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保健管理センター

健康情報シリーズ 6月号

脱水症のあれこれ

① 2種類の脱水症

脱水症は体から出ていった水分が、体に入った水分よりも多い場合に起こります。ただし、脱水症はただ水分が不足していることだけではない場合があります。脱水症には2つのタイプがあります。水分欠乏型脱水(高張性脱水)とナトリウム欠乏型脱水(低張性脱水)です。ナトリウムとは塩分と考えてください。

普通に汗をいっぱいかいて水分をとらなかったら、水分だけが不足して水分欠乏型脱水になります。このタイプはいっぱい汗をかいたのに「飲まず食わず」でいたために起こる脱水症です。この脱水のときは喉がとても渇くことが特徴です。独居の高齢者が夏の蒸し暑い時期に自宅で脱水のために倒れていることがよく報道されています。その多くはこのタイプの脱水です。高齢者は喉の渇きの感覚が鈍くなっています。このために、自分の意思で水分を摂ることが少ないことが一因です.この場合は、家族が時間を決めて水分を飲ませてあげることが必要になります。

多量に汗をかいたときや下痢・嘔吐が激しいときに、水ばかり飲んで塩分を摂らないでいると今度はナトリウム欠乏型脱水になることがあります。「飲んで食わず」で起こるタイプです。このタイプでは喉はあまり渇かないことが特徴です。その代わり、血圧が下がり、立ちくらみが強く、脈拍は弱くなり、動悸を感じるようになります。「水分とともに塩分もとりましょう。」という呼びかけがなされていますが、このタイプの脱水を予防するためです。激しい運動をして汗をいっぱいにかいたら、水だけを飲むのではなく、経口補水液やスポーツドリンクを摂るようにします。

② 暑いからビールを飲んで寝ようは?

ビール大瓶1本を午後8時に飲んだあと、血液の粘度(血液のどろどろ度)の継時的変化をみた調査があります。その調査によりますと、午前4時にかけて血液粘度は低下しますが、その後、午前8時にかけて血液粘度が急上昇します。ただし、500mLのスポーツドリンクを午前0時に飲んでおくと、この血液粘度の上昇を防げたということです。血液粘度が高くなると、血管が詰まりやすくなります。朝は脳梗塞や心筋梗塞をおこしやすい時間帯です。これは、この時間帯に血圧が上昇することが一因です。この血圧上昇に血液粘度の上昇が加わるとさらに脳梗塞・心筋梗塞のリスクが高くなります。脳梗塞は冬季の血圧が上昇する時期に最も発病が多くなります。一方、夏季は脱水症のために血液の粘度が高くなりやすく、冬についで脳梗塞が多くなります。アルコールは利尿作用があり、必要以上に体から水分を奪い、脱水の元です。アルコールを飲んだら、眠る前に十分な水分を補給しておくことは、特に夏場には大切です。

③ 私たちは「不感蒸泄」をしています

私たちは、気づかないうちに水分を失っています。呼吸するときの呼気(吐く息)、皮膚からの蒸散(発汗を含みません)です。これを不感蒸泄と言います。この量が意外と多く、1日で900mLにもなります。つまり、特別に運動をしなくても、これだけの水分が体から出ていきます。もちろんこれには尿は含みません。これに、運動で発汗するとさらに水分とミネラルを失います。

④ 熱中症を予防する

猛暑の中でのスポーツや労働、暑熱の屋内で長時間を過ごすなどをきっかけにして、高熱(脇の下の体温が38度以上)が出て、脳、肝臓、腎臓の機能や血液の凝固機能に変調を起こしてしまう病気が熱中症です。熱中症になると、その30%の方が命を落としたり、重い後遺症を残すとされています。ただし、熱中症は予防が可能な病気です。表などを参考にして、予防をしましょう。

保健管理センター
副センタ-長 中村 慎一