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Ryukoku Extension Center
龍谷エクステンションセンター(REC)

基調講演
持続可能な地域社会の構築に向けて

中井 徳太郎 環境事務次官

今、SDGsの目標達成に向け、世界は大きく変わろうとしています。日本では自治体、企業、大学の多くが脱炭素化をめざす取り組みを始めています。なぜSDGsが必要なのか、国連が理想とする「持続可能な社会」とは何なのか、私たち一人ひとりの取り組みで地球はどう変わっていくのかを、中井徳太郎 環境事務次官にご講演いただきました。

SDGsは私たちすべての人間が取り組むべきミッションです

人類が豊かに生存し続けるための基盤となる地球環境は、もはや限界に達している面もあります。「このままでは世界が立ち行かない」という国際社会の強い危機感も背景に、2015年9月、国連総会において「持続可能な開発目標(SDGs)」を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。同年12月には、すべての国が参加する公平な合意に基づき「パリ協定」が採択されました。「2℃目標(産業革命後の気温上昇を2℃以内に抑える)」「今世紀後半に温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を達成」のために、世界は脱炭素社会に向けて走り出しました。

日本では2020年10月、菅総理(当時)が所信表明演説において、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言し、「地球温暖化対策を日本の成長戦略にする」ことを決めました。これを受け、産業界や各自治体などあらゆる分野で脱炭素への取り組みが始まりました。

なぜ、そんなに環境に配慮しなければならないのでしょうか。それは、今の地球が、人間で言えば病気と言えるからです。人間の生活、経済、社会システムが地球全体の環境に悪影響をおよぼしており、地球は自己回復力を失いつつある状況にあります。地球を健康な状態に戻す、しかも一刻でも早く、というのは私たち人間のミッションなのです。

今こそが、分散型の共生社会へ移行するタイミング

脱炭素というと、生活も経済成長も我慢しなくてはならない、と考えることもあるでしょう。しかし、日本では温室効果ガスが減るほどGDPが増えています。これまで輸入していたエネルギーの代わりに、地域資源を活用した再生可能エネルギーを導入すれば、地域経済が改善されることも予測されています。

2021年9月30日時点で、40都道府県、278市など464自治体が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明しています。国としては、2025年までに政策を総動員し、人材、技術、情報、資金を積極的に支援いたします。

コロナ禍において、個性のある地方の暮らしが見直されています。またデジタル技術により、多様な働き方ができる条件が整いました。「分散型自然共生社会」への移行を進めるときがやってきたといえます。分散型社会には、3つのポイントがあります。

1つ目は、森林や水田の保全、再生により防災・減災対策を行うこと。2つ目は、自立・分散型の再生可能エネルギー導入で、脱炭素に加え、災害時の対応力を高めること。3つ目は、里地里山・国立公園といった自然資源の維持と活用です。

2022年5月、生物多様性条約COP15では、新たな世界目標として「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」が決定される予定です。これは、2030年までに陸域の30%と海域の30%の保全・保護をめざすものです。これにより、脱炭素・循環経済・地元の食べ物の生産などの効果が期待されます。

自立した地域が連携し合う、地域循環共生圏=ローカルSDGsという発想

では、地球を健康な状態に戻すためには何が必要なのでしょうか。私たち一人ひとりができることは何でしょうか。

まず、日本では、森・里・川・海の水、物質の循環バランスを戻す取り組みです。一人ひとりが主体となって今ある技術で取り組むこと、再生可能エネルギーなどの地域資源を最大限に活用することで、生き物をより豊かに育むことに貢献する地域づくりができるでしょう。

そして「地域循環共生圏(ローカルSDGs)」を作ることです。脱炭素社会、循環経済、分散型社会を具現化し、地域がそれぞれの特性を活かした強みを発揮して自立しつつ、足りない部分を農山漁村と都市で補い合うという発想です。

エネルギーと食などの地産地消、SDGsビジネス、コト消費、ボランティアなど様々な事業やアイデアがコラボレーションする動きは、地方のほか、アーティストやデザイナーによるライフスタイルの発信など多く実施されています。また、環境と社会によい暮らしに関わる活動や取り組みを大臣表彰する「グッドライフアワード」は2021年で9回目を迎え、国としても持続可能な暮らしを応援しています。

2021年7月29日には「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」が立ち上がりました。日本の大学が国、自治体、企業、国内外の大学などとの連携強化を通じ、大学の機能や発信力を高める場として結成されたものです。設立時点で180の大学などが参加し、情報の共有、研究成果の社会実装などで、日本と世界のカーボンニュートラルへの貢献が期待されています。すでに地域循環の取り組みをされている龍谷大学RECにも、さらなる連携と強化をお願いしたいと考えています。

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