
2023年12月15日、龍谷大学は本学のDXの連携・共創を目的にソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)と包括連携協定を締結。第1弾の連携事業として瀬田キャンパス3学部による「ハッカソン」を2カ月にわたって開催した。企画・主催にあたったソフトバンクの村田氏と松木平副学長がハッカソンでの学生の様子や連携・共創の展望を語り合った。
松木平:私は瀬田キャンパスが本学のDXを主導していきたい思いがあり、村田さんに相談したところ、本学初の開催となるハッカソンを提案いただきました。
村田:瀬田キャンパスには3Dプリンタなどが揃う施設・STEAMコモンズがあり、アイデアを実際のカタチにできます。プレゼンテーションで終わりではなく、面白くて達成感のある「モノづくりのハッカソン」になると思ったのです。
松木平:テーマは「学生が考えるスマートキャンパス」。学生生活の課題を解決する、瀬田キャンパスを活性化するためのアイデアを創出し、プロダクトやサービスを完成させることがゴールです。先端理工学部の学生が応募の中心になると思いきや、農学部、社会学部の学生も多数立候補してくれたので、アットランダムに32人を選び、8チームに編成しました。
村田:そこに弊社のエンジニアがアドバイザーとして1人ずつ加わりましたが、若手だけでなく、マネージャークラスも人選しました。社会では多様な人との協働が必須で、それを体感できる機会にもなると考えたからです。
松木平:ハッカソンは、何を完成させるか各チームがアイデアを出し合う「STEP1:アイデアソン」からスタートしましたが、その時がほぼ初対面だったにも関わらず、瞬く間に一丸となって熱い議論を繰り広げていましたね。
村田:私は学生たちが主体的かつ積極的に発言していることにびっくりし、アイデアの発表会では「すごいモノができそうだ」とワクワクしました。弊社8人のメンバーも「気持ちも思考も若返った」「これからが楽しみ」と、学生たちから大いに刺激を受けたようです。
松木平:モノづくりに取り掛かる「STEP2:ハッカソンday」「STEP3:ハッカソンday2」は2週間タームで実施しましたが、学生たちは開催当日までアイデアを突き詰め、STEAMコモンズにこもりっきりでしたね。
村田:各チームの弊社メンバーにも質問や確認のメールが頻繁にあったようです。
松木平:多数の専門書や資料を抱えて挑む学生からは情熱が伝わり、感銘を受けました。
ハッカソンSTEP4最終プレゼン大会で発表する学生たち
松木平:初開催ながら、「そうきたか」と膝を打つアイデアが続出し、手応えを感じました。
村田:私も同じです。大学帰りの暗い夜道を解消するプロダクトや、学生食堂の混雑状況や空席をチェックするアプリ、講義の空き時間に待機する場所や一緒に過ごす仲間を探すアプリは学生ならではの発想です。ロボット開発や瀬田キャンパスの噴水でのプロジェクションマッピングの企画は、短期間での完成が厳しいにも関わらず、何とか実現しようと、試行錯誤している姿が印象的でした。
松木平:共通の興味や趣味を持つ学生が集い、サークル設立などに活かすプラットフォームの形成もありそうでなかったですね。
村田:LINEの友だちなどは既知の繋がりから関係性を構築していきますが、このプラットフォームや空き講義のアプリは学内での未知の出会いにフォーカスしています。学生は新たな繋がりを求めているのかもしれませんね。
松木平:瀬田キャンパスだけでなく、本学は横断的かつ多様性に富んだ総合大学をめざしています。ハッカソンでも多様性を重視しました。こういったアイデアやプロダクトもめざす方向に活かされていくと思います。
村田:「スマートキャンパス」という、やや抽象的なテーマでしたが、学生自身の悩みや困りごとから着想し、カタチにしましたね。弊社は社会課題の解決に日々取り組んでいますが、学生たちのように身近な課題に目を向け、気づくことの大切さを再認識しました。
松木平:社会課題解決は、全学的な目標です。学生たちも本学のマインドを理解し、実現に向けて、日々の学修や研究に取り組んでいることがハッカソンでも現れたと思います。
村田:ゼロからのモノづくりでは失敗があったはずです。しかし、失敗してこそ、成功を得られます。なので、企画から設計・開発、実装に至る失敗・成功のプロセス、期限までに成果を出す時間軸を今、体験・実践できたことは貴重です。思考力や問題解決力も鍛えられたでしょう。これらすべてが社会での活躍のスピードを速めるのではないでしょうか。
松木平:学生の知識、技術、そして経験値が上がったことは間違いありません。これを今後の学びや研究、将来に活かしてほしいです。
村田:弊社としても学生のリアルな姿や能力を間近にできることは優秀な人材の発掘・採用に繋がると思います。
松木平:私たち大学側は、面接ではアピールしきれない学生一人ひとりの真の能力を判断いただけると、大変ありがたいです。
村田:今後も「龍谷大学×ソフトバンクハッカソン」を続けていきたいです。弊社だけでなく、他の企業や大学ともジョインしていければ、より有意義なハッカソンとなり、さまざまな社会課題解決にも結びつくと考えます。
松木平:もちろん、継続していきましょう。ソフトバンクとの連携・共創によって、さらに魅力的な龍谷大学を築き上げていきます。
2003年日本テレコム株式会社(現ソフトバンク株式会社)入社、ソリューションエンジニアとして、法人向けインフラ基盤に対して、企画段階のコンサルティング、導入フェーズのプロジェクトマネジメントを担当し、SE部長、SE統括部長を歴任。2023年度より、デジタルエンジニアリング第3統括部長として、顧客DX推進を担当。
東京大学教養学部、工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程物理工学専攻修了。1992年より龍谷大学理工学部数理情報学科に着任、2004年より同学部教授。先端理工学部開設にあたって尽力し、2020年4月同学部開設に際し、先端理工学部長を務める。2021年より龍谷大学副学長に就任。