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2020.08.06

第21回「CrimRC(犯罪学研究センター)公開研究会」開催レポート・後編【犯罪学研究センター】

カーディフ大学(英国)への派遣を通じた学びと今後の展望

2020年7月9日、犯罪学研究センターは第21回「CrimRC(犯罪学研究センター)研究会」をオンライン上で開催し、約25名が参加しました。
【イベント概要>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-5724.html

今回は、前半に本学で研究活動をおこなっている大谷 彬矩氏による研究報告(>>レポート記事Link)、後半にカーディフ大学(英国)への派遣学生*による報告がありました。

この記事では、シュローガル・テオ氏(龍谷大学 国際文化学部研究科)と前廣美保氏(龍谷大学 社会学研究科)による、カーディフ大学への派遣報告についてレポートします。

龍谷大学 犯罪学研究センターは、2019年4月に、カーディフ大学(英国)と協定を結び、犯罪学を中心とした大学院博士後期課程の学生と教員(研究者)の交換派遣を行ってきました。本協定は、カーディフ大学がEUの教育助成プログラム「エラスムス・プラス」の国際単位移動制度の奨学金を取得したことによるものです。
【協定の詳細>>】https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-3426.html

はじめにシュローガル・テオ氏から「東西における大学の国際化:日英両国の主な傾向の調査」をテーマに報告がありました。


シュローガル・テオ氏の報告資料より1


シュローガル・テオ氏の報告資料より2

テオ氏は、今回の派遣で、ウェールズの大学における高等教育の国際化についての調査を行いました。
この調査の目的は2つあります。1つはウェールズの大学が国際化の意味と目的をどのように概念化しているのか(高等教育の国際化が直面する問題と課題)を調査すること。もう1つは、外国人留学生がウェールズの大学で学ぶ経験をどのように理解し、何が国際化の主な課題であると考えているのか(グローバル教育を利用した学生たちの可能性)を調査することです。調査では、複数の事例研究と対象者への面接を行いました。

テオ氏は、今回の調査について「カーディフ大学と他のウェールズの機関からの調査結果を日本のデータと比較することで、高等教育の国際化に関する新たな知見が得られると考えている」と述べ、「日本の高等教育における社会学と日本の人類学に焦点を当てた研究を行うことで、日本特有の高等教育の国際化や、日本社会全般のグローバリゼーションについて学ぶ機会となるのではないか」と主張し、報告を終えました。


つぎに、前廣美保氏から報告がありました。前廣氏は、「そだてるしあわせ:障害児を育てる親の言葉から」をテーマとし、障害児を育てる母親の人生の語りから、幸せを感じる力が得られる要因は何かを調査しました。


前廣美保氏の報告資料より1

前廣美保氏の報告資料より1


前廣美保氏の報告資料より2

前廣美保氏の報告資料より2

前廣氏は、障害者施設への訪問と母親への聞き取り調査を予定していましたが、コロナウイルス・パンデミックのために、ほとんどかなわず、ソーシャルワーカーへのインタビュー2件と1人の母親からの聞き取りのみとなりました。実際参加したのは、「UCAN Production」(視力と発達に障害を持つ子どものための活動)のイベントでした。「The National Deaf Children’s Society」(聴覚障害をもつ子どものため慈善活動)で支援活動をするソーシャルワーカーへインタビューを行い、障害を持つ子ども達へ必要な支援や機器について学びました。「Ty Hafan」と呼ばれる、生命に制限のある子どもや若者、その家族のケアとサポートを目的とした団体のソーシャルワーカーにもインタビューを行いました。また、前廣氏はマンカップウェールズ(学習障害者の代弁を行う団体)が主催するセミナーに参加。セーフガード(健康や福祉、人権を守ること)に焦点を当てた勉強会であり、学習障害を持つ人々が日常生活における当たり前の権利を守るための政策提言についての研究報告がされました。セーフガードプロジェクトは、ピアリサーチャーとして学習障害を持つ人たち自身が参加していることが特徴的で、英国の政策立案者が、学習障害者の生の声をどうすれば効果的に取り入れることができるかを見つけることを目的としています。前廣氏は「政策は基本的に一部の人たちだけが作成に関わっているので、学習障害者の声がなかなか届かない。学習障害者が個人的にどんな体験をしているのか、日常生活において何が起こりうるのかということを、政策を作る側は知っておく必要がある。そのためにはネットワーキングとトレーニングをすることが大事。組織がより強く声を上げていくことが必要だということがわかった」と述べ、「学習障害者とその家族や支援団体は変化を起こす力を持っている」と主張し、報告を終えました。