Need Help?

News

ニュース

2021.03.29

「京都コングレス・ユースフォーラム」参加学生によるレポート【犯罪学研究センター】

「みんなで話そう京都コングレス2021〜龍谷コングレスに向けて〜」に参加

2021年3月12日、龍谷大学 犯罪学研究センター主催のシンポジウム「みんなで話そう京都コングレス2021〜龍谷コングレスに向けて〜」をオンライン上で開催し、京都コングレス・ユースフォーラムの参加学生が話題提供しました。
【>>イベント概要】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-7969.html
【>>関連NEWS】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-7965.html


1970年8月、京都において国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が開かれてから半世紀。2021年3月7日〜12日に、ふたたび京都において「第14回 国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)」が開催されました。
これまで犯罪学研究センターは、この京都コングレスを意識しながら、「人にやさしい犯罪学」をモットーに、対人支援を基軸した科学的証拠に基づいた犯罪学を構築し、日本国内だけでなく、広く世界に海外にアピールすることを目的に研究活動を展開してきました。
本シンポジウムは、「刑事政策の過去・現在・未来」をテーマに、京都コングレス・サイドイベントに参加した研究者やユースフォーラム参加学生をゲストに迎え、市民の視点で捉える京都コングレスの開催意義をはじめとした、当センターの目指す新時代の刑事政策構想について、参加者の皆さまと一緒に考えるイベントです。

そのプログラムの一環として犯罪防止や刑事司法について世界の若者が議論を交わす京都コングレス・ユースフォーラムが、2月27日・28日に京都国際会館で開催されました。全体のテーマは「安心・安全な社会の実現へ ~SDGsの達成に向けた私たちの取組~」であり、個別テーマとして、「青少年犯罪の予防・罪を犯した青少年の社会復帰における若者の役割」「法遵守の文化を醸成するための若者の責任」「安全なネット社会に向けた若者の責任」の3つの議題に分かれています。本学からは浜井ゼミ生、石塚(伸)ゼミ生の他、法学部から複数の学生が参加し、オンラインで参加した様々な国の学生たちと英語で議論を行い、今回の国連会議のテーマに対して学生としての提言を行いました。

今回は、シンポジウム第1部にて報告された、京都コングレス・ユースフォーラム参加学生によるレポートを紹介します。


京都国際会館で行われた「京都コングレス・ユースフォーラム」

京都国際会館で行われた「京都コングレス・ユースフォーラム」


シンポジウムでの報告のようす1


シンポジウムでの報告のようす2

「青少年犯罪の予防・罪を犯した青少年の社会復帰における若者の役割」に参加して


私は、少年の再犯について周囲の環境の影響を受けやすいという特性を踏まえて、周囲の環境を環境を変える2つの行為が必要だと主張した。1つ目は犯罪を犯した少年に対する人権意識の周知、2つ目はその人権の意識の周知のために、民衆の少年に対する敵対心をなくすことである。敵対心がある限り、人権意識の周知に時間がかかる。少年に対する民衆の敵対心は、民衆に自己承認欲求が満たされないこと、因果応報思想を考えていることが原因だと考察した。頑張っている自分たちが、周囲の人間や政府から同情されないこと対し、頑張っていない犯罪者がなぜ保護されるのかと、民衆の自己承認欲求が満たされていないために苛立ちを覚え、原因や結果が比例していることを望むゆえに、人権思想のように人としての最低ラインの権利、人権を保証するという考え方が相反し、受け入れられないのではないか。この2つが多くの民衆が人権政策に反対している理由であり、その根本的な理由は不確実性を回避して不確実な現実を直視しない人が日本に多いことだと考える。以上が私の発表内容ではあるが、残念なことに自分の意見を主張するというよりかは法務省の人が提供した話題に沿って話す形式だったこと、自分の英語力の不足もありすべてを話すことができなかった。
参加した感想として、国によって刑事政策の発展の仕方は異なるため、国の特色に応じた法学の考えがあったり、思考方法が分かれたりと、全く違うものなのだと考えていた。しかしディスカッションに参加してみると、問題となる事例は国によって違うが、刑事司法の研究が進んでいる国でもそうでない国でも、思考のプロセスや解決方法のアイデアはどこも似ていた印象があった。日本は刑事法の分野で発展途上の国だと感じている。だからといって、海外の学生に比べて日本の学生の法的思考が遅れているわけでもない。私は、刑事司法の後進国と言われている日本を、刑事司法の先進国に変えることが、私たち学生の行動次第では可能になるのではないかということを主張したい。私たちが刑事法の諸問題を解決することも、既存のアイデアに捕らわれない新たな法理論を構築することも、新しい理想的な社会形態を生み出すことも、私たち学生の頑張り次第では不可能ではない。私たちの行動次第で未来は変えられるということ、臆せず勇気を持って挑戦すればそのチャンスはあるということをユースフォーラムを通して学んだ。そしてこの経験から学んだことを後輩たちに伝えていきたい。

