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2020.02.07

【犯罪学Café Talk】広川 義哲講師(本学非常勤講師・佛教大学非常勤講師・犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット研究員)

犯罪学研究センター(CrimRC)の研究活動に携わる研究者について、気軽に知っていただくコーナー「犯罪学CaféTalk」。研究の世界に馴染みのない方も、これから研究者を目指す学生の皆さんにも、是非読んでほしい内容です。
今回は、広川 義哲講師(本学非常勤講師・佛教大学非常勤講師・犯罪学研究センター保育と非行予防」ユニット研究員)に尋ねました。
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Q1. 先生が研究されていることは何ですか?
「教育哲学の領域で、カール・ヤスパースという人物の研究をしています。哲学者であるカール・ヤスパースの考えを教育思想として読み解き、同時に、カール・ヤスパースその人の人生の軌跡を成長の道筋として辿っています。その後、中根先生(本学短期大学部・こども教育学科教授/犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長)から「保育と非行予防」ユニット参加のお誘いを受けました。初めて知り合った時から中根先生と通ずるものがあると思っており、途中参加という形でこのユニットに所属しました。中根先生は僕のことをどう思っているのかわかりませんけどね(笑)。ユニットに所属してからは、明治・大正時代に保育というものがどのようにして誕生したのかということを調査しています。保育という営みを制度的に整備していくなかで、何が大切にされて、どのように整えられ、実際にどのように実践されてきたのかということを、色々な資料をもとに解き明かしていくということをしています」
「保育という制度が確立するスタート地点において、監獄での感化実践、つまり感化教育とどうも深い関わりがあったんだろうということが明らかになっています。当時、監獄の劣悪な状況を何とか改善していこうとしていた人たちがいまして、監獄での感化実践の限界を感じたその人たちが、監獄へと収監される前の段階である犯罪の予防へ、さらに、法に違背して罪を犯してしまう前の非行予防へと、「よき社会」を構築するための視線を若年の子どもたちへとずらしてゆき、そうして、保育実践の良い形を求めていったという歴史があったんです。その辺が、歴史的な変遷としてとても面白いなと思います」



Q2. 先生の研究は、社会にどう役立つと思いますか?
「はっきり言って分からないです。たとえば研究だけに限らず、大学生だって教養科目を受講して、色んな教養を学んで知識を身につけたとしても、将来それが自分の人生や社会にとってどんな意味があるのか、どう役に立つのかなんて分からないですよね。何の役にも立たないかもしれないけれども、論理的に考えれば何かの役に立つかもしれない。でもそれが何なのかは分からないので、大学で身につける知識とか、僕たちが研究の中で身につける知識とかは、ひょっとすると、すべてのことに役立つかもしれないという可能性を秘めています。これは知の汎用性だとかという言い方もあると思うのですが、そういう意味では、色んなことに研究というのは役に立つかもしれないし、意味があるのかもしれない。ただ、何の意味もないかもしれない。なので、はっきりとは分からないですね」


Q3. 学生時代について教えてください。
「部活は野球をやっていまして、講義も普通の学生と同じように履修していました。ただ、こんなこと言うと怒られちゃいそうなんですけれども、講義への出席率がほかの学生と比べてあまりよくなく、単位の取得もなかなかにスムーズにいかず、とても不真面目な学生でした。講義に出席しない代わりに図書館へ行って、本を読んでいました。熱中したのはサルトルと、カミュと、カフカ、ニーチェですね。その後卒論を書いていく中で、勉強するのがとても楽しく感じられ始めたんです。その頃は就職超氷河期で、4年で卒業して就職することに、僕はあまり希望が見出せず、意味も見いだせず…となれば、険しいかもしれないけれど、やりたいことをやってみるのもいいのではないかと考え大学院に進学しました」
「『研究者になろう』と思ったのは、毎日研究室で朝から遅くまで色々な物を読んで、自分なりに考えをまとめていく中で、『これは面白いな』とちょっとずつ思いはじめて…まあ何となくです(笑)。決定的な瞬間があったわけではないですね」



Q4. これからの研究の展望を教えてください。
「これまでやってきたことを続けるという感じです。見える形で業績を残すということを目指してやっていきたいなと考えています」

Q5. 先生にとって研究とは何ですか。
『自分なりに世界について説明すること』です。僕にとって研究というのは、まずは読むことなんですよね。カール・ヤスパースや他の哲学者が書いた本を読み、あるいは歴史的に残されている色々な資料を読み、これまでに生きていた人たちは、どんなことを考えて、どのように生きてきたのかということをまずは読み解きます。そして、今の社会に照らし合わせた時、こういう風に現在の状況を説明することができるんじゃないか、間違っているかもしれないし、色々批判はあるかもしれないけれども、『僕はこう思いますがどうでしょうか』ということを発信することが研究だと思います」



広川 義哲(ひろかわ よしてつ)
本学非常勤講師・佛教大学非常勤講師・犯罪学研究センター保育と非行予防」ユニット研究員
<プロフィール>
研究分野は哲学・教育学。今年1月に行われた第15回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」では留岡幸助の教育思想とペスタロッチの教育思想との相関分析についての報告を行った。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-4912.html