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2018.11.01

犯罪学研究センター(CrimRC)おすすめシネマ No.2 「それでもボクはやってない」

不朽の名作から社会問題を考えてみませんか?

「犯罪学」(英:Criminology)とは、犯罪にかかわる事項を科学的に解明し、犯罪対策に資することを目的とする学問です。龍谷大学 犯罪学研究センター(CrimRC)では、学生のみなさんが「犯罪学」にふれる第一歩として、ぜひ鑑賞して欲しい作品を紹介します。
不朽の名作から社会問題を考えてみませんか?

紹介作品:
『それでもボクはやってない』(2007,日本)

監督:周防正行

2009年から始まった裁判員制度により、刑事裁判はもはや遠い出来事、他人事ではすまされない時代です。
この作品を通じて日本の刑事裁判について考えてみませんか?


◆あらすじ:
フリーターの金子徹平は、就職の面接に向かう途中、逮捕されてしまう。容疑は「痴漢」。日々行われる警察・検察での取り調べに対し、徹平は容疑を否認し続けるが、聞き入れられず、遂に起訴されてしまう。そして、開廷する刑事裁判。徹平は、弁護士や家族、友人など様々な人々の助けや励ましに勇気づけられながら、法廷の場で戦うことを決意するが…。

◆見どころ:
この映画は、いま日本で行われている刑事裁判とその周辺の模様を描いています。
「起訴をされたら有罪率99.9%」とされる日本の刑事裁判。ある人はこの状況を「精密司法」と褒め称えますが、本当にそうなのでしょうか?本作品を見ると、私たちが漠然と抱いている裁判のイメージとのあまりのギャップに驚くかもしれません。
本作は、数々のコメディ映画で知られる周防正行監督が綿密な取材を重ねて制作した社会派作品で、かつての監督作品を知るファンにも大きな衝撃を与えました。また、裁判描写だけでなく取り調べや留置所の様子など、作中のリアリティあるシーンには、研究者や弁護士をはじめとする法律家からも惜しみない賞賛が送られました。
2009年から始まった裁判員制度により、裁判員候補者として選出された場合、誰もが刑事裁判に臨むことが求められるようになりました。刑事裁判はもはや遠い出来事、他人事ではすまされない時代です。
この作品を通じて日本の刑事裁判について考えてみませんか?

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【シネマ鑑賞者のコメント】(※一部抜粋)
・日本の司法が抱える闇の実態が、リアルに描写されていて、とても怖い映画でした。
・「疑わしきは罰せずという刑事裁判では原則であること」の無意味さ、捜査機関のずさんな捜査方法、有罪率99.9%という数字の圧迫感、様々な問題が現代の日本の刑事裁判では存在することを映画であらわされていた。今後、刑事裁判について詳しく知りたいと感じた。
・やっていないにも関わらず、何日も拘留されるというのは、とても理不尽な世の中だと思いました。警察の捜査もあのような自白強要は極めて遺憾です。
・判決に際し主導権を握っているのが裁判官のみであり、公平さに欠けるように感じた。今の裁判の方法は不十分だと思う。
・警察は無理やり言わせて、書かせたり、ハンコを押すだけで、嘘の文章ができてしまうことを見て、本当に怖く感じた。今の日本の現実を知って、犯罪学のことをもっと知りたいと思った。

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【センター関係教員のコメント】

この映画は言うなれば、日本社会そのものを描いたホラー作品です。
だからこそ、映画館のような暗い空間にみんなで集まって観ることに意味があります。

そして、ストーリーそのものよりも、細かいディティールを追って観て欲しい。
リアリティに満ちた作品を通じて「心底こわい」と感じてもらうこと、それが日本の刑事司法を考える出発点となることでしょう。

浜井 浩一 本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長
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