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2019.03.01

第7回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を開催【犯罪学研究センター】

多様な視点からアプローチする「龍谷・犯罪学」

2019年2月11日、龍谷大学 犯罪学研究センターは第7回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」を、本学深草キャンパス 至心館1階で開催し、約10名の方が参加しました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-3155.html

今回の研究会では、浜井浩一(本学法学部教授・犯罪学研究センター国際部門長・「政策評価」ユニット長)、による発表が行われました。2月2日に当センターで主催した国際シンポジウム「エビデンスは何をどこまで明らかにしたのか;キャンベル共同計画・刑事司法グループの成果」を振り返りながら、エビデンスに基づいた犯罪予防・再犯防止の方策について解説が行われました。
【>>関連記事】NEWS「国際シンポジウム「エビデンスは何をどこまで明らかにしたのか」を開催」
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-3212.html


まず、キャンベル共同計画とは、「政策立案者や実務家、研究者、そして一般的市民が、立案や評価するさいに、参照できるエビデンスを提供すること」を目的に掲げる、非営利の研究ネットワークです。刑事司法の分野の他に、社会福祉や教育、開発援助など、さまざまなグループが存在します。キャンベル共同計画の中核となる考えは、害を与えないということ(NO HARM)です。従って、刑事司法の分野でいえば、犯罪に対する司法(警察・検察・裁判所・矯正施設等)の介入が有害であってはなりません。社会に悪影響を及ぼさないように、政策や介入について、その効果を正しく検証し、レビューなど調査結果をネット上で公開しています。


浜井浩一(本学法学部教授・犯罪学研究センター国際部門長・「政策評価」ユニット長)

浜井浩一(本学法学部教授・犯罪学研究センター国際部門長・「政策評価」ユニット長)


浜井教授はキャンベル共同計画が作り出してきた犯罪防止や再犯防止といった、犯罪学分野における科学的エビデンス(系統的レビュー)を紹介しました。

効果があった政策や対策には、以下の特徴が挙げられます。
・ターゲットを正確に絞って、具体的な解決策をきちんと提示したもの
・厳罰、懲罰的な改善指導よりも、対象者の認知の歪みを修正したりや行動に直接働きかけるもの。
・アフターケアを完備した支援型プログラム
・地域を巻き込み市民の共感・協力を得た政策 ex.) 「Third Party Policing(第三者警察活動)」*1

反対に、あまり効果が見られなかった政策や対策には、以下の特徴が挙げられます。
・人を抑えつけようとする政策 ex.)「Boot Camp」*2
・漠然と規範意識を高めさせるもの ex.) 「Scared Straight」*3
・強制的な行動規制による行動変容を望むもの ex.) 未成年に対する夜間外出禁止命令(アメリカ)



いろいろなエビデンスを紹介した上で、浜井教授は「Third Party Policing(第三者警察活動)」を引き合いに出しながら「大切なのは、違う立場の人間が同じ価値観を持ち、同じ目線で話し合って、目的を共有することである」と述べました。そのうえで、「これまで日本では、刑事司法分野の、警察・検察・裁判所・矯正施設等の機関が再犯防止に向けた目標・目的を共有してこなかった。しかし、近年ようやく各機関が同じ方向を向き、議論する潮流が生まれつつある。エビデンスを活用する場は、国レベルだけでなく、地域のレベルで行っていくことも大切だ」と主張し、発表を終えました。

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「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」は、犯罪学研究センターに関わる研究者間の情報共有はもとより、その最新の研究活動について、学内の研究員・学生などさまざまな方に知っていただく機会として、公開スタイルで開催しています。

今後もおおよそ月1回のペースで開催し、「龍谷・犯罪学」に関する活発な情報交換の場を設けていきます。
次回は3/5(火)に開催予定【詳細>>】です。ぜひふるってご参加ください。

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【補注】
*1「Third Party Policing(第三者警察活動)」
警察組織のみが治安対策を行うのではなく、住民組織や地域の事業者、学校等と協働で問題の対応にあたる施策。
現在、キャンベル共同計画に携わるLorraine Mazerolle(ロレイン・マッツェロール)教授が系統的レビューを作成している。

*2「ブート・キャンプ(Boot-Camp)」
非行少年に対して、軍隊で新兵に対して行われるような、厳格な規律に基づいた集団生活と訓練を科す更生プログラム。主にアメリカで実施されている。

*3「スケアード・ストレイト(Scared Straight)」
非行少年および非行化するおそれのある少年を刑務所に訪問させ、犯罪傾向の進んだ成人受刑者と接触させるもの。「Sared(怖がらせて)、Straight(まっすぐさせる)」というプログラム名の通り、成人受刑者に少年を脅かしてもらうことで少年たちにショックを与え、刑務所には行きたくないと思わせ、非行をやめさせることを企図している。
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【>>関連ページ】
キャンベル計画 日本語版(龍谷大学 犯罪学研究センターHP内)
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/campbell/