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2020.03.13

「新時代の犯罪学――共生の時代における合理的刑事政策を求めて」を発行【犯罪学研究センター】

最先端の犯罪学と新動向

このたび、犯罪学研究センターが参画している、龍谷大学社会科学研究所共同研究「創生・新時代の犯罪学ー共生の時代における合理的刑事政策」の成果物として、「新時代の犯罪学 共生の時代における合理的刑事政策を求めて」(石塚伸一編著, 日本評論社, 2020)が発刊されました。
【>>日本評論社HP】https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8230.html

本書の執筆陣は、編著者の石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)、浜井浩一教授(本学法学部・犯罪学研究センター 国際部門長)、津島昌弘教授(本学社会学部・犯罪学研究センター 研究部門長)をはじめ、当センターの研究員のみならず、犯罪学領域の第一線で活躍する研究者・実務家などバラエティに富むものとなっています。
内容も、学融的・国際的な観点を多く取り入れ、現代社会における犯罪を諸科学によって解明し、対人支援に基づく合理的な犯罪学・刑事政策の構築の方策を、総合的に考察したものとなっています。

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<「新時代の犯罪学――共生の時代における合理的刑事政策を求めて」目次>

【第1編 犯罪学・刑事政策の危機】
現在の犯罪学・刑事政策の置かれている状態を、これからの刑事政策、少年法、刑事学を担う研究者が独自の視点で解説。
- 刑事政策の危機と復権 本庄 武
- 少年司法の危機と復権 武内謙治
- 刑事学の危機と復権 松原英世

【第2編 世界の犯罪学】
- 世界の犯罪学の研究と教育について、アメリカ、イギリス、北欧、東欧、日本の状況を中心に、各研究者が紹介。
- アメリカの犯罪学ーーウエスト・コーストの犯罪学・刑事政策学教育 丸山泰弘
- イギリスの犯罪学ーーカーディフからの報告  ディビッド・ブルースター
- ノルウエーの犯罪学ーーオスロ大学法学部犯罪学・法社会学科 津島昌寛
- バルカン地域の犯罪学ーークロアチアを中心に 上田光明/アンナ−マリア・ゲトッシュ・カラッツ/レアナ・ベジッチ
- 日本の犯罪学ーー1人の若手研究者としての体験と提言 相澤育郎

【第3編 犯罪学の新動向】
- 犯罪認知件数や刑務所人口の減少、薬物依存からの回復支援、犯罪者像の変容など、最新の犯罪学の動向を紹介。
- 犯罪学者のアイロニー ーー犯罪の減少をどう説明するか? 石塚伸一
- 犯罪生物学の再興ーーエイドリアン・レインによる講演「暴力の解剖学」 浜井浩一
- ダルクに関する社会学的研究の意義 相良翔
- 地域社会と犯罪 竹中祐二
- 『語り』と『場』の臨床研究 阿部寛
- 元受刑者の回復の道のりーー対立から対話へ 五十嵐弘志
- 犯罪人像のパラダイム転換ーー先祖返り(遅れているヒト)から過適応者(急ぎすぎる人)へ 石塚伸一
- 刑事政策学の危機と創生・新時代の犯罪学ーー共生の時代の合理的刑事政策を求めて 石塚伸一

【終章】
石塚教授による本共同研究の総括。
- 創生・新時代の犯罪学ーー“つまずき”からの“立ち直り”を支援する新たな犯罪学の創生に向けて 石塚伸一
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石塚教授は、本書のむすびで「新時代の犯罪学」について以下のように述べます。

21世紀に入り犯罪の様相が変わり、先進資本主義国においては、一様に財産犯や粗暴犯のような「街路犯罪(street crime)」の「犯罪者(offender)」が減少している一方で、家庭内暴力、ストーキング、児童虐待、自傷行為、ひきこもり、薬物依存などの「家庭内の逸脱(domestic deliquency)」が増えています。犯罪研究の対象は、伝統的意味における犯罪者・非行少年ではなくなっているのです。

石塚教授は、動向の背景を説明するキーワードとして「孤立」を挙げます。新時代の犯罪学に求められていることは、「多くの人が人生で体験する“つまずき(delinquency)”からの”立ち直り(desistance)”と、主体性の回復を支援するものだ」と提言します。
具体的には、「犯罪学研究の成果を子育てや社会養育、学校教育や“街づくり”に活かしていくこと(「人にやさしい犯罪学」)、社会実装が重要である」と本書を締め括ります。

これまでの犯罪学研究センターの代表的な活動業績であり、中間報告会でも発表された「龍谷犯罪学カリキュラム-もしも、犯罪学学部を創るなら」の概要も本書には掲載されています。
本書を通じて、犯罪学研究の最先端を肌で感じると同時に、近未来の共生社会を展望する機会を得ることができるよう大きな期待が込められています。