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2022.03.24

犯罪学研究センターシンポジウム(私立大学研究ブランディング事業 最終報告会)開催レポート後篇【犯罪学研究センター】

【テーマセッション編】犯罪学は地域に何をもたらすのか

2022年3月5日13:00より龍谷大学犯罪学研究センターは、「犯罪学研究センターシンポジウム(私立大学研究ブランディング事業 最終報告会)」を龍谷大学深草キャンパスとYouTube配信にて開催しました。6年間の研究活動の成果と展望を発表する今回のシンポジウムには、会場の参加者が約40名、配信の視聴者が約70名、計110名が参加しました。
【イベント情報:https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-9976.html

私立大学研究ブランディング事業の成果*1を発信するシンポジウムの後半であるセッション2では、「グローカル展開 〜犯罪学は地域に何をもたらすのか〜」と題し、3つのテーマをとりあげたトークセッションをおこないました。


CrimRCは、龍谷犯罪学ブランドとして「人に優しい犯罪学」を掲げ、犯罪予防と対人支援を基軸とした研究活動を展開してきました。「人に優しい犯罪学」が目指すところは、犯罪の原因を社会的な孤立ととらえ、人を孤立させる社会構造のメカニズムを究明するとともに、孤立している人に対して効果的な支援が行われる体制を構築することです。CrimRC は、研究者のみならず、さまざまなステークホルダー(実務家・ジャーナリスト、NPO 等団体職員など)を招聘し、ともに研究に取り組んできました*2
トークセッションでは、「差別と孤立」「再犯防止」「コロナ下における大学教育」をテーマにとりあげ、それぞれにモデレーター、話題提供者、そしてスピーカーを配置。これらの登壇者は、広域・重層的なネットワークを構築してきたCrimRCの成果の一端を示すものです。

1.「犯罪学をめぐる差別と孤立」
なぜ、CrimRCは差別と孤立の問題を重要視するのか、これまでの犯罪学や日本社会はどのようにこの問題と対峙してきたのかについて、はじめに、赤池一将教授(法学部/CrimRC「司法福祉」ユニット長)が話題提供を行い、それを受けて、金尚均教授(法学部/CrimRC「ヘイトクライム」ユニット長)、牧野雅子氏(CrimRC博士研究員)、加藤武士氏(木津川ダルク代表/CrimRC「治療法学」ユニットメンバー)の3名が意見を述べました。モデレーターは石塚伸一教授(法学部/CrimRCセンター長)が務めました。


赤池一将教授(法学部/CrimRC「司法福祉」ユニット長)

赤池一将教授(法学部/CrimRC「司法福祉」ユニット長)

赤池教授は、まず「なぜ人は犯罪をおかす(逸脱する)のか」を考察する犯罪原因論のこれまでの理論状況を整理します。「逸脱というのは社会秩序(一定の人々の合意)に反する行為である。社会化の推進(家庭・学校・地域社会)、社会統制の整備(警察・司法・矯正)がうまく作用する(制度的手段)ことで犯罪を減らすことができ、必ずや犯罪を消滅させることができるという仮説がたてられた。社会秩序は、逸脱者の問題(行為者の内的属性や動機)とは全く関係していないと考えられていた」とし、つづけて1960年代のアメリカの政策を紹介します。アメリカ政府は、犯罪の原因を取り除くために、教育制度に莫大な予算を投入し、社会政策(人種・宗教・階級・性差に関わる差別の撤廃のための改革、社会保障など)を多様に企画し、実践してきました。ところが、残念なことに犯罪はかつてない増加を遂げることになります。赤池教授は「社会秩序が完璧に機能すれば、逸脱はなくなるという仮説は本当なのか(「原因論の危機」)という疑問から、ラベリングアプローチ(社会的慣習がラベルを貼ったものが犯罪になるのだという考え方)が生じた。逸脱者と社会との関係の中で両者の境界維持のメカニズム、すなわち、どのような相互作用があるのかということが関心事になった。今日ここで取り上げるヘイトクライム、ジェンダー、アディクションそして自殺も含めた問題は、いわば今まで地下に沈められていたものが浮かび上がってきたものだ。犯罪化・非犯罪化という観点からも、犯罪学では大変重要な研究・検討対象になる」と述べました。

