2026.07.02
基礎演習7組 スタディツアーレポート~滋賀県野洲市須原地区の魚のゆりかご水田の農業体験記~【政策学部】
2026年5月30日と6月6日、300名を超える政策学部1年生名が日帰りのスタディツアーに参加しました。
その中で基礎演習7組は、金紅実准教授の引率で滋賀県野洲市須原地区を訪問し、魚のゆりかご水田の農業体験を行いました。
午前中は魚のゆりかごとして機能する無農薬栽培水田の除草作業や水路で生息している稚魚の生き物観察を行い、午後は地域の憩いの家に集まり、地元座学として世界農業遺産である琵琶湖システムの紹介と地域の取り組みについてのお話しをうかがいました。今回の地域スタディツアーを実施するにあたり7組は、テーマ毎に6つのグループ(班)を作り、事前学習と事後学習を行いました。各班のレポートをお伝えします。
1班は、「世界農業遺産とは―政策背景と現状と未来」というテーマとその視点から今回の地域農業体験に励みました。
午後の講座では、元滋賀県庁農政課の青田さんや須原地区の農家の方々から、世界農業遺産や魚のゆりかご水田についてお話を伺いました。講義を通して、魚のゆりかご水田が世界農業遺産に認定されるまでの経緯や背景、その価値について学ぶことができました。特に印象に残ったのは、魚のゆりかご水田の歴史についてです。農業と漁業という、一見真逆に見えるものが琵琶湖を通じて共生し、現代まで受け継がれてきたことに深く感銘を受けました。弥生時代から地域で受け継がれてきた伝統産業でありながら、その価値が近年になって見直され、世界的に評価されるようになったことを学び、魚のゆりかご水田が日本を代表する環境保全型農業であることを改めて強く感じました。また、世界農業遺産は伝統的な農業や地域文化を守るだけではなく、それらを次世代へ継承していくことも目的としていることを学びました。次世代への継承のために、実際に琵琶湖地域でも子供に体験学習を通じて農業の魅力を理解してもらうという活動を行っているとお伺いしました。今回のスタディツアーもこの体験学習の一環であり、地域の方々の努力を強く感じました。
私たちも魚のゆりかご水田を通じて生産された商品を購入するなど、自分たちにできることから農業に貢献していきたいと思いました。
ゆりかご水田の水路で生き物調査の様子
魚の稚魚が生きるゆりかご水田での除草作業①
魚の稚魚が生きるゆりかご水田での除草作業②
2班は、「琵琶湖システム」のテーマについて、政策的背景や魅力、現在の取り組みという視点から、今回の地域農業体験に臨みました。その中で学んだ内容を紹介します。
まず、琵琶湖システムとは、琵琶湖とその周辺の自然が一体となって育まれてきた環境や文化を守りながら行われる農林水産業のことです。
次に、琵琶湖システムが現在の形に至るまでの経緯について説明します。琵琶湖システムは1000年以上前から受け継がれてきた仕組みであり、2002年に世界農業遺産の取り組みが始まったことをきっかけに、その価値や特徴が改めて再認識され、2015年に「琵琶湖システム」という名称が付けられました。
続いて、琵琶湖システムの特別な点を3つ紹介します。
1つ目は、農業と漁業が深くつながっている点です。一般的に、農業と漁業は対立する面もあるとされています。例えば、田んぼから流れる泥水が漁業に影響を与えたり、農業は個人の土地で行われる一方、漁業は湖や海といった共有の場所で行われたりする違いがあります。しかし、琵琶湖ではエリ漁との関わりや、稚魚が水田で育つ「魚のゆりかご水田」などを通して、農業と漁業がお互いに支え合う関係が築かれています。
2つ目は、山での水源保全活動が盛んに行われている点です。琵琶湖システムでは、きれいな水や魚の餌となる栄養を育む山を守る活動が続けられており、このような環境保全活動は全国でも高く評価されています。
3つ目は、水辺の環境と人々の暮らしが結びついて生まれた知識や文化が受け継がれている点です。例えば、鮒寿司のような伝統的な湖魚食文化や、豊作や豊漁を願って湖に感謝を捧げる祭りなどが、現在も各地で受け継がれています。
