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Health Care Center

保健管理センター

健康情報シリーズ 12月号

沖縄の「26ショック」を知っていますか?
~食生活の激変がもたらしたもの

沖縄はかつて長寿日本一と賞賛されていました。特に1985年には平均寿命が世界1位となり、世界長寿地域宣言を発表しました。ところが、その後、男性の平均寿命が徐々に短くなってきたのです。女性の長寿日本一は続いています。ところが、男性の平均寿命は1990年に5位、1995年に4位、そして2000年にはとうとう26位まで順位を下げました。沖縄の人たち(そして医学界)に与えた衝撃―26ショック-は大変でした。沖縄にいったい何が起こったのでしょうか。筆者が初めて沖縄を訪れたのは学生最後の年です。30年あまり前のことです。その時に沖縄で見たものは大きなパーキングロットをもつドライブスルーのハンバーガー店やフライドチキンの店です。そしてファーストフード店の数々。当時、本土にはまだこのスタイルの店は少なくてとても新鮮でかっこよく感じました。ところが、今はまったく別の感想を持っています。

沖縄を旅行したら一度は食べるのが沖縄料理でしょう。その特徴は豚肉、昆布、豆腐、各種の沖縄野菜を多く使うことです。豚肉からは良質の動物性蛋白質とビタミンB1を豊富に摂取でき、昆布はミネラル、食物繊維(沖縄ではご存じのように昆布はだしを取るだけでなくそのまま野菜のように食べます。)を多量に含みます。豆腐は良質で低カロリーの植物性蛋白質です。そして、本土では見かけない沖縄の栄養豊富な野菜たち。これらが沖縄の長寿を支えてきた食品です。沖縄の食文化でとりわけ驚くのは豚肉の食べ方にあります。脂身を多く含む部位(バラ肉)を長時間煮込んで、とろとろに柔らかくしますが、肝心なのはその後です。一度、そのまま冷やします。そうすると、ナベの表面に脂が白く分厚く固まります。その脂をこそげ取ります。脂をのぞいた肉は味付けしてご存じの「らふてー」になります。一方、取り分けた脂は食べません。冷蔵庫のなかった時代はこの脂をカメにためておき、そこに食べ物を埋めて食材の保存に利用していました。沖縄では食べ物を「クスイムン」(琉球言葉で「くすりもの」で「薬になる体にいい食べ物」 の意味です)と呼んでいます。あの「らふてー」の調理法の中に沖縄料理の神髄がかいま見えます。

余分な動物性脂肪はとらずに、良質の動物性蛋白質をしっかりと食べ、さらに昆布、豆腐、野菜を十分に食べていた沖縄の人たち。戦後、この理想的な食生活が徐々に変化していきました。食生活のアメリカ化の影響を日本でもっとも早くから受け、動物性脂肪をからだが必要とする以上にとり、塩分の取り方もふえました。また、沖縄独特の料理が家庭の食卓から減っていきました。この影響が外食率の高い男性に強く表れたようです。そして県民の肥満率は日本一になり、高血圧、高脂血症が増えていきました。その結果、男性の心臓病や脳卒中が増加してしまいました。現在は「26ショック」の反省から沖縄では食生活の改善へ学校も交えての様々な取り組みがされています。いつか長寿日本一を取り戻して欲しいと思います。
みんなでわいわい食べるファーストフードも美味しいものです。でも、時々は自分の食生活を振り返ることが大切です。

保健管理センター
副センター長 中村 慎一