2020.09.17
月かげのうた 法然聖人
月かげのうた 法然聖人
●深草学舎東門 No.002 2020年9月15日~
月かげの いたらぬさとは なけれども
ながむる人の こゝろにぞすむ
法然聖人
●孤独とは?
「孤独」って何なのでしょうか?
辞書で「孤独」という言葉を調べると
「仲間のいないこと。ひとりぼっち。」『広辞苑』
「精神的なよりどころとなる人やものがなく、ひとりぼっちであるさま。」『詳解国語辞典』
とあります。
一般的には「周りに人が居なくて、一人でいること」を「孤独」と言うようです。
しかし、周りに沢山の人が居たとしても孤独を感じることってありませんか?
通学ですれ違う沢山の人たち、
毎日立ち寄るコンビニの店員さん、
同じ授業をとっている人、
あらためて思うと、自分の周りには沢山の人が居ます。
しかし、その多くは、なんとなく顔を知っているだけでお互いを特別な人として認識しているわけではなく、毎日顔を見ていても、人生においてすれ違う「その他大勢」の中の一人なのではないでしょうか。
沢山の人が居ても、孤独を感じることって、あるような気がします。
また、「お互いを特別な人として認識している」ような人、友達、仲間たちと過ごしていても、そこですら孤独を感じることってありませんか?
みんなが話している話題を一人だけ知らなかった時、
仲間たちとのちょっとした考え方の違いに気づいた時、
これからの人生での進む方向の違いを感じた時、
いつか来る別れを思った時…
仲間同士で集まっていても、そこにだって孤独を感じることがあります。
むしろ、仲間の中で感じる孤独は、一人でいる時に感じる孤独よりも辛いものであることだって多いかも知れません。
では、この厄介な「孤独」というものを、私たちは解消することができるのでしょうか?
『仏説無量寿経』というお経の中には
「独生独死 独去独来(どくしょうどくしどっこどくらい)」
という言葉があります。
「人は結局は、独りで生まれ、独りで死んでいかねばならない」というような意味の言葉です。
人生において様々な人や物と連れ添ったとしても、この人生を生きる私のいのちは、結局のところ、根本的には孤独なのだと仏さまは教えてくださっています。
この言葉の後には
「誰も代わることができない」
ということが書かれています。
実は、私たちは誰もがみんな孤独で、誰も代わることができないのちを生きているのだそうです。
感じるか感じないかによらず、全ての人が、孤独をかかえる「ひとりぼっち」。
その「ひとりぼっち」同士が、身を寄せ合いながら生きているのが私たちなのではないでしょうか。
●気づきと癒し
しかし、そんな孤独な私を想ってくれている人がいると、フと気づかされることがあります。
言葉に出さずとも、私のことを心配し、気づかい、認めてくれる人が居る。
そんな気持ちが知らされた時、孤独なままに、孤独な心が癒されていくような気がします。
孤独って、自分が誰かを探している時には、なかなか癒されないのだけれど、自分を想ってくれている誰かの心に気づいたとき、孤独は孤独のままに癒されるのではないでしょうか。
辛かった孤独が、たった一人のまなざしで癒される。
そんなことだって、きっとあるのです。
たとえ今、そのまなざし気づくことができなかったとしても…
●阿弥陀さまのまなざし
親鸞聖人のご師匠の法然聖人は
「月かげの いたらぬさとは なけれども
ながむる人の こゝろにぞすむ」
と歌われたと云います
「月かげ」とは、月の柔らかな光のこと。
世界中のどんな所でもその優しい光で照らしているのが、月の光です。
法然聖人は、この月の光によって、阿弥陀さまが私を思ってくださっている慈悲の心をあらわしてくださいました。
ひょっとしたら、人生は夜道を独り歩いているようなものなのかも知れません。
この先に何があるのかわからず、不安な夜道です。
でも、その暗い道を月明りが照らすように、私の人生を仏さまはその慈悲の光で照らし、いつでもどこでも寄り添ってくださっています。
仏さまは決して私を見捨てることがありません。
そのお慈悲を知って生きる人の心には、いつでもどこでも仏さまのお慈悲がやどってくださっています。
●私も誰かの月のひかりに
誰かが私を想ってくれるように、
仏さまが私をお慈悲で照らしてくださるように、
想われ照らされている私もまた、誰かにとっての月のひかりになれたなら良いのに、と思います。
●一人で悩まないで
学内外に相談できるところは沢山あります。
一人で悩まず、相談してください。
龍谷大学 宗教部 オフィスアワー ~お坊さんと話してみませんか?~
龍谷大学 こころの相談室
厚生労働省 こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~
(イラスト作成/解説・宗教部 保田正信)
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