Need Help?

News

ニュース

2018.12.04

犯罪学研究センター(CrimRC)おすすめシネマ No.5 「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」

不朽の名作から社会問題を考えてみませんか?


「犯罪学」(英:Criminology)とは、犯罪にかかわる事項を科学的に解明し、犯罪対策に資することを目的とする学問です。龍谷大学 犯罪学研究センター(CrimRC)では、学生のみなさんが「犯罪学」にふれる第一歩として、ぜひ鑑賞して欲しい作品を紹介します。
不朽の名作から社会問題を考えてみませんか?

紹介作品:
『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(2015,アメリカ)

原題: WHERE TO INVADE NEXT
監督:マイケル・ムーア

「幸福な生き方とは何なのか?君たちは、これからどのように生きるたいのか?」
マイケル・ムーア監督が贈る、現代に生きる人たちに捧げる世界侵略ドキュメンタリー。


◆あらすじ:
ある日、マイケル・ムーアはアメリカ国防総省に呼び出される。「度重なる侵略戦争がひとつも良い結果につながらない」からだ…。現在のアメリカの抱える切実な悩みを解決すべく、ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーアが、「侵略者」となり世界各国から「あるモノ」を根こそぎ略奪するため、ヨーロッパへと出撃する。侵略先の国々で知ることになる事実に、驚きを隠せないムーア監督。ムーア監督は侵略ミッションを果たし、無事に「あるモノ」を持ち帰ることができるのか?

◆見どころ:
『華氏911』や『ボウリング・フォー・コロンバイン』などで、アメリカが抱える問題の実態を暴き出し続けている、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー作品です。
これまで銃規制・対テロ戦争・医療保障・資本主義などアメリカのタイムリーな問題を、過激なアポなし突撃取材と、歯に衣着せぬ物言いで一刀両断してきたムーア監督。今回はアメリカ国内ではなく、‘世界侵略’へと旅立ちます。権力の片棒を担ぐこととなったムーア監督に課せられたミッションは侵略する国々に存在している「大切なモノ」をすべて持ち帰ること。驚くようなヨーロッパの実態を、ブラック・ユーモアをまじえながら、テンポよく見せてくれます。
 他国を参考にしたがらないアメリカ人。そして、第二次世界大戦以降、そんなアメリカに付き従ってきた、私たち日本人の心にもグサグサ突き刺さる内容です。
『幸福な生き方とは何なのか?君たちはこれからどのように生きたいのか?』
ムーア監督はそう問いかけています。現代に生きる人たちに捧げる、世界侵略ドキュメンタリー。答えは、この作品の中にあるのかも…。

- --------------------------------------------------- -
【シネマ鑑賞者のコメント】(※一部抜粋)
・イタリアの生産性の高さや、ノルウェーの再犯率、犯罪発生率の低さを見て、北風と太陽の理論が頭に浮かびました。その一方で、厳罰化や労働環境改革などの日本の流れが的外れに感じました。

・日本で進められている働き方改革は、この映画で示されたものとは逆行していると思った。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、今は性別による職業差別がだいぶ改善されているとはいえ、日本ではやはり"ガラスの天井"を感じて活躍することを諦めてしまった女性が少なからず存在する。しかし、この映画を観たことで、自分の周りでできることから一歩でもやっていこうと気持ちを新たにした。

- --------------------------------------------------- -
【センター関係教員のコメント】

近年、アメリカで厳罰化が進んでいく背景には、黒人と白人との対立がある。
実際のところ、近年の出生率のデータからみればマイノリティーと呼ばれる人々の出生率が高く、当然の流れとして人口における構成比率も上昇傾向にある。

アメリカでは、公民権運動*1の結果、表向きは差別が解消されたと言われるが、同時にマジョリティーであった白人からマイノリティーである黒人に対する恐怖心が元になって厳罰化が進んでいる。
私たちは「刑罰には強い逆進性がある」ことを見逃してはならない。社会における格差を、制度として公平にすればするほど、社会的弱者と呼ばれる人々が刑罰を受ける可能性が高くなる傾向があるのだ。

マイケル・ムーア監督は、一貫して反勢力の立場である。
この作品は、アメリカ社会が抱える闇と刑罰の在り方を、死刑や終身刑がなく刑務所も快適とされるノルウェーの刑罰の在り方と対比しながら紹介している作品である。刑罰について考える際にぜひとも参考にして欲しい。

浜井 浩一 本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長
>>関連記事:【犯罪学研究センター】国際部門長・政策評価ユニット長 インタビュー
- --------------------------------------------------- -


*1
公民権運動(Civil Rights Movement)…
1950〜60年代に全米を席捲した、マイノリティー、特に黒人が、憲法で認められた個人の権利の保障を訴えた運動。広義には、憲法の保障した権利の適用を求めるマイノリティーの運動全般を、狭義には、1954年のブラウン判決、55年のローザ・パークスによるバス乗車拒否事件、マーチン・ルーサー・キング牧師の指導したバス・ボイコット闘争以降の公民権法成立を要求する黒人の運動を指す。