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2021.12.10

「2021年第2回オンライン高校生模擬裁判選手権」事前授業に協力【犯罪学研究センター】

犯罪学の視点から教材を読み解く~人はなぜ人を殺すのか

2021年11月27日(土)、龍谷大学犯罪学研究センターは、「2021年第2回オンライン高校生模擬裁判選手権」の事前授業に協力しました。同授業は、参加校の高校生を対象にした全11回のシリーズ形式のオンライン授業で、一般の方々にも広く開放されています。講師は、弁護士やえん罪被害者、元検察官、大学教員などさまざまで、模擬裁判で扱う教材(題材)について、多様な視点で考えさせられる内容です。
今回の授業は、「犯罪学の視点から教材を読み解く~人はなぜ人を殺すのか」というテーマについて、石塚伸一教授(本学法学部・犯罪学研究センター長)が担当しました。
>>【詳細】第2回オンライン高校生模擬裁判選手権・事前学習配信講義

石塚教授は授業の冒頭、人類の進化(ネアンデルタール人とホモ・サピエンス)を取り上げ、弱いがゆえに戦わなかった人種であるホモ・サピエンスが生き残ったということを紹介しました。その後、法の世界における殺人と殺人未遂について説明し、裁判官の意思で刑の重さを選択できることについて、選択の重要性を説きました。

次に石塚教授は、政治の世界の話に移り、独立、平等、自由な個人から成り立つ市民社会(経済の世界)における、人が飢えず、富の分配ができることの重要性について述べました。その後、政治社会(統治の世界)について、政治国家は、生きる条件を保障することによって人の命を守るものであることを説明しました。さらに、石塚教授は、近代市民法の3原則(法人格平等の原則)(所有権絶対の原則)(契約の自由と過失責任の原則)について解説し、これらを守ることで約束と権利の実現が可能になると述べました。


授業風景・スライド:市民社会(経済の世界)と政治国家(統治の世界)の分離

授業風景・スライド:市民社会(経済の世界)と政治国家(統治の世界)の分離


つづいて石塚教授は、昔の日本では、親子や主君を上の存在として扱っており、人を平等にすると、家が壊れ、社会が壊れると恐れた人たちが存在したため、刑にも差別が存在したことを説明しました。その例として、石塚教授は明治40年刑法における「大逆罪」(天皇や皇族に危害を加えようとする罪は死刑とする。/昭和22年改正において削除)と「尊属殺人罪」(自己または配偶者の直系親族を殺害する罪は死刑または無期懲役とする。/平成7年改正において削除)を取り上げ、さらに、仏教の「五逆・五無間業(ごぎゃく・ごむけんごう)」の中でも、母を殺すこと、父を殺すことが最も重い罪として存在していることを述べました。

「人はなぜ人を殺すのか」というテーマに基づく授業のまとめとして、石塚教授は、「元来、人は人を殺して生き残ろうとする種族である」という考えを述べました。すなわち、「自分たちの弱さを知った人々が、お互いを殺さないでおこうと国をつくり、親殺しを禁じてきた。そして、現代日本において尊属殺人の刑が消えたのは、子どもが親を殺さなくて済むような社会ができてきたということだ」と説明。最後に、石塚教授は、「人は人を殺すものである」と結論付け、今回のテーマに関する解説を終えました。


参加者からは、昨今の事件の例を挙げながら「“人を殺して、死刑になりたいと考えた”と供述した容疑者もいたが、なぜ殺人に至るのか?」といった質問がありました。それらについて石塚教授は、人が人を殺すまでには様々なフックが存在し、それが外れた時に殺人が起きるということ。「死刑になりたかった」「誰でもいいから殺したかった」という人の中には、本当は、「助けてほしい」「誰かに自分を見てほしい」と考えている人と、「死刑になってもいい」と考えている人が存在するということ。また、人を殺したくないという考えが人を殺さないフックになることもあるのではないかということ。さらに、赤の他人を殺してしまうのは、その人を自分と近い関係だと思ったからではないかということなど、石塚教授自身の経験を踏まえた様々な考えを述べ、授業を終えました。
 

文学模擬裁判を通じて、人間や社会を考える眼差しを深めることを目的として、2021年12月19日(日)に「第2回オンライン高校生模擬裁判選手権」がオンライン開催予定です。現在、観戦者を募集中です。下記ページでプログラム等を確認のうえ、ぜひふるってご参加ください。
>>【詳細】第2回オンライン高校生模擬裁判選手権<観戦者を募集!>【犯罪学研究センター後援】