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Health Care Center

保健管理センター

健康情報シリーズ 12月号

健康診断はあなたにとって必要なのか?

教職員の健康診断の時期が終了した。その結果は各自の元に知らされているのだが、その結果に過剰に心配になっている人から、ひとまず安心した人、満足している人、多少の興味を持つ人、全く興味を持たない人までいる。さらには、健康診断を受けない人もおり、ここには健康診断への興味の有無だけでなく、健康診断への反抗意識をもつ人もいる。まさに、各人各様であろう。

人は元来、多種多様であり、一元的に物差しで測ることはできない。それを敢えて一元的に評価する方法が試験である。ある門をくぐることの可否の判定に試験の合否が用いられるのである。この可否判定基準は、その門をくぐることの意味付けから規定され、その物差しの優劣によって可否となる。この優劣レベル(カットオフ値)は、門をくぐる目的によって異なる。採用試験では高く、スクリーニング試験では低くなる。

健康診断はこのスクリーニング試験の代表である。各種検査指標の劣レベル(異常値)を規定し、どの検査指標に異常値が見られるかを調べる手法である。しかし、誤解されやすいのは異常値が見られた時の健康についての判断である。「異常値がみられると健康ではない」といった解釈は誤りであり、擬陽性の場合が大量に含まれていることを忘れてはならない。大学病院での検査も同様である。検査手法が一般検査から精密検査に進められることで、擬陽性率が減らされているにすぎない。

では、健康診断で異常値が無ければ健康であろうか?こんな簡易な物差しで健康基準は決められないようにみえるが、意外にも確率論ではこの簡易物差しである程度の健康比率は高まるようである。既に実証結果から有効な検査指標の種類も規定されている。しかし、各人各様と言ったように、人によって異なる。人を見る視点を多次元にしなければ本質は見えてこない。とは言っても、そんなに難しいことではなく、異なった質をもつ物差しを増やすことで評価の信頼性をかなり高めることはできる。

異なった質をもつ物差しとは、意外に簡単で身近にある。まず、遺伝規定である。自分の親族にがん患者、高血圧、糖尿病など疾患の有無を知ることである。これまで多くの疾患モデル論の中で疾患発症因子として、遺伝、環境、自己努力の因子が1/3ずつであることが示されている。これによれば、遺伝負因がなければ1/3の疾患リスクが無くなることになり、とても大きい。同様に、環境調整によって1/3のリスクが減るのではと期待される。しかし、この環境調整とは、自分の生活環境のインフラ整備のようなもので、自然の劣化に暮らす現代人にとって改善は難しく、リスクの軽減は望めない。

次に、自己努力の因子である。健康に対する自己努力、例えば適度な運動・食事が含まれるが、実はこれを全対比で見るとかなり低い。むしろ、ストレスコーピングといった、負のストレスを軽減することが大きい。それに最も効果があるのが、1)心地よく睡眠をとることであり、2)空腹感によって3食を満足すること、3)毎日を楽しく生活することである。
このように見ると、健康を判断する上で、健康診断の優先順位は、遺伝、睡眠、食事、楽しい生活の物差しにて可であれば、かなり下がると言える。そして、各物差しで問題点がある場合に健康診断指標の信頼瀬が一気に高まるのである。自らの健康診断とその結果への関心の有無は、こうした自己評価から自身が無意識的に選択しているものと言えるかもしれない。

保健管理センター
センター長 須賀 英道