2022.06.06
タイ薬物政策の大転換〜厳罰主義から合法化へ〜世界の薬物政策の潮流とは何か 現地調査メンバーの緊急報告会を開催 国際基準の薬物政策を実現しつつあるタイの薬物政策の最前線と、世界の潮流に抗う日本の状況について、現地調査メンバーが報告<6/11(土)14:00-16:00オンライン開催、Webから要事前登録>
【本件のポイント】
- 龍谷大学 ATA-net研究センター1)は、2020年 4月から「麻酔薬物をめぐる政策、法律および法執行に関する比較研究」2)として、タイと日本の国際比較研究を実施
- 共同研究機関のマヒドン大学(タイ)の協力を得て、2022年5 月上旬、薬物政策の大きな転換期を迎えているタイの実態調査を実施。これまでの厳罰主義から合法化へ大転換し、最新の医療や新たな産業へと発展する可能性があることを確認
- 今回の緊急報告会では、国際基準の薬物政策を実現しようとしているタイの薬物政策を展望すると共に、世界の潮流に抗う日本の状況について比較・検討する
【本件の概要】
龍谷大学 ATA-net研究センターは、2021年2月から状況と政策を学ぶことを目的として連続ティーチイン(オンライン研究会)を12回開催してきました。本企画は、研究者や実務家、そして市民の視点から、国内外の大麻情勢をフォローし、法律、医療、経済、政治の動向を踏まえ、日本のあるべき薬物政策を考えることを目的としています。
近年、国際的には医療用大麻を合法化し、自己使用についても非刑罰化する政策が一般になっています。背景としては、大麻に対する研究が進み、依存性の高い物質(THC)と依存性の極めて低い物質(CBD)との識別が可能となったことが挙げられます。そうしたなか、これまで日本同様に厳罰主義を取っていたタイ政府は、2021年に法改正をおこない、許可を得ていない大麻の生産・流通・輸出入は厳しく処罰するものの、医療用大麻の有効利用、CBD製品の製造販売を積極化することで、新型コロナウイルス感染症の流行で打撃を受けた国内経済の立て直しを進める政策に舵を切りました。これは、2020年、国連麻薬委員会が世界保健機構(WHO)にしたがい、医療や研究目的の大麻を最も危険な薬物分類から削除する決断をしたことを受けての政策です。この決議に欧米諸国は賛成しましたが、自由主義国家の中では日本政府は反対しました。
今回の緊急報告会では、調査メンバーの見てきた最新の知見を紹介し、国際基準の薬物政策を実現しようとしているタイの薬物政策を展望します。また、世界の流れに抗って、大麻使用罪を新設して、法律によって大麻を囲い込もうとしている日本政府の薬物政策3)についても比較・検討します。
1.実施概要
- 名称:【緊急報告会】大麻政策の最前線に情報を発信してきたティーチイン
「大転換・タイの薬物政策 〜厳罰主義から合法化へ〜」
- 日程:2022年6月11日(土)14:00-16:00
- 会場:オンライン(Zoom) /龍谷大学深草キャンパスよりLIVE配信
- 定員:200名 ※申込先着順・参加無料
- 内容:①趣旨説明 ②タイ調査の概況報告 ③国際基準の薬物政策と日本の状況比較 等
- 報告者:※順不同
・丸山 泰弘 氏(立正大学法学部 教授・本学 ATA-net研究センター嘱託研究員)
・石塚 伸一 氏(本学法学部 教授・本学 ATA-net研究センター長)
・加藤 武士 氏(木津川ダルク代表・本学 ATA-net研究センター嘱託研究員)
・舟越 美夏 氏(ジャーナリスト・本学ATA-net研究センター嘱託研究員)
・吉田 緑 氏(日本比較法研究所(中央大学)嘱託研究所員・本学 ATA-net研究センター嘱託研究員)
2.詳細・申込方法
以下URLから詳細を確認のうえ、ページ内のフォームに必要事項を入力しお申込みください。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/event/entry-10565.html
(申込期限:6月11日(土)正午 ※先着順・定員に達し次第、受付終了)
3.用語解説
1)龍谷大学 ATA-net研究センター
ATA-net(Addiction Trans-Advocacy network)研究センターは、「多様化するアディクション(嗜癖・嗜虐行動)からの“立ち直り”の支援」を研究テーマに掲げ、2019年に発足しました。当センターは、本学がこれまで培ってきた刑事政策・犯罪学・アディクションに関する研究・教育・社会実践の成果を踏まえ、多くの人たちが人生において直面する多様な“つまずき”(=多様な嗜癖・嗜虐行動や非行問題等)からの “立ち直り”(=主体性の回復)を支援するためのスキームの開発とその社会実装を目的としています。
2020年1月25日に実施した当センターのキック・オフ・シンポジウムの詳細は下記ページを参照。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-5035.html
2)「麻酔薬物をめぐる政策、法律および法執行に関する比較研究」
本調査研究は、日本学術振興会二国間交流事業共同研究・セミナー「麻酔薬物をめぐる政策、法律および法執行に関する比較研究:タイと日本の国際比較」(JPJSBP・120209202)の事業として実施されるものです。2020年4月から3ヶ年の調査研究期間を通じて、日本とタイの麻酔薬物に関する政策、法制度および法執行の現状を調査し、その結果を比較検討することによって両国の違いを理解し、薬物関連の拘禁刑、再犯、再使用および犯罪を減少させるためのあり得べき改善策を見出すことを目的としています。
3)日本政府の薬物政策
2021年1月、厚生労働省は「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を立ち上げ、医療用大麻の使用を拡大する一方で、これまで処罰の対象となっていなかった大麻の使用を犯罪化・刑罰化しようという論議を開始しました。こうした議論を受けて、当研究センターは、“大麻”問題を科学的に議論するための正確な情報を提供すべく、「シリーズ大麻ティーチイン」を開催してきました。これまでの実施概要・レポートは下記ページを参照。
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-8872.html
問い合わせ先:龍谷大学 ATA-net研究センター
Tel 075-645-2154 Fax 075-645-2240 Web https://ata-net.jp/