赤池教授の報告を受けて、石塚教授は「日本の犯罪学は差別と偏見の問題から目を背けてきた。これはいわゆる被差別部落の問題を筆頭にタブー視されてきた傾向がある。CrimRCはそういうタブーを廃しようと、いろいろなユニットがこの問題に取り組んできた」と補足しました。

これを受けて、金教授は、社会におけるマジョリティや力のあるものが偏見や憎悪に基づいてマイノリティに対して攻撃を仕掛ける「ヘイトクライム」をとりあげ、「誰も『私は差別をする』という意識を持って差別をするわけではない。むしろ、被害感情と防衛意識のもとに差別が行われる」と指摘。その背景には、ファクトやエビデンスではなく、感情によって世論を形成していく「ポストファクト時代」や、「差別、差別というけれども、差別される側にも理由がある」として「フェイクニュース」が量産される状況があります。


金尚均教授(法学部/CrimRC「ヘイトクライム」ユニット長)

金尚均教授(法学部/CrimRC「ヘイトクライム」ユニット長)

金教授は「龍谷大学は『仏教的SDGs』を唱えている。その中に『2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教あるいは経済的地位その他の状況に関わりなくすべての人々の能力強化および社会的、経済的、政治的な包含を促進する』とある。ヘイトクライムの問題を解決するためには、まさに今、私たちの社会とこの龍谷大学が、どれだけ一人の人間を単に属性や集団として見ずに個人として尊重し、その尊厳を互いに認め合うことができるか。私たちの人権感覚と相互の承認感覚が試されている時だと思う」とコメントを寄せました。

これを受けて、石塚教授は「目の前で偏見や差別が暴走しているときに、”やめろ”というには勇気がいる。そのな状況の下で一人ひとりが”やめろ”と言えるかどうが試されているのだと思う」と述べました。

つづいて、性暴力について研究を行っている牧野氏は、性暴力問題から見えてくる社会や犯罪学の課題を共有しました。牧野氏は、性被害・加害が、日本で長い間軽視されてきた状況を説明しながら「性暴力という言葉は、これは性行為ではなく暴力なのだ、という被害者の実感を伝える言葉でもある。このような当事者の思いや現実を背負った概念、あるいは用語によって学術研究を行っていくことは、当事者の問題を学術研究によって解決する方法を模索するということであるとともに、これまでのアカデミックな議論に対する挑戦でもある」と述べます。また、ジェンダーについて、女性が差別的な状況に置かれていることを問題にする場面で使われていることが多いため、ジェンダーとは女性にまつわる問題を扱うものだと思われている風潮があることを指摘し、「男性/女性」の権力配分の不均衡の問題だけではなく、性差にまつわる認識に着目することの重要性を強調します。


牧野雅子氏(CrimRC博士研究員)

牧野雅子氏(CrimRC博士研究員)

そして、「学術研究におけるジェンダーの視点の導入の必要性が叫ばれて久しいが、それは、これまでの犯罪学が差別に無自覚ではなかったかが問われているとともに、私自身も含めて、犯罪学やそれに関わる研究者が、自らの差別性に向き合うことが求められているということでもある。こうしたジェンダーの視点による犯罪学研究が、学術研究で新たな知見を提供するだけではなく、差別そのものの解消に貢献するのではないか。今後の犯罪学の研究、あるいは教育に、引き継がれる課題として期待したい」とコメントを寄せました。

牧野氏の提言を受けて、石塚教授は「権力配分の問題として、黒人の若い少年の非行を対象に、白人のステータスの高い人が『彼らもかわいそうだね』という視点からラベリング理論は出発している。そうではなくて、犯罪学者の中にある、物事をパワーで捉えようとする思考の男性性ないし権威性に対して、80年代くらいから非常に強い批判がされるようになったきっかけが、犯罪学での被害者の問題やジェンダーの問題であった。今の牧野さんの提起を、どう受け止められるか、犯罪学の大きな課題だ」と述べました。

