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2023.04.07

2022年度人間・科学・宗教総合研究センター研究交流会・開催レポート前編【研究部】

龍谷大学から世界へ。本学らしい特色ある研究プロジェクトの相互連携、新展開をめざして

人間・科学・宗教総合研究センター(人間総研)は、本学の建学の精神に基づき、本学の所有する資源を活かして、本学らしい特色ある研究を推進し、世界に発信することを目的としています。本研究センターにおいては、上記の目的に鑑み、研究プロジェクトを選定し、全学部横断型・複合型・異分野融合型等の学際的研究を推進しています。

2023年3月29日(水)13:00~17:00、 深草キャンパス 和顔館4階会議室2において「2022年度人間・科学・宗教総合研究センター研究交流会」が開催されました。
開催挨拶に立った宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)は、「今回の研究交流会は人間総研が所管する各研究センターの活動にかかる情報共有を通じて、研究プロジェクト間の相互連携による新たな展開の可能性を探る機会として開催する。今年度は対面開催としたので、直に顔が見える空間で、自由にご発表・ご発言いただきたい」と趣旨を述べ、会がスタートしました。


宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)

宮武智弘 研究部長(本学先端理工学部・教授)


研究交流会の様子

研究交流会の様子

当日は    11センターの代表者が、各センターの設立経緯や目的、活動状況、そして研究成果や本学の共同研究へ還元しうる知見について報告しました。
※本レポートでは、主に活動から得られた知見について、キーワードと共に一部抜粋して紹介します。設立経緯や活動状況の詳細は、各研究センターのHPを参照ください。

古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター(DARC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:三谷真澄(DARCセンター長/国際学部・教授)/曽我麻佐子(DARC副センター長/先端理工学部・准教授)
◎報告キーワード:アーカイブ・学際研究・国際連携・多面的展開
DARCは、本学の建学の精神に基づいて収集した古典籍・文化財の資産を有効活用し、超臨場感技術等の最先端の手法を用いて、学術資料の多面的公開のためのデジタルアーカイブの形成を目的としています。
はじめに報告に立った三谷教授は、DARCの概要について、「学際研究・国際連携・多面的展開」のキーワードを用いて紹介。現在は、理工系の「公開手法研究」・「アーカイブ研究」と、人文系の「コンテンツ研究」の2つの研究ユニットを組織し、龍谷ミュージアム・准教授もプロジェクトに参画していること、また、現在龍谷ミュージアムで開催中の春季特別展『真宗と聖徳太子』においてDARCの研究の一端が公開される予定であることを報告しました。
次いで報告に立った曽我准教授は、人間総研の2021年度紀要に寄稿した「デジタル技法を用いた展観手法構築への挑戦」について紹介。MR空間を活用した画像閲覧システムをはじめ、舎利容器のデジタルコンテンツとして3D仮想試着やAR舎利容器、太子像のVR化など、新しい展観技法の可能性への期待が高まる内容でした。


左:三谷真澄(DARCセンター長/国際学部・教授)右:曽我麻佐子(DARC副センター長/先端理工学部・准教授)

左:三谷真澄(DARCセンター長/国際学部・教授)右:曽我麻佐子(DARC副センター長/先端理工学部・准教授)


曽我准教授の報告資料より(3D仮想試着)

曽我准教授の報告資料より(3D仮想試着)

地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:石原凌河(LORC兼任研究員/政策学部・准教授)
◎報告キーワード:理論と実践・地域再生政策
LORCは、2003年の設立から18年にわたり、世界的視野から地域課題をとらえ、市民・企業・自治体など多様な主体と連携し、研究と現場の互恵的な還流による持続可能な公共政策の理論・実践のモデルを構築・提示してきました。
センター長代理として報告に立った石原准教授は、「LORC第6期となる現在の研究事業の目的は、ポスト・コロナ期の地域社会における“住み続けられるまちづくり”、すなわち多様な主体の連携による人間の福利、社会的・環境的持続性、包摂的かつレジリエントな地域再生政策の再構築に寄与する理論形成と実践プロジェクトの展開である。」と述べ、同じ研究テーマのもとで多様な領域の研究者が集い、研究成果を発信していることを報告しました。
2022年度の活動の一例として「龍谷大学学生気候会議」を挙げ、ディスカッションのための話題提供やグループワークの実施にあたっての会議デザインをLORC研究メンバーがサポートしたことを紹介。今後は、同会議のアウトプットをまとめて提言書として大学に提出予定であること、「大学の気候ガバナンス」のあり方そのものを研究対象として検討する可能性があることなどを述べ、報告を終えました。
【→関連News】2022.12.21 龍谷大学学生気候会議が開催されました


