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保健管理センター

健康情報シリーズ 6月号 その2

ニコチン依存症はとても強力!
~5月31日は「世界禁煙デー」~

タバコはなぜやめられないのでしょうか。
タバコがやめられない原因―ニコチン依存症―のしくみを見てみましょう。

タバコの煙にはたくさんの物質が含まれていますが、その中でニコチンこそがタバコをやめられなくしている原因です。タバコを吸うと煙の中のニコチンが肺から血管を介して脳の中にすぐに入ります。ニコチンは神経細胞の表面にある鍵穴(ニコチン性アセチルコリン受容体)注にぴったりとはまって、神経細胞を刺激します。この神経細胞は「報酬系」という神経細胞の仲間です。この神経細胞が刺激されると私たちは「快い感覚」を感じます。報酬系の神経系(話題のドパミン神経です。)は私たちの記憶や学習に大切な働きをしています。ところが、タバコを吸い続けていると、この報酬系の神経細胞表面の鍵穴の数が徐々に減少していまい、同じ「快い感覚」を感じるためにはタバコを吸い続けなくてはならず、さらにたくさんのタバコを吸わなければならなくなります。これがニコチン依存症の状態です。こうなると、ニコチンが不足すると報酬系神経細胞がゆがんだ情報をほかの神経に伝えるようになり、私たちはイライラ感、不安感などのタバコ切れの症状(離脱症状)を感じるようになります。

タバコを吸っている人は、タバコを吸うと気分がリラックスすると言います。これは、ニコチンが薬物として作用していることと、ニコチン依存症の離脱症状をタバコで一時的にやわらげているだけなのです。近年の研究で、ニコチン依存症は覚せい剤やヘロイン、コカインなどの麻薬の依存症と同じメカニズムで生じているらしいことがわかってきました。それだけニコチンは強力な依存症を引き起こすのです。禁煙がなかなか成功しないのもこのためです。今、吸っていない方は決して吸わないでください。今吸っている方は、脳の働きを正しくするために禁煙に挑みませんか。以前の禁煙は根性だのみだけでしたが、今は各種の禁煙補助薬があり、禁断症状もずっと軽くなります。ぜひトライしてください。

注)ニコチンは神経伝達物質(私たちの脳にある神経細胞から神経細胞へ情報を伝える物質)であるアセチルコリンと分子構造が似ていて、アセチルコリン受容体に結合できます。

保健管理センター
副センター長 中村 慎一