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2026.10.06

台湾先住民サイシャット族の蓬莱部落でフィールドワークを実施(2)【政策学部】

2026年9月10日から13日の4日間、学生14名と教職員5名(政策学部 金紅実准教授・石倉研准教授・並木州太朗講師、先端理工学部 奥田哲士教授、職員1名)が台湾先住民サイシャット族の蓬莱集落にてフィールドワークを行いました。滞在中のレポートをお伝えします。

9月12日(土)
午前中、苗栗県南庄郷蓬莱部落の養蜂農家を訪問し、サイシャット族の住民族が営む養蜂産業について学びました。養蜂を生業とする生産者の丁寧な案内のもと、私たちは実際の養蜂農場を見て回り、ミツバチの生態や巣箱の基本的な役割、季節ごとの巣箱の管理の注意点、病害虫の予防方法など、養蜂に関する幅広い実務知識を学びました。

今回の訪問で特に高い関心を集めたのが、スズメバチ対策の独自改良装置でした。この装置は、龍谷大学の学生がサイシャット族に贈呈したスズメバチ防除器具をベースに、地元の養蜂農家が地域の環境や飼育スタイルに合わせて改良を加えたものでした。スズメバチによるミツバチへの攻撃を効果的に阻止するだけでなく、巣箱に近づいたスズメバチを捕獲する機能も備えており、養蜂の被害軽減に大きな効果を発揮していると紹介されました。


養蜂農家は、こうした技術を取り入れた養蜂を通じ、森林の下層空間を活用する林下経済の発展に取り込んでいました。ミツバチから採れる蜂蜜や花粉を商品として流通させることで、部族の経済的な収益を顕著に高めていると聞きました。今日の訪問を通じ、私たちは地域のサイシャット族の伝統的な知恵と現代技術が融合した持続可能な産業モデルを体験し、交流の意義を深めました。



昼食を終え午後から向かったのは人間国宝 潘三妹先生の編み物見学と編み物体験でした。見学では山仕事で必須の竹籠や神聖な儀式で使う神具など部族の生活に根差したものが作られ展示されていました。また、編み物体験では太陽をモチーフとしたサイシャットブ部族の「願い網」を潘林妹先生に教えられながら製作し、記念品としていただきました。
この「願い網」はサイシャット部族が自然と共に生きていることを伝えるものであり、願い事をするための物でもあります。サイシャット族では正月や春節ではなく、10回目の満月の日を新年の始まりとし、この日が終わると必ず1つ願い事をします。願い網は12の輪っかがありますが、これはサイシャット族が信仰する12の自然の神に由来するものです。願い事をして長老から蔓を貰い、何かしらの植物の種をぶら下げて毎日目にするところに飾り、願いが叶うようにと思いながら生活をします。これがサイシャット族に伝わる願い網の伝統です。

今回の体験と見学を通して、日本の統治時代や台湾政府の統治があっても自然に対する信仰や自然との繋がりを大切にし、伝統を途絶えさせずに紡いできた先人の努力を感じることができました。


その後、サイシャット族の伝統領域であるBAKASANを訪問しました。BAKASAN には、サイシャット族の言葉で「お父さん・お母さん・子どもが一つの家族になる」という意味が込められています。BAKASAN では、昔ながらの知恵を活かし、その場所の自然環境を活用した山づくりや自然災害の復旧活動などを行っています。


BAKASAN では、これまであまり崖崩れなどの自然災害は発生していませんでしたが、私たちが訪れる数日前に湧き水によって麓まで約200mの崖崩れが発生しました。今回の崖崩れの対応として、自然を活かした解決策であるNBS(Nature-based Solutions)という考え方が用いられました。NBSとは、主目的である社会課題の解決に向けて、原住民族の伝統的な知恵や知識を用いた課題解決の考え方です。また、近年関心が高まっている自然による癒しや、人の健康への好影響などの波及効果も期待されています。

私たちが本日行った活動は、崖崩れが発生した場所に石などを入れ、土砂の流出を防ぐ作業でした。この体験では、原住民族とNBSのことを知り、周囲の自然を感じながら、学生や現地の民族の方々と協力して作業を行いました。

この体験を通して、機械などに頼るのではなく、自然を活用して課題を解決するNBSという考え方について学ぶことができました。NBSは、自然環境を活かして災害を防ぐだけでなく、自然との共生や地域の人々との協力にもつながる点が良いと感じました。
今日は、サイシャット族の林下経済の一つである養蜂産業や、人間国宝の潘三妹先生による藤編み教室でのサイシャット族の「願い網」制作、BAKASANでの石積みを経験し、台湾の原住民の暮らしには、日本での自分の生活とは異なる部分が多くあることに気づきました。

最も大きな違いとして感じたのは、地域の人同士のつながりの強さです。日本では、近所に住んでいても普段から地域の人と協力して何かをしたり、世代を超えて交流したりする機会はそれほど多くないように感じます。しかし今回訪れた地域では、住民同士が協力しながら生活している様子をさまざまな場面で見ることができました。養蜂などの林下経済でも、自然の中にある資源を活用して地域の暮らしにつなげていて、「地域全体で生活をつくっている」という印象を受けました。

また、伝統文化との距離の近さも日本との違いだと感じた。藤編み教室では、人間国宝の潘三妹先生から直接教えていただいたが、「人間国宝」と聞いて想像していたような堅い雰囲気ではなく、とても親しみやすくアットホームだったことが印象に残っています。日本では伝統工芸や文化財に対して、博物館や特別な行事などで触れる「貴重で少し遠い存在」というイメージを持つことが多かったのですが、サイシャット族の「願い網」制作を体験して、台湾の原住民の伝統文化は、人々の交流や暮らしの中に身近なものとして存在し、次の世代へ受け継がれているように感じました。

さらに、BAKASANで石積みを体験したことで、自然との向き合い方についても違いを感じました。日本では災害で道路や堤防などが壊れた場合、行政や専門業者が重機を使って復旧するイメージが強く、自分たちが直接修復作業に参加することはほとんどありません。しかし、実際に自分たちの手で石を積む作業を経験すると非常に大変で、地域の人々がこれまで何度もこのような作業をしてきたと思うととても驚きました。同時に、自分たちの暮らす場所を自分たちで守ろうとする意識や団結力を感じました。

この三つの経験を通して、台湾の原住民の暮らしでは「自然」「伝統文化」「地域の人々」がそれぞれ別のものではなく、強く結びついていることが一番の発見でした。日本で生活していると、地域の人とのつながりや伝統文化、自然との関係を日常の中で意識する機会は少ない。しかし今回、原住民の方々と直接交流したことで、文化を守ることは昔のものをただ保存することではなく、人々が一緒に生活し、助け合いながら日常の中で受け継いでいくことでもあると気づきました。日本ではなかなか経験できない原住民の暮らしに実際に触れたからこそ、自分が普段当たり前だと思っていた日本の生活との違いを具体的に考えることができました。

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