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2019.04.15

2018年度第3回法情報研究会を開催【犯罪学研究センター】

英国小説『ジーヴス』シリーズと「法教育・模擬裁判」の実践活動

2019年3月31日、「2018年度第3回龍谷大学法情報研究会」を本学深草キャンパス 紫光館で開催し、約30名が参加しました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-3206.html



法情報研究会は、一般市民に法律学をわかりやすく興味を抱いてもらうことを目的としています。今回の研究会は二部構成で展開されました。第一部は「英国小説『ジーヴス』シリーズより~英国文学の機敏をtranslateする~入門編」と題して、土山希美枝教授(本学政策学部)、森村たまき氏(翻訳家、国士館大学非常勤講師、犯罪学研究センター嘱託研究員)、勝田文氏(漫画家)によるトークセッション、第二部は「法教育・模擬裁判」の実践活動をテーマに、今井秀智氏(一般社団法人リーガルパーク・弁護士、犯罪学研究センター嘱託研究員)、札埜和男准教授(岡山理科大学・教育学部、犯罪学研究センター嘱託研究員)による報告が行われました。


写真左:英国小説『シーヴス』シリーズ、右:漫画『プリーズ・シーヴス』シリーズ

写真左:英国小説『シーヴス』シリーズ、右:漫画『プリーズ・シーヴス』シリーズ

第一部:トーク会「英国小説『ジーヴス』シリーズより~英国文学の機敏をtranslateする~入門編」
『ジーヴス』の著者は、イギリスのユーモア小説の巨匠であるウッドハウス(P.G. Wodehouse, 1881-1975)です。このシリーズは、主人公の執事ジーヴスが主人で貴族のバーティ・ウースターにふりかかる様々なトラブルを見事に解決していく話で、イギリスではユーモア小説の最高傑作と評され、何度も映像化されています。

今回ゲストでお招きした森村たまき氏は、英国小説『ジーヴス』シリーズ全14冊を翻訳しました。森村氏は本作について「以前からウッドハウスの世界観が大好きでした。翻訳の際に、読者の方々に1ページに一度笑っていただける小説にしようと意識しました。ただ、舞台が1930年代のイギリスということもあり、当時の情景表現や言葉遣いに苦心しました」と語りました。

勝田文氏は、森村氏が翻訳した小説をもとに漫画『プリーズ・ジーヴス』を描きました。勝田氏は、当時を振り返りながら「描き始めた当初は絵に迷いがありました。しかし、ノーマン・マーフィー(イギリスウッドハウス協会会長)に『あなたの作品なので、あなたの好きに書いて良いですよ』と言われたことで、気が楽になりました。漫画なので、作品のテンポは大事にしましたね。また、原作がユーモア小説なので読者の方々に笑ってもらいたいと思いながら描きました」と語りました。

最後に、森村氏は「現在、翻訳中の『ウッドハウスの世界』を沢山の人に読んでもらうことが目標です。今後もウッドハウス小説の翻訳を続けていきたいです」と述べました。勝田氏は「漫画『プリーズ・ジーヴス』は素晴らしい作品なので、ぜひ手に取っていただきたい」と呼びかけました。


第一部のトーク会セッションは、土山希美枝 教授(本学政策学部・犯罪学研究センター「法教育・法情報」ユニット学内協力員)が司会・進行を務めました。

第二部:「法教育・模擬裁判」の実践活動
まず、今井秀智氏(一般社団法人リーガルパーク・弁護士)が新入社員教育や学校教育での模擬裁判について報告しました。今井氏はおもに中学校・高校において、次の2タイプの模擬裁判について体験型授業を実践してきました。
①裁判員体験型:ある事例について、生徒全員が裁判員になり一人一人が判断する。
②当事者役割分担型:検察官チームと弁護人チームを編成するなど、実際の裁判さながらの形式で模擬裁判を実施する。

昨今は小学校や企業(新人研修)においても模擬裁判授業をはじめています。
今井氏の学校向けの法教育における指針は以下の5つです。
①とにかく飽きさせない
②わかりやすい
③全員参加で楽しい
④自分の頭で考える
⑤刑事手続きについて理解する
小学校教員からは「この模擬裁判は大人にも分かりやすく楽しい授業でした。自ら判決を下すことで子ども達に責任感が芽生えました。とても良い経験を共有させていただきました」との感想をいただきました。
今井氏は「特別授業としてではなく、通常授業の中でいかに取り入れるかが課題です。事前準備は大変ですが、これからも法教育としての模擬裁判授業を目指していきたい」と抱負を述べました。


つづいて、札埜和男氏が2018年度「国語的模擬裁判」授業について報告を行いました。札埜氏は犯罪学研究センターの支援を受け、2017年度より全国の高校で古典や落語を題材に模擬裁判授業を実施しており、2018年度は千葉県・岡山県の高校において国語の授業の一環として模擬裁判授業を行いました。またこのプロジェクトによって、岡山県の創志学園高等学校が、岡山県初の日弁連「高校生模擬裁判選手権」への参加につながったことも報告しました。
札埜氏は、これまでの「国語的模擬裁判」授業を踏まえて、「国語の授業は、自由な表現や言葉を使用することに面白さがあると考えています。しかし、模擬裁判を指導する法律家の方々は、生徒に正しい裁判の形式や知識を身に付けさせることを重視しています。二つの学問の兼ね合いが難しいです」と現状を述べました。

この報告を受けて、今井氏は「我々弁護士や法律家は『法律』にこだわりがちですが、法教育では、『法』にこだわることが大切。市民の方々に『法』の面白さを理解していただく取り組みを行うことが重要です」と締めくくり、第二部は終了しました。


今井秀智氏(一般社団法人リーガルパーク・弁護士)

今井秀智氏(一般社団法人リーガルパーク・弁護士)


札埜和男 准教授(岡山理科大学・教育学部教育学科)

札埜和男 准教授(岡山理科大学・教育学部教育学科)

さいごに、石塚伸一教授(本学法学部、犯罪学研究センターセンター長、「法教育・法情報」ユニット長)が本研究会の総括を行い、2019年度以降の「法教育・法情報」ユニットの活動計画を発表し、研究会は終了しました。


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【補足(最新情報)】
「昔話法廷(Fairy Tales in Court )」が国際エミー賞にノミネートされました。
シーズン3の「ヘンゼルとグレーテル」、シーズン4の「ブレーメンの音楽隊」の2作品が国際エミー賞にノミネート。2019/4/9、フランス・カンヌで授賞式が行われました。※写真は授賞会場より
https://www.iemmys.tv/international-emmy-awards/nominees/