加藤氏は、差別と孤立というテーマに関して、薬物問題を抱えている者、薬物を使用した者がどのように社会から扱われてきたかについて共有しました。加藤氏は、京都ダルク反対運動の際に、地域住民から「薬物依存者なんてどこか離れ小島で生活しろ」「山の中に作れ」「遠い田舎に行け」などの言葉を浴びせられたことに衝撃を受けました。加藤氏は「実際に薬物を使うこと、それ自体が本当に罪なのか」という大麻使用罪創設の議論や、コロナワクチン接種の有無で発生している差別や偏見を例示しながら、ラベルを付与することで特定の属性の人たちを排除する社会に疑問を呈します。「薬物を使用した人たちの背景には様々な要因、貧困や虐待や家庭の事情、社会構造の中での居場所のなさがある。その人自身だけの問題ではなく、社会の構造がそのようにさせているのだと、視点を少し変えて一度考えれば、「薬物を使った人=罪な人たち」であるとは言えないはずだ。例えば、お酒を飲むこと自体は違法ではないが、お酒を飲んで車を運転すれば、人に危害を加えるリスクが高くなるので罰せられる、それと同じように捉えることはできないのか。


加藤武士氏(木津川ダルク代表/CrimRC「治療法学」ユニットメンバー)

加藤武士氏(木津川ダルク代表/CrimRC「治療法学」ユニットメンバー)

薬物乱用防止教育の影響もあり、薬物を使っている人に対するイメージは最悪であるが、実際に薬物を使っている人の8割以上は当たり前の生活を送っている」と指摘します。そして、犯罪学に期待することとして「薬物や依存の問題についての犯罪学の研究成果が社会にもっと共有されることで、各人が教育の中で持ってしまった固定観念が解消され、薬物を使った人たちの居場所を作って、依存症と向き合って生きることを支えてくれる、思いやりのある地域が増えることを望む」とコメントを寄せました。

これらのコメントを受けて赤池教授は、戦前の国家主義や現在につづく家制度、日本の雇用体制に触れながら「社会秩序というものは無味乾燥にあるわけではなく、歴史の上に成立しているということを改めて痛感した。社会秩序は静的なものではなく、現実にある相互作用によって構築されていくので、不安を感じながら孤立していく人たちがいる。これからも、それぞれの研究の中の課題としてやっていかなければならないことだろう」と述べました。
さいごに石塚教授が、「ここで取り上げたテーマが出発点だ。私たちの問題が、まだ全然解決していないということが明らかにされた。犯罪学でとりあげるべき研究、これからやっていかなければならない領域が多種多様であることを提示できた。差別や偏見は歴史的なものであるからこそ、現在の中で語るということをしないと、次の行動に結びつかない。これは、マーカス=フェルソンの「日常活動理論(Routine Activity Theory)」における最大の発見、「人間は日常生活にあるちょっとした機会によって犯罪をおこなう」という犯罪学的な相互作用論の帰結からも言える。それまで犯罪学者は、お金持ちになると、そして、社会が豊かになれば犯罪や差別は減ると考えていたが、統計を見る限り豊かになればなるほど犯罪も差別現象も増える。豊かになっているはずなのに。なぜそうなるのかを考えるのが犯罪学の魅力である」と述べ、テーマセッション1を終えました。


2.「再犯防止と地域社会、そして地域の保水力へ」
セッション2については、下記概要編レポートで紹介しました。ぜひ参照ください。
>>開催レポート概要編:【新時代の犯罪学構想のグローカルな展開〜人に優しい犯罪学は地域社会に何をもたらすのか?〜】


3.「コロナ下における大学の内と外、いま教育に何が求められるか」

新型コロナウィルス感染症の世界的な流行は、大学教育に大きな影響を及ぼしました。この新たな状況においてどのようなことが求められ、どのように対応してきたのか。はじめに、札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部/CrimRC「法教育・法情報」ユニットメンバー)が話題提供を行い、それを受けて、斎藤 司教授(法学部/CrimRC「性犯罪」ユニット長)、入澤 崇学長(文学部教授)、丸山 泰弘教授(立正大学法学部/CrimRC「治療法学」「犯罪社会学」「意識調査」ユニットメンバー)が、それぞれの見地からトークセッションを展開しました。モデレーターは、津島 昌弘教授(社会学部/CrimRC研究部門長)が担当しました。


