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2026.03.11

政策実践・探究演習(海外)イタリア PBL 現地レポート(3)【政策学部】

 政策学部では、ヨーロッパの都市において現地大学と連携して国際CBLプログラムを2022年度より開講しています。2025年度は、イタリア・トリノ市において、トリノ工科大学と連携し、グリーン・トランジション政策について学んでいます。2026年3月1日~6日の現地プログラムについて、参加学生の報告を発信しています。

【参加学生からの報告】
 午前中は、昨日と同様にヴァレンティーノ城キャンパスにて、トリノ工科大学の先生方から3つの講義を受けました。
 1つ目は「グリーントランジションとソーシャルイノベーション」についてです。緑地化は住民・生態系・経済の三側面に利益をもたらすとされています。オーストラリア・ブリスベン市の事例では、ヘドニック価格モデル(HPM)を用いた分析により、ゴルフコースを公園に転換すると、公園から半径750メートル以内の住宅価格が平均3%上昇すると推定されていることを学びました。
 しかし、都市公園の整備による地価上昇は「グリーン・ジェントリフィケーション」を引き起こす可能性があり、低所得者層に悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため、家賃格差を防ぐための適切な政策が必要であることを理解しました。
 2つ目は「空き空間における再開発プロセス」です。カナダ・モントリオールを事例に、衰退や人口流出によって生まれた荒廃地は本当に無価値なのかという問いについて学びました。荒地は生物の生息地となり、都市の自然を多様化させる可能性があるという視点や、汚染された生態系も価値として捉える考え方について理解を深めました。
 3つ目は「トリノにおける都市食料政策」です。都市部では食料生産や農村への関心が薄れがちであるからこそ、環境問題や社会課題を食の観点から再考する必要があると学びました。トリノでは、市や大学が研究パートナーシップを組み、目的・行動・成果というプロセスを通じて、食料システムに関するデータベースの構築や関係者へのインタビューを行い、議論を深める場を設けていることを知りました。
 その後、龍谷大学大学院政策学研究科1年の山本安紋さんによる「復興における地域資源の役割―Territorioに焦点を当てて―」の発表を聴きました。東日本大震災の復興計画において意思決定が中心部に集中している現状を踏まえ、イタリア語の「Territorio」という概念を基に、主体的活動、ボトムアップ型の協働ラボ活動、オープンアクセス型社会資本の管理という3点から、「コモンズの精神」に基づく内発的発展の重要性について学びました。


講義を受けている様子

 13時にはトラムとバスを乗り継ぎ、トリノソーシャルファクトリーが支援するレストラン「Locanda(ロカンダ)」で昼食をとりました。このレストランは、若者や移民の雇用支援、社会的に困難な立場にある人々への就労トレーニング、地域コミュニティの形成などを目的として運営されていると説明を受けました。
15時には、トリノ市が運営する市立図書館(Biblioteca Civica Cesare Pavese)を訪問しました。ここは廃校となった中学校を改修して図書館として活用しており、老若男女が利用できる公共空間となっています。本の貸出だけでなく、子ども向けイベントや学習支援、学生の勉強スペースの提供など、多様な機能を持っていることを学びました。


図書館でお話を伺っている様子

 図書館ではさらに3つの講義を受けました。
 1つ目は「トリノ都市庭園のための組織モデル」です。自治体が土地を所有し市民に割り当てる地区菜園、自治体所有地をNGOが管理する菜園、そして自治体と協会が連携し社会的・技術的革新を目指す新たな都市型菜園の3類型について学びました。
 2つ目は「EUミッション100の気候中立およびスマートシティ」です。トリノはEUの2030年までに気候中立・スマートシティを実現する100の先導都市の一つとして選定され、その目標に取り組んでいます。さらに、2050年までに他のヨーロッパ都市が追随できるモデルとなることが求められていると説明を受けました。トリノ気候契約(CCC)に基づき、CO₂削減や公共空間の緑化、市民参加の強化が進められていることを学びました。
 3つ目は「ネイチャーベースドソリューション(NbS)」について講義を受けました。EUでは、研究事業として多くの資金を投じて100以上のプロジェクトが実施されており、その中で、トリノを対象としたproGIregというプロジェクトが紹介され、そこでは、都市農園や都市森林、通路緑化などのNbSが実施されていることを学びました。


図書館で講義を受けている様子

 1日を振り返ってこれまで私は、都市景観を向上させるためには緑を増やすことが最も効果的であると考えていました。しかし、緑地化による地価上昇が既存住民の生活を圧迫する可能性があることを知り、都市政策は景観だけでなく社会的公平性も考慮する必要があると感じました。

 また、荒廃地を撤去して再開発するのではなく、自然に返すという発想は私にとって非常に新鮮でした。日本では空き家問題に対して解体が選択されることが多いですが、自然化という視点はあまり一般的ではないように感じました。トリノの事例と日本を比較することで、新たな考え方を学ぶことができました。
 図書館見学では、廃校を地域の共有空間として再生し、幅広い世代が自由に利用している様子が印象的でした。私の住む地域では利用者層が偏っていると感じていたため、誰もが自分の目的に応じて利用できる環境が整っている点は非常に魅力的であると感じました。
 密度の濃い1日でしたが、多くの学びを得ることができた有意義な研修でした。

戌亥美咲(政策学部2回生)
宅和翠(政策学部2回生)

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