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農学部

淡路和則ゼミ
持続可能な社会における食と農を探る。
塩づくりで締めた水俣研修

2020.03.31塩づくりで締めた水俣研修

農学部 淡路和則ゼミ

2日間の農業体験を終えて、最終日は芦北町の御立岬公園にある「塩むすび館」に行きました。

この施設は美しい海岸線が続く自然公園のなかにあり、地下1000メートルの源泉からくみ上げられた温泉水で塩をつくり、販売しています。海水がきれいだからこそ、こうした製塩事業ができるといえます。

わたしたちは、ここで塩づくり体験をさせてもらいました。体験で使うのは、温泉水でなく海水です。行く前は、「海水を蒸発させるだけじゃないか」と面白みに欠けると思っていました。しかし、やってみるとワイワイ盛り上がって楽しめました。海水を鍋に入れてかき混ぜながら熱するだけなのですが、海水の変化をみるのも面白かったですし、水分が蒸発すると熱せられた塩が爆ぜて飛び散ったりするのでスリルがありました。

できた塩の重さを計って競い合っていましたが、塩分濃度が同じで海水の量が同じなら、できる塩の量も同じはずです。結局、塩が含む水分量の違いであることに気づき、最も重量が多かった人の塩は「水増し」ということで笑いを誘っていました。

かつて水銀で汚染され公害病を引き起こした海は今ではすっかりきれいになっており、タツノオトシゴが産卵に来るようになっています。タツノオトシゴは、汚れた海では生息できない生き物なので、発見されたときには地元の方々は大変喜んだそうです。海のレジャーが盛んになった現代の姿は、誰も想像していなかったのではないかと思います。それだけに自然の再生に注いだ努力は貴重だといえます。

しかし、残念なことに日本人の多くは、きれいになった水俣、環境都市の水俣を知りません。公害病の地としてのイメージをもったままです。そのため、産地が水俣というだけで農産物や海産物が売れないという問題を抱えています。こうした問題状況を打破するためには、水俣の現在の姿を知ってもらうことが必要になります。

最後に、水俣病資料館へ行きました。かつての状況が生々しく伝わってきました。この地に来て、何度海がきれいだと思ったかわかりません。その瞬間は、公害病の歴史は頭の中になく、ただただ美しい海をみて感動していました。忘れてはいけない過去と伝えなければならない今を学んだ研修となりました。

貴重な体験をさせていただいた水俣・芦北の方々に感謝いたします。

告野 拓郎(滋賀県立東大津高校卒業)
嶋田 亜久里(兵庫県立鳴尾高校卒業)
山下 隼弥(京都府立桂高校卒業)