トークセッション3のようす

トークセッション3のようす

模擬裁判を通じた法教育の研究・実践をしている札埜准教授は、コロナ下における高校生を対象としたオンラインの「模擬裁判選手権」を運営して得た気づきについて報告しました。芥川龍之介『藪の中』を題材とした模擬裁判を実施したところ、オンラインであっても高校生らが教材の内容を深く理解するために国語だけでなく、歴史、数学、生物、保険体育など他教科の教員に話を聞くなど探究的な学びを行っており、熱を感じる瞬間があったというプラス面を指摘しました。一方、事前学習のための動画をYouTubeでアーカイブ配信したところ、平均視聴時間が10分という結果となり、高校生たちの学びをめぐる耐性が低くなっていること、「実際の裁判ではどうなのか」といった正解を求める質問が出るなど年々、正解主義の傾向が強くなっているというマイナス面もあったことが報告されました。


札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部/CrimRC「法教育・法情報」ユニットメンバー)

札埜 和男准教授(岡山理科大学教育学部/CrimRC「法教育・法情報」ユニットメンバー)

また、ある高校へ模擬裁判の現地指導に行った際のエピソードとして、SDGsに関する学びに取り組んでいる生徒らに対して、札埜准教授がSDGsはかえって環境を悪化させるという見方もあることを伝えたところ、そのようなことは聞いたことはなかったと生徒がパニックに陥った例を紹介しました。選手権終了後には生徒が「(今回の訪問指導は多様な視点で考える契機となって)よかった」と述べていたことを紹介しつつ、札埜准教授は「高校でも大学でも、教員が生徒や学生をどれだけ“葛藤”させられるかがポイントだと思います」とむすびました。

札埜准教授の報告を受けて、教務主任をつとめている斎藤教授は、オンライン授業への移行によって、大学の授業が時間・場所・一緒に受ける学生から全く切り離され、いつでも、どこでも、誰とでも授業を受けられるようになったことを指摘しました。これは学生から好意的に支持されていたとのことでした。また、授業が動画として記録されることで、何度も視聴することができるようになり、試験も1回だけの実施ではなくなった点も指摘しました。これは意欲のある学生にとっては良い影響があったとのことでした。他方で、斎藤教授は、授業が様々なものから「切り離された」結果、授業が「情報コンテンツ」となったことで、良くも悪くも“軽い”ものになったと指摘しました。

さらに正解主義の根底には学生の消費者意識があり、消費者だから教員に正解を提供してもらいたいと考えるのだと思う、と説明。また学生の正解主義傾向と消費者化はむすびつきやすい、そしてこの傾向と「情報コンテンツ」としての授業がむすびつきやすいと思うが、私たちはそれがむすびつかないように、コンテンツとしてパーツになった授業をしっかりと組み合わせて伝えていくことを考える時代に来ていると思うと述べました。


斎藤 司教授(法学部/CrimRC「性犯罪」ユニット長)

斎藤 司教授(法学部/CrimRC「性犯罪」ユニット長)


入澤 崇学長(文学部教授)

入澤 崇学長(文学部教授)

対面授業からオンライン授業への切り替えなどコロナ下での変化への対応について分かったこととして入澤学長は、「我々には正解が分かっていない」という点を指摘しました。これまでの教育は問いがあって答えを出すということに焦点を当ててきたが、コロナのような未知なる現象には正解がなく、未知なるものにどう対処するかということを、コロナが教えてくれたように思うと述べました。そしてコロナだけではなく、これから、我々が経験していないことが増えてきたときに、どう行動してどう考えるかが重要になると指摘しました。一方で、コロナ下で不安を感じつつも、この状況をいかに乗り越えるかということを真剣に考えている学生もいて、これからの未来社会において非常に大きな財産になるだろうと述べました。さらに、コロナの影響を受けている学生を支援したいという卒業生や活動したいという学生もいて、期待が持てる部分もあると述べました。

丸山教授は、オンライン授業はマイナス面が目立つが、オンライン上にあればすぐにアクセスできるという利点があると指摘しました。一方で、図書館で目当ての本以外にも出会えるように、対面だからこそ気づき出会えるものがあると述べました。正解主義傾向が強まっていることについては、早く答えを出すための知識をつけることが主眼になっている受験勉強の影響もあると指摘しました。そういった影響で「勉強とはそういうものだ」と思ってしまっている子どもたちには、そもそも唯一の答えがなかったり、それぞれの視点からみると違う答えになったりすることもあるということを教えていく必要があると述べました。また、札埜准教授の報告にあったSDGsのエピソードに触れ、SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という対象には罪を犯した人など入っていない人がいることを指摘し、SDGsの内容を含めて是非を見直し、考えていけるような取組みができればSDGsについて学ぶ意味もあると思うと述べました。


