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浜井 浩一 本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長

浜井 浩一 本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長


浜井 浩一(はまい こういち)
本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長
<プロフィール>
法務省時代に矯正機関などで勤務。法務総合研究所や国際連合地域間犯罪司法研究所の研究員も務め、国内外の犯罪や刑事政策に精通。犯罪統計や科学的根拠に基づいて犯罪学を研究中。

必要なのは、科学的根拠に基づく議論
私が犯罪学や犯罪に関する議論、政策決定などに科学的根拠の必要性を感じたのは、統計から見る犯罪像と、現場で見た犯罪者や刑罰のあり方にズレがあると感じたことがきっかけです。以前、犯罪白書を作ったり、刑事政策に関する研究を行ったりする研究所から、現場である刑務所に異動した際、刑務所は満員で拘置所に確定受刑者が滞留している状況でした。受刑者は認知症の高齢者や障害者が多く、懲罰刑としての労働ができないうえ、出所後の受け皿も少なく、再犯率も高い。そのような状態で果たして犯罪者への懲罰や厳罰化に効果があるのか、そもそもなぜこの状況が生まれたのか、と疑問に思ったことが研究の出発点でした。日本の刑事法学は縦割りかつタコつぼ型で、受刑者である人物がどんな人でなぜ犯罪をしたのか、刑務所に入れたらどうなるのかという一連の流れを考える人が少なく、研究している人もいないのが現状です。
私の専門は犯罪統計学で、犯罪白書を編集したり、刑務所等の現場も経験したりしているため、“検挙率の増加”が“日本の治安の悪化”を意味しているわけではなく、統計の取り方であることに研究初期から気付いていました。統計を科学的に見ず、根拠のない「べき論」のまま犯罪対策や日本の刑事政策を論じていては、間違った方向に進みかねません。そこで、キャンベル共同計画日本代表の静岡県立大学の津富宏さんと協力して、科学的統計や根拠に基づき、刑罰や刑事司法の機能を議論するために必要なエビデンスのレビューを有する「キャンベル共同計画(Campbell Collaboration )」*プロジェクトのレビューを日本語に翻訳・分析する活動を本格的に進めることにしました。

キャンベル共同計画(Campbell Collaboration)とは
国際プロジェクト「キャンベル共同計画(Campbell Collaboration)」は、研究テーマに基づいて世界各国で同じ手法、同じ基準で実験を行ない、そこから得たデータをメタ分析して、エビデンス(科学的根拠)の系統的レビューを発表しています。このレビューはホームページで見ることができ、教育や刑事司法、犯罪、社会福祉の分野で最善のエビデンスを知りたい人のニーズに応えるように考えられています。そして、新たなエビデンスが現れれば速やかに更新・修正もなされます。現在、ホームページのレビューは英語での科学的論文と、そのエッセンスを表した2種があり、主に日本に伝える必要があるエッセンスを厳選し、日本語に翻訳していく予定です。
日本では法学者や法律関係者などの有識者が、科学的・統計的なエビデンスに基づいた議論をほとんどしていません。レビューを共有できるこのプロジェクトの存在と意義を理解してもらい、良質なエビデンスが政策評価や決定者に届くようにしたいと思っています。
【>>Link:犯罪学研究センター>キャンベル計画】

経験と強みを生かして犯罪学を科学的にとらえる
私の強みは、法務省時代の経験から少年、成人すべての処遇現場を知っていること。そして、統計を作る現場を知っていること。さらに「犯罪白書」を作った経験から、現場で作られた統計をすべて集めて分析できることではないでしょうか。かつて各国から統計を集めて分析する国連機関にも出向していたので、日本の刑事政策が世界からどう見えているのか、日本の犯罪をとりまく状況を俯瞰的に捉えることもできます。
欧米諸国とは異なり、日本には犯罪学部が存在しないため、犯罪学の議論や政策決定に有用なデータが何を意味しているか、そのデータの作られ方や数字の持つ意味を分析できる人が少ないのが現状です。統計学の見地から犯罪を科学的に検証し、議論するためのベースを作っていくことで、当センターが日本の犯罪学研究の拠点となり、同時に世界のカウンターパートとなる場所にしたいと思います。



中根 真 本学短期大学部 こども教育学科教授、犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長

中根 真 本学短期大学部 こども教育学科教授、犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長


中根 真(なかね まこと)
本学短期大学部 こども教育学科教授、犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長
<プロフィール>
社会福祉学を研究。子ども家庭福祉や保育、地域福祉の研究のほか、大正期の大阪の福祉教育、出征軍人児童保管所の歴史などから保育を考察する論文等を執筆。