石原凌河(LORC兼任研究員/政策学部・准教授)

石原凌河(LORC兼任研究員/政策学部・准教授)


2022龍谷大学学生気候会議の実施風景

2022龍谷大学学生気候会議の実施風景

里山学研究センター(RCSS)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:村澤真保呂(RCSSセンター長/社会学部・教授)
◎報告キーワード:国際的学術課題・自然共生型社会・生物多様性
RCSSは、瀬田キャンパスに隣接する「龍谷の森」とその周辺をフィールドとして、里山保全活動を介した環境教育の実践と地域自然共生モデルの構築を目指して、2004年に「里山オープン・リサーチ・センター」として開設されて以来、その研究対象を地域の里山から琵琶湖を中心とする地域市民社会へと広げ、現在ではグローバルな自然共生型社会の実現に向けた文理融合型の研究機関として活動しています。
村澤教授は、「RCSSの研究対象は人間の手が入った自然環境である“二次的自然”だ。人間と自然の持続可能性が危機にある現在、里山に代表される“二次的自然”の問題は、私たち人間と自然との関係を問い直し、新たな関係を結び直すことを要求しているのではないか。」と述べ、この30年間の国内外の里山研究をめぐる状況の変化を説明しました。
とりわけ、2018年のIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)の方針転換によって、自然と文化の多様性が評価されるようになったことから、「人間中心主義から脱・人間中心主義へと変化したことを受け、学術的な捉え直しが必要になっている」と現況を説明し、「生物多様性問題をめぐる共同研究など、本学の学術分野が相互浸透する横のつながりや協働の可能性を探りたい。」と述べ、報告を終えました。
【→関連News】2023.03.17 2022年度 里山学研究センター年次報告書 刊行


村澤真保呂(RCSSセンター長/社会学部・教授)

村澤真保呂(RCSSセンター長/社会学部・教授)


村澤教授 報告資料より「里山研究をめぐる状況の変化」

村澤教授 報告資料より「里山研究をめぐる状況の変化」

グローバルアフェアーズ研究センター(GARC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:陳慶昌(GARCセンター長/国際学部・教授)
◎報告キーワード:国際関係・国際共同研究・国際ジャーナル
紛争問題の解決やその先を研究するGARCは、国際的な研究協力を通じて既存の学問の範囲を超えた学際的な洞察を加え、グローバルな問題に取り組むことを目的に掲げています。コロナ状況下においても、2021年度よりほぼ毎月オンラインのセミナーを開催し、国内外の研究者との交流・関係強化を継続してきました。また、国際ジャーナルへの論文投稿や独自のワーキングペーパーシリーズの刊行、海外の著名な研究者に引用される出版物の発行など、社会科学・人文科学における龍谷大学の研究の認知度を高めることを意識して、積極的に研究成果を発表してきました。
その一例として、陳教授が研究代表を務める科研費・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))のプロジェクト「Reconciliation: Treating Asia’s Border Traumas with Traditional Medical Analogy」について紹介しました。陳教授は「この研究プロジェクトは、東アジアの医学的知見に基づき、長期にわたる地域紛争を政治的な病気として治療しようとするものだ。この東洋医学の思想を政治学に転換した“ポリティカル・ヒーリング”によって、紛争を長期化させている従来の国家中心の国際関係研究のパラダイムを転換することを目指している。」と説明。仏教学などさまざまな研究者と学際的にコラボレーションすることで、“ポリティカル・ヒーリング”の研究に新たな響きをもたらそうとしていることが共有されました。
【→関連Interview】Academic Doors「東洋医学の思想をメタファーとして、紛争解決への新たなアプローチを提案する。」


