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Health Care Center

保健管理センター

健康情報シリーズ 5月号

睡眠の生理学

新学期がはじまってはや1か月あまりが過ぎ、勉強と課外活動で多忙なみなさんも多いことでしょう。大学生の時にしか出来ないことがいっぱいありますので目一杯やってください。

この時期になると忙しさのあまりつい夜更かしをする日も多くなりがちです。そうなっている皆さんに睡眠についてお話します。

睡眠時間の長さは人により様々ですが、平均6~8時間位です。この7時間前後続く睡眠の眠りはじめから目覚めるまでその中身はずっと同じだと思っていませんか。実はその内容は同じではないのです。ノンレム睡眠とレム睡眠という言葉を聞かれたことがありますか。私たちは眠っているとき、ノンレム睡眠とレム睡眠という2種類の異なる睡眠を交互に繰り返しています。ノンレム睡眠とレム睡眠が1組になっていて、その長さは90分位です。図1の睡眠の経過図(Dement & Kleitman, 1957)で説明しましょう。

黒塗りの部分がレム睡眠で、それ以外がノンレム睡眠です。睡眠段階は1→2→3→4の順に深くなります。眠り始めた最初の2サイクルで深い睡眠(3と4)が長くなっています。この図は睡眠中に脳波を測定し、その脳波の形から睡眠の深さを判定して作られています。
(→)はレム睡眠の終了時間を示しています。
(日本睡眠学会HPより一部改変)

第1サイクルでは入眠してからレム睡眠が終わる(矢印)までが約90分で、これが睡眠の1サイクルです。寝ている間にこの組み合わせが4回から5回繰り返します。4サイクルあれば睡眠時間はざっと90分×4で6時間くらいです。5サイクルで7時間30分ですね。

写真1

(写真1)

レム睡眠とノンレム睡眠はそれぞれ役割が異なります。 ノンレム睡眠は深い睡眠で脳を休めるための睡眠です。脳は眠っていますが、身体の筋肉には緊張があります。
(写真1)ノンレム睡眠:脳は熟睡していますが、身体の筋肉は動かせるので、頭を持ち上げています。

一方、レム睡眠は体の筋肉を休めるための睡眠で、身体の筋肉は緊張が取れてだらんと弛緩しています。

写真2

(写真2)

(写真2)レム睡眠 身体の筋肉が休息中のため、手足から力が抜けてだらんとしています。
この時、脳は活発に活動していて、夢をみるのもこの時期が多いです。

寝入ってから約3時間の間に2回のノンレム睡眠があります。(2回の睡眠サイクルなので90分×2=3時間)が、このノンレム睡眠がとても深い睡眠です。

図1を見ると第1サイクルと第2サイクルで睡眠段階の3~4の深い睡眠が長くなっていることがお分かりでしょう。ここで脳がたっぷり休養をとります。その後、朝にかけて徐々に深いノンレム睡眠が少なくなっていき、反対にレム睡眠が長くなります。若い頃はこのレム睡眠が長めになっています。昼間の活発な活動で疲れがたまった筋肉を休める必要があるのでしょう。レム睡眠は4サイクル目の睡眠から長くなり、また深い睡眠の長さが徐々に短くなっていき朝に目覚めます。このように、入眠から目覚めまでに睡眠の中身は少しずつ変わり、脳と身体の両方に効率よく休養をとらせるしくみになっています。

睡眠は脳と身体の健康の保持にとても大切です。また、睡眠は昼間に学習したことを記憶として定着するためにも必要であることがわかっています。睡眠の時間を大切にしましょう。

付録

眠りやすくするために(「堀忠雄 著 快適睡眠のすすめ 岩波新書」から)

睡眠の専門家である堀先生によりますと、
“入眠の工夫は体温を上げることである。体温が下がっていくときに寝付きがよくなり、体温が上がっていくときにはなかなか寝付けない。体温が下がっていく落差が急激であるほど寝つきもいい。”といいます。この原理を利用して、堀先生が勧める入眠の工夫は、 (1)風呂に入ることと、(2)軽い運動をすることです。

(1)風呂に入ると、一時的に体温が上がります。その後、徐々に体温が下がっていきますから、その時に眠るようにすると寝付きやすいそうです。ただし、熱い湯に入ると交感神経が刺激されて寝つきが悪くなります。ぬるめの湯に入りましょう。

(2)軽い運動をすると体温が上がります。その後、安静にしていると徐々に体温が下がっていきますから眠りやすくなるという理屈です。ただし、“運動としては、軽く汗ばむくらいの有酸素運動がいい。息を詰めてダッシュするような運動は、乳酸がたまってしまって筋肉痛をおこすので、睡眠前の運動としては好ましくない。”とのことです。
軽い運動をして2時間後が入眠しやすいそうです。
軽い運動をして2時間後にぬるめのお風呂に入浴してから布団に入れば完璧ですよ。

保健管理センター
副センター長 中村 慎一