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2021.10.19

オール京都で再犯防止に取り組む!支援者が集いえんたく会議を実施【ATA-net研究センター/犯罪学研究センター】

ATA-netが考案した討議スキーム課題共有型“えんたく”を活用

【ポイント】
● 龍谷大学は、2020年3月23日に京都府と「犯罪のない安心・安全なまちづくりに関する協定」を締結し、2020年度より事業を開始。
● 2021年3月には、犯罪学研究センターの学術的知見をもとに、犯罪や非行をした人たちの実情や立ち直り支援の活動を伝えるハンドブックを発行。
● このたび、オール京都で再犯防止を推進するための新たな基盤づくりを目標に、ATA-netが考案した討議スキーム・課題共有型円卓会議“えんたく”を活用した研修を初開催。

2016年の『再犯防止推進法』制定によって、地方自治体においても再犯防止事業に関する法令の整備および事業計画の策定が求められたことから、犯罪学者の協力が求められる機会が増えています。当センターにも複数の自治体から要請があり、研究メンバーが専門家として関与し、研究から得たエビデンス等の社会実装に努めています。
これらの活動を踏まえ、2019年度に京都府と「犯罪のない安心・安全なまちづくりに関する協定」*1を締結し、2020年度には石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長・ATA-net研究センター長)が監修者となり『 “つまずき”からの“立ち直り”を支援するためのハンドブック』を発行しました。
【>>関連News】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8272.html

2021年10月6日、このハンドブックで取り扱った内容をもとに、「令和3年度 京都府再犯防止の推進に関する研修会」が京都テルサ(京都市南区)において初開催されました。同研修は再犯防止の取組の視野を広げるため、府庁内の関係部局担当者をはじめ、市町村再犯防止施策や福祉部局担当者、矯正職員、保護司、更生保護女性連盟会員、防犯推進委員など約20名が参加。また、研修の講師を石塚教授と山口裕貴氏(ATA-net研究センター 嘱託研究員)が担当し、ATA-netの研究活動で培ってきた討議スキーム・課題共有型円卓会議“えんたく”*2を用いて実施しました。


石塚伸一教授(本学法学部)

石塚伸一教授(本学法学部)


山口裕貴氏(ATA-net研究センター 嘱託研究員)

山口裕貴氏(ATA-net研究センター 嘱託研究員)

会の前半では、はじめに薬物使用によって受刑経験のある2名の話題提供者が困りごと(社会復帰にかかる課題)を共有し、次に支援に関わるステークホルダーの代表者4名(矯正職員・保護司・更生保護女性連盟会員・地域非行防止調整官)がそれぞれの経験から得られた知見やエピソードを紹介しました。その際に確認されたキーワードは、「つながり」「自己肯定感」「居場所と出番」「支え(支援者)」というもので、とりわけ「孤独の病」とされる薬物依存症からの回復には、家族や知人など周囲の人々や社会とのコミュニケーションを通した、時間をかけた主体性の回復の必要性が示唆されました。

つづいて設けられたシェアタイムでは、オーディエンスを含めたフロアの参加者全員が3人1組のグループに分かれて課題を共有しました。その際に挙げられたキーワードには、「心に寄り添う」「同じ目線で話をする」「環境の重要性」「行事を通じて心を豊かに、心の拠りどころを作る」などがありました。会の後半では、フロア全体でグループで議論した内容を共有した後、話題提供者2名とステークホルダーの代表者4名が振り返りコメントを行い、約3時間におよぶ“えんたく”が終了しました。

司会進行をつとめた山口研究員は、研修会全体を振り返り「本日の“えんたく”を通じて出会った支援者の皆様がつながりを持ち、それぞれが連携していくことで、施設を出た後の困りごとを感じる方が少なくなったり、再犯防止に寄与したりすることができるのであれば、本日の研修会は大変意義があると思う。また誰もが頑張りすぎず、助けを求めることができるような寄り添いの場所作りを、皆が協力して取り組んでいくことができれば」と期待を込めて述べました。


課題共有型円卓会議“えんたく”のようす

課題共有型円卓会議“えんたく”のようす


シェアタイムで挙がったキーワード

シェアタイムで挙がったキーワード

閉会にあたって、石塚教授は「支援者それぞれに立場や役割があるので、大学のような機関が横繋ぎをしていくことが大切だ。それぞれの職務上の壁を超えて対話をするスキームとして、本日用いた“えんたく”は意味があるものだと考えている。また、3人1組のグループで行ったシェアタイムでは、どこも会話が途切れることがなく、まだまだ話足りないような印象を受けた。まさに小さな奇跡が起きていて、その点で本日の研修会は大成功だと思う」と総括しました。

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補注:
*1 犯罪のない安心・安全なまちづくりに関する協定

2016年12月に成立、施行された「再犯の防止等の推進に関する法律(再犯防止推進法)」においては、再犯の防止等に関する施策を実施等する責務が、国だけでなく地方公共団体にもあること(第4条)が明記されるとともに、都道府県及び市町村に対して、国の再犯防止推進計画を勘案し、地方再犯防止推進計画を策定する努力義務(第8条第1項)が課されました。この法律は、犯罪や非行をした人たちの社会復帰を支援するための初めての法律です。京都府では、2020年3月23日に龍谷大学と協定を締結し、庁内のすべての関連部局が連携して、再犯防止施策を推進していくこととしています。
参照:京都府HP https://www.pref.kyoto.jp/anshin/news/kyotei.html

*2 課題共有型円卓会議“えんたく”
アディクション(嗜癖・嗜虐行動)からの回復には、当事者の主体性を尊重し、その当事者の回復を支えうるさまざまな状況にある人々が集まり、課題を共有し、解決に繋げるための、ゆるやかなネットワークを構築していく話し合いの場が必要です。石塚教授が代表をつとめる研究プロジェクト「ATA-net(Addiction Trans-Advocacy network)」では、この「課題共有型(課題解決指向型)円卓会議」を''えんたく''と名づけ、さまざまなアディクションからの回復支援に役立てることをめざしています。
地域円卓会議と呼ばれる討議スキームは、その目的によって、問題解決型と課題共有型に分かれます。また、参加主体によって、当事者(Addicts)中心のAタイプ、当事者と関係者が参加するBタイプ(Bonds)、そして、協働者も加わったCタイプ(Collaborators)の3つに区分され、今回は矯正職員、行政関係者、地域における支援者を交えて、課題共有型・Cタイプ(Collaborators)の“えんたく”を行いました。