丸山 泰弘教授(立正大学法学部/CrimRC「治療法学」「犯罪社会学」「意識調査」ユニットメンバー)

丸山 泰弘教授(立正大学法学部/CrimRC「治療法学」「犯罪社会学」「意識調査」ユニットメンバー)

津島 昌弘教授(社会学部/CrimRC研究部門長、 「犯罪社会学」「意識調査」ユニット長)

津島 昌弘教授(社会学部/CrimRC研究部門長、 「犯罪社会学」「意識調査」ユニット長)

津島教授は3名のスピーカーの意見を受けて、オンライン授業と対面授業を経験し、人それぞれが問題を抱えているという気づきを得たこと、授業科目によってはオンライン授業が効果的だったことを紹介しました。そして立場の違いによって見え方が違う、ということは社会学にも通じるものだと指摘しました。それぞれ視点が違っていて、ほかの視点からは違う景色がみえるかもしれないという想像力(社会学では「社会学的想像力」)が大切だと思うと述べました。
さいごに、札埜准教授は、教員も学生も「分からない」ということでは地続きだと述べ、トークセッション3は終了しました。

総括・コメント
3つのトーク・セッションを終えて、最後に、石塚伸一教授および黒川雅代子教授(本学・短期大学部、CrimRC副センター長)より総括および閉会の挨拶が行われました。

黒川教授は「犯罪学という切り口で他分野の研究者が協働で研究を進めていったこの6年間は、お互いを研鑽する場であり、龍谷大学ならではの試みであった。海外との交流、若手育成、外部資金の獲得は当センターの強みであった。昨今の無差別殺傷事件の背景には社会的孤立が挙げられている。2022年4月より社会的孤立回復支援研究センター(SIRC)が本学に設立される。CrimRCで蓄積された成果を、今度は社会的孤立という切り口で龍谷大学らしい研究成果が報告できればと考えている」と述べました。


黒川雅代子教授(短期大学部/CrimRC副センター長)

黒川雅代子教授(短期大学部/CrimRC副センター長)

石塚教授は、まず本シンポジウムと私立大学研究ブランディング事業の6年間について謝辞を述べたあと、「正解主義の弊害が話題にのぼったが、刑事政策において、焦って答えを出して良かったことが、あった試しがない。大きな事件が起きると世間は震撼し、政治家は稚拙な規制を作りたがる。正しい知見を世に提供することは難しいが、やればできると思っている。ただし、工夫は必要だ。コロナ下でICT化が進んだことは、プラスの側面もある。今日のシンポジウムは、科学の目をもって研究をする犯罪学の強みを示すことができたと思う。嬉しいことに今年のゼミ生の卒業論文に、データに基づいて、常識に疑問を呈する犯罪学らしい論文が複数あった。観察を通して仮説を立て、仲間と議論して、仮説の正しさを検証する。常識を疑い、科学に徹し、ついには常識を覆すことが犯罪学の醍醐味です。」と当シンポジウムを締めくくりました。


石塚伸一教授(法学部/CrimRCセンター長)

石塚伸一教授(法学部/CrimRCセンター長)

CrimRCは、犯罪をめぐる多様な「知」を融合する新たな犯罪学を体系化し、その知見をベースに多様な政策群を科学的に再編し、時代の要請に応える刑事政策の担い手を育成することを目的としてきました。2022年3月にCrimRCの私立大学研究ブランディング事業が終了しますが、4月からは新たな体制で、新時代の犯罪学創生プロジェクトへの挑戦がつづきます。

【補注】:
*1 犯罪学研究センター「私立大学研究ブランディング事業 最終報告書」(2022年3月発行)は以下ページにて公開している。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-10084.html

*2 CrimRCは、総勢 114名(本学専任教員22名、PD1名、RA2 名、学内協力員8名、学外協力員5名、客員研究員2名、嘱託研究員74名)の研究スタッフを中心とし、これに加えて、事務職員、広報担当スタッフ、学生等アルバイトスタッフの協力を得て、私立大学研究ブランディング事業を遂行した。

 
当日の配信動画(【セッション2_「グローカル展開 〜犯罪学は地域に何をもたらすのか〜」】)は、YouTubeにてご覧いただけます。