陳慶昌(GARCセンター長/国際学部・教授)

陳慶昌(GARCセンター長/国際学部・教授)


陳教授 報告風景

陳教授 報告風景

革新的材料・プロセス研究センター
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:富﨑欣也(革新的材料・プロセス研究センター長/先端理工学部・教授)
◎報告キーワード:循環型社会・研究シーズ公開・技術移転
2006年度開設の革新的材料・プロセス研究センターは、「つかう」視点にたった「ものづくり」に取り組み、私たちのこれからの未来に、省エネルギー・省資源という観点から材料を創出する革新的な設計と製造プロセスを構築する研究を行うと同時に、持続可能な循環型社会に「もどす」視点にたったリユースプロセスの研究にも力を入れています。
富﨑教授は、過去25年間の材料学研究の実績を概観し、現在は「ひと、もの、環境の調和」に立脚した材料研究を展開していることを紹介。プロジェクト参画メンバーは、応用化学をはじめ、機械工学や電子工学、環境生態工学、農芸化学など多領域に渡りますが、①「つかう」視点のものづくり(省エネルギー・省資源)と②「もどす」視点のものづくり(リサイクル・リユース)の共通テーマに基づき、多様な研究活動を展開しています。
その一例として、2022年度に龍谷エクステンションセンターと共催した「REC BIZ-NET研究会」を挙げ、産業界への研究シーズ公開および技術移転を指向してきたことを報告しました。
【→関連News】2022.10.06 2022年度 第3回REC BIZ-NET研究会「3つのシーズから学ぶ『新しい有機機能材料とその可能性』」を開催
【→関連News】2022.11.25 理工学研究科・院生を筆頭著者とする論文が国際ジャーナルに掲載!快挙の裏側に迫る


富﨑欣也(革新的材料・プロセス研究センター長/先端理工学部・教授)

富﨑欣也(革新的材料・プロセス研究センター長/先端理工学部・教授)


富﨑教授 報告資料より

富﨑教授 報告資料より

犯罪学研究センター(CrimRC)
→センターHP】【→研究メンバー
◎報告者:津島 昌弘(CrimRCセンター長/社会学部・教授)
◎報告キーワード:犯罪学教育・国際的連携・地域連携
「犯罪学」(英:Criminology)とは、犯罪にかかわる事項を科学的に解明し、犯罪対策に資することを目的とする学問です。CrimRCは、2016年6月に発足し、同年11月に文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」に採択されました(同事業は2021年度を以て終了)。これまで建学の精神を具現化する事業として、犯罪予防と対人支援を基軸とする龍谷大学ならではの犯罪学の創生に向けた研究と社会実装活動を展開してきました。
津島教授は報告の冒頭、設立趣旨と諸活動について、ポスターセッション出展時の映像をもとに紹介しました。そして、2022年度からは新たな体制で、“戦争犯罪”や“再審”、“デジタル・フォレンジック”など近時のテーマに関わる研究会を公開スタイルで年間32回実施するなど、常に発信し続けてきたことを報告。また、本学正課科目や法務省関連事業などで犯罪学教育に尽力したほか、寝屋川市や京都府との協定に基づいた地域連携型の研究活動も展開。津島教授は「こうした諸活動を通じて、研究目的でCrimRCに訪問・滞在する研究者が増加しており、海外での認知度は高くなっている。また、CrimRC所属の複数の研究者が海外の研究機関に招聘され、講演を行った。今後も研究成果をひろく国外に発信していくため、国際学術雑誌への投稿・掲載と合わせてHP(英語版)の拡充に務めたい。」と述べ、報告を終えました。
【→関連News】2023.03.29 犯罪学研究センターの取り組み・オンライン公開研究会「戦争と犯罪」が「龍谷ICT教育賞」を受賞


津島 昌弘(CrimRCセンター長/社会学部・教授)

津島 昌弘(CrimRCセンター長/社会学部・教授)


津島教授 報告資料より

津島教授 報告資料より