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2023.08.25

第3回夏のオンライン高校生文学模擬裁判交流大会・実施レポート【犯罪学研究センター後援】

心中未遂事件をめぐる文学模擬裁判を開廷!全国から参加した6高校が対戦

2023年8月11日(金・祝)、全国6チームの高校生が対抗する文学模擬裁判イベント「第3回夏のオンライン高校生模擬裁判交流大会」が開催されました(犯罪学研究センター後援)。当大会は2020年8月9日の初開催以来、選手権や交流大会などを含めて今回で7回目の開催となりました。
>>実施概要】 | 【>>プレスリリース

当イベントは、犯罪学研究センターの兼任研究員である札埜和男准教授(本学文学部)及び、オンライン高校生模擬裁判選手権実行委員会による主催。後援には、当センターのほか、一般社団法人刑事司法未来、京都教育大学附属高等学校模擬裁判同窓会、龍谷大学矯正・保護総合センター、刑事司法未来PJ、龍谷大学法情報研究会、刑事弁護オアシスが名を連ねました。

今回の文学模擬裁判では、「心中」を主な題材とし、実際の事件やそれを模擬裁判化した書籍を参考に独自のシナリオ教材・現代版近松「坂田山心中未遂事件」を作成。近松門左衛門『曾根崎心中』、1932年に起きた坂田山心中事件に関わる歌謡曲や映画、文学者の情死事件(有島武郎と波多野秋子の心中事件、島村抱月や松井須磨子の後追い心中)などを織り込み、文学的色彩を加えたものです。

【現代版近松「坂田山心中未遂事件」・シナリオ紹介】
(あらすじ)※
令和5年5月8日午後8時頃、神奈川県中郡大磯町のホテル坂田山において、夫が内縁の妻をベルトで首を絞めて殺害するという事件が起こった。
妻はガンに冒され余命幾許もなかった。自分の命が短いことをわかっていた妻は、夫に以前から「殺してほしい」と漏らしていた。
殺害された日はホテルで泥酔し、夫に「殺してくれ」と迫ったのである。
妻を苦しみから救ってやりたいという思いから、夫は殺すことを託されたと判断し、妻の首を絞め、それでも殺せないとわかって自分のベルトで締めあげ、殺害に至った。
罪の重みにたえかねた夫はそれから後を追って自分も死のうと試みたが死に切れず、警察に自ら電話して殺したことを告げ逮捕された。
その後の調べで、確かに夫は妻を愛していたが、民間療法の高額な治療費で生活はかなり圧迫され苦しい状態であったことが明らかになった。
また消費者金融や以前在職していた会社に借金があり、ギャンブルもしていたことがわかった。そこで警察は取調べの結果、嘱託殺人ではなく保険金を狙った「殺人」にあたると判断した。
こうして、この事件は検察官から横浜地方裁判所小田原支部に起訴状が提出され、公訴が提起された。
検察官は「殺人罪」を主張し、弁護人は妻を殺したことには間違いがないとしつつも、嘱託があったとして「嘱託殺人罪」を主張した。


今大会には全国から6校が参加し、参加校の高校生らが検察側・弁護側どちらかの立場の役になりきり、立証・弁護活動を展開しました。

【参加校(順不同)】
札幌龍谷学園高等学校(北海道)/京都女子高等学校(京都)/神戸女学院高等学部(兵庫)/神戸海星女子学院高等学校(兵庫)/済美平成中等教育学校(愛媛)/上智福岡高等学校(福岡)

【結果発表】
☆☆☆優勝:神戸女学院高等学部(兵庫)
☆☆準優勝:上智福岡高等学校(福岡)
☆MVPには、済美平成中等教育学校(愛媛)の証人役、上智福岡高等学校(福岡)の被告人役、神戸女学院高等学部(兵庫)の主尋問役の生徒さんがそれぞれ選ばれました。

 
沈黙する被告人、歌う証人など、高校生の多種多様な演技が冴える大会となりました。
裁判官役をつとめた佐藤元治准教授(岡山理科大学)は「今日行われた3試合ともに、各高校の工夫が凝らされており見ごたえがあった」と述べました。同じく裁判官役の伊東隆一弁護士(京都弁護士会)は「質疑において、一つひとつの事実を明らかにするということを意識するとより良かったのではないか。また、被告人の背景(なぜ借金を負うことになったのか等)についてもう少し掘り下げて欲しかった。とは言え、個々に独自の視点から事件を組み立てており、今日の3試合はどれ一つとして同じものではなかった。観ていてドキドキしたし、良かったと思います」と大会を振り返りました。


主催者:札埜和男准教授(本学文学部・犯罪学研究センター「法教育」ユニット長)

主催者:札埜和男准教授(本学文学部・犯罪学研究センター「法教育」ユニット長)


大会実行委員長の札埜和男准教授(本学文学部/犯罪学研究センター「法教育」ユニット長)によるコメントは、後援者の「刑事弁護オアシス」HP記事をご覧ください。
https://www.keiben-oasis.com/21506

次回、「冬の高校生文学模擬裁判交流大会」は2023年12月17日を予定。詳細が明らかになりしだい、犯罪学研究センターのHPにて告知します。

[補註]
※ (主な参考文献):
朝日新聞縮刷版1991年3月10日付「病気の妻を絞殺と自首 藤沢で男性逮捕」
朝日新聞縮刷版1991年5月9日付「『末期がんの妻を殺した』宇都宮 会社員自首」
奥野善彦編(1994)『安楽死事件 模擬裁判を通してターミナルケアのあり方を問う』医学書院
邦光史郎(1989)『情死の歴史 陰の日本史』廣済堂出版
小林恭二(2005)『心中への招待状 華麗なる恋愛死の世界』文春新書
佐藤清彦(2001)『にっぽん心中考』文春文庫
近松門左衛門『曾根崎心中』
松平進編(1998)『新注絵入 曾根崎心中』和泉書院