森本 夏樹(本学法学部法律学科3回生・石塚ゼミ)


青少年非行の原因についての私の意見は、「環境」「興味」「無知」を挙げた。子どもは外的環境に影響されやすい。加えて、興味本位でルールを破り尚且つ善悪を理解していないケースもある。非行は一種のゲームであると述べ喧嘩や物を壊した経験は誰にでもあるのではないかと問いかけた。社会復帰における要点は教育であると主張し、罰することも責任を認識させる教育の手段であるがスティグマやラベリングによるサイドエフェクトが強いことにも言及した。いかに排除せず社会の中で育む重要性も主張した。しかし、国によっては教育制度だったり経済状況だったりという背景から、なかなか教育に手が回らないということを学び、まだまだ学ぶべきこと、考えるべきことがたくさんあると痛感した。
今回オンラインとのハイブリッド開催であったが、実際に会場に足を運び、緊張感を味わえたことは形容しがたい経験だった。運良く代表者として登壇した際も体が熱く、身が引き締まった。時間的な問題や進行のトラブルはあったが、このような経験ができ、非常に誇らしさとやりがいを感じた。

永井 涼介(本学法学部法律学科3回生・英語コミュニケーションコース)


私は、少年犯罪の原因について「発達障害」「虐待」「有害な環境」の3つが原因ではないかと主張した。そしてこれらは子供たちにとってどうしようもないものであり、この中でも特に虐待は少年犯罪と結びつきやすいと考えている。なぜなら、虐待は有害な環境や、発達障害と結びつくと犯罪を犯す可能性が高くなるからだ。例えば、虐待と発達障害が結びつくと、自閉症スペクトラム障害持つ子供の中で虐待経験を有する者は、非行少年がそれ以外の少年の2倍だったことがわかっている。さらに、子供は虐待を受けると虐待加害者と同じ性格になってしまうことがある。自分が言いたい意見は他にもたくさんあったが、自身の英語力の乏しさに主張できない部分が多かった。これはかなり悔しかったので、自分の意見を後悔なく主張するための英語の勉強の必要さを痛感した。
今回のイベントを通して、自分が興味のある分野でも知らないことが多すぎるということを感じた。フォーラムの中で、青少年犯罪の原因に関しては参加者と意見が概ね一致したものの、犯罪を防止するための対策として行っていることを、他国どころか、日本の対策でも、挙げられた中で知らないものが少なくなかった。とても勉強になったが、同時に自分の努力不足を痛感した。また、同世代の世界のユースと一つのテーマについて意見交換をし、国際会議を肌で感じるといった貴重な経験ができ、参加する前以上に青少年犯罪について、もっと突き詰めたいという感情が強くなった。次は、さらに深い議論が世界の人とできるように知識を増やしていきたい。

三須 愛子(本学法学部法律学科1回生)


ユースフォーラム参加風景(左から三須さん、森本さん、永井さん)

ユースフォーラム参加風景(左から三須さん、森本さん、永井さん)

