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2019.11.19

【犯罪学CaféTalk】加藤 武士氏(木津川ダルク代表/犯罪学研究センター嘱託研究員)

犯罪学研究センター(CrimRC)の研究活動に携わる研究者について、気軽に知っていただくコーナー「犯罪学CaféTalk」。研究の世界に馴染みのない方も、これから研究者を目指す学生の皆さんにも、是非読んでほしい内容です。
今回は、加藤 武士氏(木津川ダルク代表/犯罪学研究センター嘱託研究員)に尋ねました。
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Q1. DARC(Drug Addiction Rehabilitation Center)とは、どういう施設ですか?

「薬物依存症の当事者が、当事者の手助けをする施設です。DARCなどの依存症回復支援施設で実際に回復した人達が、自分の経験や体験を活かして手助けをしています。中身としては、ナルコティクスアノニマス(Narcotics Anonymous: NA)(※1)が行っている12ステッププログラム(※2)を実践しています。それをしっかりと安全に、安心して活動できる場所というのが、DARCのような場所だと僕は思っています。」


※1 ナルコティクスアノニマス:1950年代半ばにアルコホーリクスアノニマス(Alcoholics Anonymous: AA)から派生して生まれた、薬物問題を抱えた仲間同士が、薬物問題を解決したいと願う相互回復支援グループ。 
※2 12ステッププログラム:依存からの回復における取り組むべき指針となる生き方のプログラム。AAメンバーによって明文化され、回復の指標とされている。
12ステップの詳細:https://najapan.org/about-na/what (ナルコティクスアノニマス日本)


Q2. DARCでの1日を教えてください。
「朝早い人は6時頃から起きています。起床時間は特に決まっていません。朝食も8時頃までに作れる人が作って食べています。決まっていることは、9時30分にミーティングが始まるので、それ間に合うように準備をすることです。朝からお風呂に入る人もいますよ。そして朝のミーティングが終わったら、昼食の買い出しや準備ですね。あとは日常の片付けだとか、そんなことをしながら昼食の用意をします。お昼を食べ終わったら、1時30分から2時30分までミーティングをします。その後はまた夕食の準備ですが、木津川ダルクは夕食の時間が早くて、4時30分頃からなんです。なので皆1日4回食べてるみたいです。そして5時頃から各地域で行われるナルコティクスアノニマスのミーティングに参加するために移動します。ミーティング以外に何もすることがなければ、皆で柿の農園をやっているところにおじゃまして柿狩りをしたり、住んでいる建物の周りの清掃、庭の手入れをしたりしますね。あとはイベントがあれば、その準備を手伝ってもらったりもしています。」

Q3. AIDS文化フォーラム(※3)やえんたく会議などの色んなイベント活動をされていますが、これらの活動は、社会にどう役立っていると思いますか?


「どう役に立っているかは分かりませんが、薬物依存症、薬物に限らず依存症という病気があるということを多くの人にきちんと知って欲しいという思いでやっています。また、依存症は回復するものだということも知って欲しいです。一般の人は、ドラマなどの過激表現の影響で、薬物依存者というのは、包丁を持って人を刺すような危険人物だという先入観を持っていて、『回復』するということを知らないんですよね。

私自身、以前会社に勤めている時に、自分が薬物依存者だったことや、DARCに行って『回復』しているということを隠して働いていたんです。でも、隠してしまったら世の中の人は『回復』するということを知らないままになってしまいます。DARCの職員になった理由にも繋がるんですが、自身が回復者で薬物をやめたいと思っている人を支援することをベースに、社会に『依存者は回復する』ということを伝え、支援や場所の理解を広めていくための啓発活動としてイベントを行っています。」
※3 AIDS文化フォーラム イベントページ:http://hiv-kyoto.com/program/

Q4. 『回復』というワードが出ましたが、依存症からの回復とは一言でいうと何ですか?
「リカバリーという言葉があるように、『元の状態に戻る』ということなんですけれども、僕たちは回復だけでなく、成長までが1つのプロセスだと思っています。つまり、薬物を使わない生き方を日々継続しているということが、回復と成長に繋がるのではないかと思います。決してゴールはありません。薬を使わないでね、というのがスタートで、使わずに充実した人生を送るということが、回復と成長というものに当てはまるかなと思います」

Q5. イベントや活動をする際、熱心に勉強や研究をされている姿をよくお見掛けしますが、加藤さんにとって、勉強や研究をされる意味や意義とは何ですか?
「法学の世界に法学の専門用語があり、社会学に社会学の専門用語があるように、依存者の世界にも専門用語があります。回復について、それぞれの領域の人に伝わるような言葉に変換・説明しないといけない時に、その世界の成り立ちや考え方、それぞれの言葉が持つ意味や、イメージというのを踏まえながら、伝えていかなければなりません。『伝える』という意味では、違う領域の人達と仕事をしていて、質問されても何を言っているのかわからないとなったら、答えることもできないし、こちらが伝えたいことの説明もできないので、しっかり勉強したいなと思い、勉強をしています。あとは、自分自身が知りたがりなので…好奇心旺盛なんです(笑)」



加藤 武士(かとう たけし)
犯罪学研究センター 嘱託研究員
<プロフィール>
木津川ダルク代表。2017年より犯罪学研究センター嘱託研究員として、薬物依存と回復についての研究を行っている。2019年、相楽保護区保護司に就任。また2019年10月に本学で行われた「第9回AIDS文化フォーラムin京都」では、運営実行委員幹事として企画・進行を務めた。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-4291.html