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卒業式・入学式

2020年度 卒業式 式辞

文学研究科、法学研究科、経済学研究科、経営学研究科、
実践真宗学研究科、政策学研究科、国際学研究科のみなさまへの式辞

龍谷大学大学院文学研究科、法学研究科、経済学研究科、経営学研究科、国際学研究科、政策学研究科、および実践真宗学研究科での研究を無事に修了され、学位を取得された皆さん、おめでとうございます。龍谷大学を代表して、心よりお祝い申し上げます。

皆さん方は学部を卒業して、さらに上のステージに上り、学問研究に研鑽を積まれた結果、本日見事に学位を取得されました。ここに至るまで、さまざまな出来事があったと思います。とりわけ、この一年は新型コロナウイルスの蔓延に翻弄された一年でした。まだまだ不安は拭えません。皆さんには、言い知れぬ困惑と苦労があったかと思いますが、見事に成果を出され、本日晴れて学位を授与される運びとなったのです。皆さん方の努力に敬意を表すとともに、入構制限などこれまで大学のとった措置に協力をしていただいたことに対し感謝の気持ちを表明したいと思います。

今日に至るまでのプロセスをいま一度反芻してみてください。研究を続けるにあたり、つらい思いをしたこともあったでしょう。努力を重ねてもなかなか研究が進捗せず、焦りの気持ちにわしづかみされたこともあったでしょう。しかし、なんとか学位取得にまで辿り着かれたのです。

各人の専門領域で、課題を見つけ、新たな視点を確立し、自分の考えを論理的に整理していく。そして結論に導いていく過程、これこそが学問の醍醐味です。

学問研究を通じ、皆さんは確実にステップアップされました。学位取得という結果よりも、今日に至るまでのプロセスこそが皆さんの今後の人生における活力の源泉になると思います。

今日は皆さん方にとって新たなる旅立ちの日です。これからさらにひき続き研究に邁進される方、社会に出て企業に就職される方、道は違えど、今日は皆さん方にとって節目となる日です。

ただ、いま全人類がコロナ禍という同じ課題に直面しています。あらゆる局面に強い影響を及ぼし、私たちのいのちを脅かしています。

地球的視野で現代社会をみつめるならば、コロナ禍を初めとしてあまりに多くの深刻な課題があることに気づきます。紛争、貧困、経済格差、気候変動など、いまや地球が危機的状況にあります。地球が悲鳴をあげているのです。決して大げさな表現ではありません。

人類の活動が地球の在り方を根本的に変えてしまったことで、近年「人新世」という地質学の概念が様々な分野で使われるようになっています。新型コロナウイルスのパンデミックに見られるように、次々と数多くの危機事象が私たちの生活を脅かす、これが「人新世」の特徴です。まさに今、人間の営みが問われているのです。人間の行き過ぎた自然開発や過剰なる二酸化炭素の排出が生態系に大きな影響を及ぼしています。人間の行為、人間の行動、これが問題を引き起こしているとするならば、皆さん方にとっても他人事ではないはずです。

近代文明は便利なものを次々と生み出しました。私たちは科学技術文明の恩恵を受けています。皆さんはご存知でしょうか。スマホやパソコンにはコンデンサーなどに用いられるコルタンという鉱物が使われています。コルタンの産地は主にアフリカのコンゴです。コンゴでそのコルタンという鉱物の採掘をめぐって内戦が行なわれ、内戦が鎮まった近年では一部の武装勢力が性暴力でもって村人を恐怖に陥れ、村を実効支配するなか、コルタンまたはタンタルという鉱物を採掘しています。

日本人が気楽にスマホやパソコンを使っている一方で、遠く海の向こうですさまじい暴力が行なわれているのです。どこまでも拡大・成長を指向する経済活動の負の側面です。こうした状況下、コンゴでひとりの医師が立ち上がりました。ムクウェゲさんという医師は性被害にあった女性の治療にあたる傍ら、理不尽な暴力・人権侵害がコンゴで行なわれていることを世界に向けて告発しました。その活動が評価され、ムクウェゲ医師は2018年ノーベル平和賞を受賞されました。暴力や人権侵害を引き起こしながら便利さを享受している文明のありようは実に歪んでいます。やはり人間の営みの見直しが必要です。ムクウェゲ医師は「私たちは消費者として、私たちが買う商品の中にどのようなものが使われ、どのようなところからきているのかを確認する責務があります」と警鐘を鳴らしています。ムクウェゲ医師が来日したとき、好きな日本語として挙げた言葉が「利他」でした。

2019年、龍谷大学は創立380周年を迎えました。そのとき私は「自省利他」という行動哲学を掲げました。自らのありようを省みて、他者の安寧のために尽力する。こうした人格を形成していくことこそが現代社会に急務であると判断しました。この「自省利他」は本学の建学の精神に繋がります。

わが龍谷大学の建学の精神は周知の通り、「浄土真宗の精神」すなわち親鸞聖人の精神です。激動の鎌倉時代、親鸞聖人が人間のありようを根源的に問いかけ、まことの生き方を求められました。阿弥陀仏の誓願に出遇われ、誓願に照らされた「真実の生き方」を顕かにされたのです。まさにその点にこそ龍谷大学のエッセンスがあります。いかに自分というものが至らない存在であるか、その至らぬ存在の自分に対し智慧と慈悲の光が届いているという不思議。この思議を超えた働きかけこそが、常にわが身を省みて社会のために尽くす人格を形成させるのです。自らのありようを省みて、他者の安寧・他者の幸福のために尽力する、「自省利他」。みなさんのこれからの行動指針にしていただければ幸いです。

皆さんが本学の大学院を修了したことを誇りに思ってくださるように、私たちはこれからも魅力ある大学づくりに邁進してまいります。

皆さんはこれからも龍谷大学の一員です。今後とも校友として篤いご支援をお寄せいただきますよう、最後にお願い申し上げて、私からの式辞とさせていただきます。

本日はまことにおめでとうございます。

2021(令和3)年3月20日

龍谷大学
学長  入澤 崇