「法順守の文化を醸成するための若者の教育」に参加して


私が参加した「法順守の文化を醸成するための若者の教育」では、前半は課題の共有、後半は解決策についてディスカッションをした。今回のイベントは、現在の世界の法教育の内容についてを議論し、どのような点に注意して、教育内容を考えていくべきかを目標にしていたため、法教育とは何か、何のためにあるのか、どのような内容にすべきかという基本的なことを自分に問いかけるよい機会になった。コングレスに参加するまでは、法律というものが私の生活の中であまり関わりがないものだと改めて実感した。また、他の国の学生の意見、同世代の参加者の中でも、法教育の充実度に差があると感じた。法教育の大切さには気づいているが、どのようなことを学んだのかを覚えておらず、かつ私たちの生活を支えているものであるのにもかかわらず、自分がトラブルに巻き込まれた、問題を起こしてしまったときの対処法を知らなければ、法が存在する理由はないのではないか。
解決策の一つに、法へのアクセスを簡単にするというものがあった。言語の問題、使用言語が難解であるという問題などが挙げられた。例えば、法についての理解を高めるために、提出する書類や教科書の言葉について工夫するなどである。。SDGsの中に No one will be left behind. (誰ひとり取り残さない)という言葉があるように、すべての人が理解・アクセスできるものが必要だと考える。
今回、ユースコングレスに参加した経験を踏まえて、自分から機会をつかみに行くことの大切さを、これからの後輩たちに伝えたい。私は法について詳しくないが、自分の興味分野に繋がるかもしれない、繋がらなくても将来に繋がるかもしれないという気持ちで参加した。教育全体に繋がることかもしれないが、教育を受けるという受動的な気持ちだけでは学びを深めることは難しい。このような大きなイベントに参加することが素晴らしい機会ではないが、能動的に自分から機会をつかみに行くことが大切であると伝えたい。

宮﨑 美帆(岡山大学 グローバルディスカバリープログラム 1回生)


私が参加したブレイクアウトセッションでは、法教育について話し合った。海外では日本と違い、義務教育が普及していない国がたくさんある。また、法教育の中に、人権教育を組み込むことがSDGsの達成に重要だという意見もあった。私たちのグループセッションでは、法教育と人権教育の2つを足したものを最終目標とした。さらに法教育の方法についても話し合った。世界では、義務教育の普及が遅れている理由として、学校が通える場所にないことが挙げられた。昨今では、オンラインの技術が発達したため、スマホがあれば映像が見られるようになった。そのため、配信サイトや映像アプリを使用した法教育をするという案が出た。
コングレスに参加して、世界中の学生と話した。話すことで、自分の世界の狭さを知ることができたのは、自分の中でとても大きなことである。日本で生まれ育った自分は、どうしても日本の尺度でしか物事を見ることができない。今後はもっとグローバルな視点で物事を見るように努めたい。そして後輩に、本当にやりたいことを見つけたいのなら今の環境から一歩踏み出すべきだということを伝えたい。同じ環境に居続けると、環境の変化は起きない。興味がなくても機会があったらやってみるということが大切であり、繰り返すうちに本当にやりたいことが見つかるのではないか。若者は社会を変える力を持っているので、使わないのは勿体ないことである。後輩の人たちへ、多くのことに挑戦してみてはどうか。
さいごに、SDGsの目標は「質の高い教育をみんなに」となっている。世界レベルでこの目標が達成されることを信じている。

海津 更(本学法学部法律学科3回生・浜井ゼミ)


オンライン・シンポジウムで報告をした宮崎さん

オンライン・シンポジウムで報告をした宮崎さん


ユースフォーラム参加風景(海津さん)

ユースフォーラム参加風景(海津さん)

───────────────────────────

▼犯罪学研究センター(CrimRC)担当スタッフ・コメント

学生たちは本番ギリギリまで、オンラインで英語の勉強として英語討論会を毎週行っていました。どう言えば伝わるのか、より納得してくれるのか…先生方のアドバイスをもとに英語で自分の意見を主張する学生たちの姿は、心打たれるものがありました。
学生の中には、実際に参加して英語力の不足を改めて感じた人もいたようですが、大きな会場で世界中の学生と意見を交換し合う行動・勇気はとても素晴らしいことではないでしょうか。

CrimRCではこの記事を持って「京都コングレス・ユースフォーラムへの道のり」の連載を終了しますが、今回の経験を通して、さらなるステップアップを目指す学生たちをこれからも応援していきます。