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2018.06.06

特別講演『アメリカ社会における大量拘禁の闇』を開催【犯罪学研究センター】

刑事政策を再考する上で、重要な概念とは?

2018年5月18日、龍谷大学 犯罪学研究センターは、『アメリカ社会における大量拘禁の闇』をテーマに、ジョナサン・サイモン氏(UC Berkeley Law School教授:刑事法)にお話を聞く特別講演会を、本学深草学舎 至心館1階で開催し、約25名が参加しました。
【イベント概要はこちら】//www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-1765.html


現在、世界最大の拘禁大国であるアメリカ。本講演会ではまず、人口10万人あたりの拘禁率(黒人の若者の3人に1人が拘禁されている)や刑務所における過剰収容の実態、拘禁政策と犯罪率の関連など種々の資料を元に、アメリカの刑罰社会が抱える問題が浮き彫りになりました。

具体的には、アメリカでは犯罪に対する不安を煽ることで、市民全員を潜在的な犯罪加害者・被害者とし、教育格差の問題や福祉の問題などをすべて犯罪問題にすり替えて、刑罰に解決させようとしてきました。その結果、何か問題が起きた時、すぐに拘禁すれば良いという方針になっているものの、拘禁すること自体が将来の犯罪の可能性を高めてしまうなどの指摘もあります。こうした状況から、社会における拘禁の影響を再検討する必要があると、サイモン教授は問題提起します。


ジョナサン・サイモン氏(UC Berkeley Law School教授:刑事法)

ジョナサン・サイモン氏(UC Berkeley Law School教授:刑事法)

続いて、サイモン教授は「刑事政策を再考する上で、 “Dignity(尊厳)”、“Deterrence(抑止力)”、そしてRisk(危険)”が重要な概念(軸)になってくる」と話されました。

これらの概念は、一見両立し得ない関係性(Trade-off)のように見えますが、双方に影響を与え合う重要な要素と言えます。抑止やリスクにおいてエビデンスはとても重要です。犯罪を抑止(Deterrence)し、再犯を防止するためには、刑罰の確実性が重要で、簡易的な拘禁が効果的かもしれません。また、ホットスポットに対する集中的な取り締まりも効果的かもしれませんし、リスク(Risk)に基づく介入も考える必要があるかもしれません。しかし、これらは個人の尊厳(Dignity)という視点からみれば許されない部分もあります。サイモン教授は、刑事政策を考える上で、これら三つの概念が重要となることを指摘しつつも、個人的には尊厳が特に重要だとし、最近の新しい取り組みとして、「司法における手続的公正性(Procedural Justice)」に注目されていると話されました。手続的公正性とは、人びとが司法から人として尊重され公平に扱われると感じることで、司法を信頼できるものと考えるようになれば、人びとの遵法性が向上するという考え方で、犯罪学の分野で注目を集めている理論の一つです。

講演の総括では、サイモン教授ご自身の考えとして、「大量拘禁は、三つの概念のいずれからみても悲惨な結果しかもたらしていないと思う。そのため、アメリカ社会として考え直すべき時に来ている。私としては尊厳を最優先した上で、抑止力や危険性について考えていきたい」という言葉で締めくくられました。


浜井浩一 本学法学部教授(犯罪学研究センター政策評価ユニット長)

浜井浩一 本学法学部教授(犯罪学研究センター政策評価ユニット長)

最後に、浜井浩一 本学法学部教授(犯罪学研究センター政策評価ユニット長)から、「リスクを重視することは、西洋的価値観が侵食しているのではないか。6月の特別講演会*では、その続きとしてぜひ聞いて欲しい。」と閉会の挨拶と次回の案内をいただき、本セミナーを終了しました。

*【次回ご案内】特別講演会『リスク、刑事司法と西洋的法価値の浸蝕』
刑事司法において、なぜリスクという概念がこれほどまでに影響力を持つようになったのか、ペナル・ポピュリズムの第一人者ジョン・プラット教授が迫ります。
日時:2018年06月19日 18:15-20:15
場所:龍谷大学深草学舎至心館1階
//www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-1782.html

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【今回の講演概要】
テーマ:
「Mass incarceration as a crisis of penal values:Elements of a Criminal Justice System Which Does Not Depend on Incarceration」
講師:ジョナサン・サイモン氏(UC Berkeley Law School教授:刑事法)
モデレーター:浜井浩一(龍谷大学犯罪学研究センター制作評価ユニット長/国際部門長)
通訳:平山 真理(白鷗大学法学部教授)
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