このように、琵琶湖システムには1000年以上続く歴史があり、農業・漁業・森林・文化が一体となって支え合う、他の地域にはあまり見られない特徴があることが分かりました。
魚のゆりかご水田と水路で青田さんから現場指導を受ける
琵琶湖システムについての講演会
3班は滋賀県のゆりかご水田の生態的意義、社会的意義について学びました。
事前学習で水田の生態的・社会的意義について調べ、生態系の回復に寄与していることがわかりました。また、魚のゆりかご水田では、生態に影響を与える農薬の使用を制限しているため、除草作業を手作業で行っているということを知りました。当日、水田で除草作業を体験し、体験前は手で雑草を抜く作業だと思っていましたが、実際は除草機を使うことで作業が少し効率化されていることを知りました。また、水田が「天敵がいない」「餌(プランクトン)が豊富」、「農薬が少なく水質がよい」という環境であるということを知りました。そのため、水田という環境が湖魚にとってよい環境であり、魚が生育する環境として適しているということが分かりました。さらに、琵琶湖の周辺地域で行われてきた石けん運動についても学び、水質を守ることが琵琶湖や生き物を守ることにつながると知りました。実際に現地へ行って話を聞き、体験したことで、教室で学ぶだけでは分からないことを知ることができました。
今回のスタディツアーを通して魚のゆりかご水田は、魚を守るだけでなく自然環境や地域の暮らしを支える大切な取り組みだと実感しました。そして、私たちは、自然に有害な合成洗剤の使用を避ける、米を積極的に食べるようにする、という二つのことを実践できるのではないかと考えました。
魚のゆりかご水田の水路に設置した魚道
魚のゆりかご水田の無農薬水田
4班は、「琵琶湖システムの地域文化についてー琵琶湖と暮らしと食文化、食育による伝承」のテーマとその視点から今回の地域農業体験に臨みました。
まず稚魚の観察では、多種多様な稚魚を観察し、農業文化と漁業文化の結びつきについて強く感じることができました。
水路でとれた稚魚の観察
昼食に出された地元素材を生かしたお弁当
次に除草作業では、泥々になりながら汗を流し、無農薬ならではの大変さを学ぶことができました。昼食にはえび豆や湖魚を使ったお弁当をいただきました。これらは滋賀県の伝統的な食文化の1つであり、実食することで強く伝統を感じることができました。
地域講座では、これまでの伝統的な食品とは違う視点から米麺やクラフトビールといったオリジナル商品を開発し、若者にも琵琶湖システムの食文化を広めるために工夫されていることを知りました。
このような地域体験や講座を通して、食育による次世代への伝承の大切さを学ぶことができました。
魚のゆりかご水田の水路での生き物調査の情景
6班では、琵琶湖システムを守り、次の世代へ受け継いでいくために私たちができることについて、実際に農家の方のお話を伺いながら考えました。
まず、私たちにできる最も身近な取り組みは、琵琶湖システムのもとで生産された農作物を積極的に消費することです。地元で生産された農作物の消費が増えれば、農家の収益が安定し、農業を継続しやすくなります。その結果、環境に配慮した農業が維持され、琵琶湖システムを守ることにもつながると考えました。
また、琵琶湖システムを次の世代へ受け継いでいくためには、「兼業農家」という働き方をより多くの人に知ってもらうことが重要だと考えました。兼業農家は、農業だけで生計を立てる専業農家とは異なり、別の仕事をしながら農業に取り組むことができます。そのため、収入面での不安や農業を始める際のリスクを抑えやすく、比較的挑戦しやすいというメリットがあります。このような働き方の魅力が広く知られることで、農業に興味を持ち、実際に挑戦してみようと考える若者が増え、琵琶湖システムを支える担い手の確保につながると考えました。
地域農家さんの小麦畑の機械収穫の様子
スタディツアー全体の記事はこちらです。
1年生全員がスタディツアーに参加〜「地域デビュー」の機会として【政策学部】(1)
1年生全員がスタディツアーに参加〜「地域デビュー」の機会として【政策学部】(2)