー川も京都で考えれば鴨川だなぁと思いながら見ていましたが、植生や川の流れが違っているため、流域の空間は鴨川とは雰囲気が違っています。ただ、川沿いを走ったり散歩している人々がいる点では一緒で、京都とトリノを実感レベルで相対的に見る良い機会となりました。
【執筆者】
内田 桃(政策学部2年生)
伊坂 琴音(政策学部2年生)
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