非行予防の観点で保育を考える
最近10年は保育に特化した研究を進めています。社会福祉学では子ども家庭福祉の研究において社会的養護を取り上げることは多いのですが、保育を取り上げることは意外に少ないのが現状です。私は保育園や幼稚園、認定こども園の保育室内の様子よりも、むしろ降園後にどのような家庭や地域社会の中で子どもたちが過ごしているかに着目し、地域福祉の観点で保育を研究しています。
昨今では「働く女性の子どもの受け皿を増やす」ために保育所の整備が喫緊の課題となっています。しかし、問題は保育所の数だけではありません。家庭格差から生じる子どもたちの成長や発達の格差を保育所等が親とは違った形で関わり補う必要があるのに、そのことが議論から抜け落ちているという点が問題だと考えています。
幼児期の親のしつけや教育的配慮・関心の不足、格差が成長にも影響した結果、信頼関係にもとづく良好な人間関係の形成につまずき、非行に走る子どもがいるならば、そこには本人の努力だけではどうしようもできない家庭や社会環境の制約があったのではないでしょうか。本学の犯罪学研究センターや矯正・保護総合センターでは「更生」や「社会復帰支援」に重きを置いていますが、私は非行や犯罪に至る前の「予防」もまた重要であると問題提起をしたいと思っています。そこで、予防研究の第1段階として幼児期に注目し、どのような保育が必要なのか、歴史的考察を通して考えていきます。

子どもを通して家庭を見ていた過去の保育者たち
私が現在進めているのは、大正2年から大阪市内9ヶ所に保育所を開設した「財団法人弘済会」の史料研究です。大正期も今と同じく保育所に子どもを預けて両親ともに働き、生活を安定させようとした家庭が多くありました。弘済会は子どもを預かるだけでなく、「子どもに与える駄賃は子どもの教育のために貯金を」と親に指導するなど、子どもの育ちのために親は何ができるのかを伝えていたのです。具体的には2ヶ月に1回、各保育所で家庭会が開催され、子どものしつけのよろず相談、健康相談などに幅広く対応しながら、家庭内の悪習慣の是正や改善を促していました。つまり、保育者が子どもを通して家庭全体を見て、生活を指導するという状況があったのです。
また、神戸では日露戦争中に夫の出征に伴い、働かなければならない母親のための出征軍人児童保管所が設けられ(1904年)、日露戦争後も戦役紀念保育会として保育事業が継続されました。「母子家庭は時間的に育児が放任されがちであるため、非行に繋がるかもしれない。非行予防の観点からも児童保管所や保育所は必要だ」と考えられていたようです。すなわち、当時から親の就労等の事情によって、家庭教育が十分行えない場合、保育所の保育で代替・補完しようとする意識があったわけです。このように過去の時代と現代の保育状況を慎重に比較対照させながら、保育事業が果たす非行予防の機能・役割について研究を進めていきます。

幼少期の教育が重要であるという経済学の知見
幼少期の重要性を認める経済学の知見があります。ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授は「恵まれない家庭に育ってきた子どもたちの経済状態や生活の質を高めるには、幼少期の教育が重要である」と主張しています。彼が研究で主に用いたのは1960年代アメリカで実施されたペリー就学前プロジェクトの実験結果です。具体的には、経済的に恵まれない家庭の3~4歳の子どもを無作為に選び、就学前に教育を受けた子どもと受けなかった子どもを40歳まで追跡調査したところ、就学前に教育を受けた子どもは受けなかった子どもより学力検査の結果や学歴が高く、生活保護受給率や逮捕者率が低いという結果が出ました。
つまり、就学前の教育がやる気、忍耐力、協調性といった社会的・情動的性質を現す「非認知スキル」を高め、成人後もその効果が継続したと考えられ、保育や保育者の果たす役割は、子どもの成長だけでなく、経済的・社会的にも好影響を与えるということを明らかにしました(J.ヘックマン=古草秀子訳『幼児の教育経済学』東洋経済新報社、2015年)。
このような研究の裏付けもふまえ、幼少期への社会的介入のあり方、そのための仕組みをどうつくるかも考えていきたいと思っています。



斎藤 司 本学法学部教授、犯罪学研究センター「性犯罪」ユニット長

斎藤 司 本学法学部教授、犯罪学研究センター「性犯罪」ユニット長


斎藤 司(さいとう つかさ)
本学法学部教授、犯罪学研究センター「性犯罪」ユニット長
<プロフィール>
大学では刑事訴訟法を研究。『校正な刑事手続と証拠開示請求権』(2015年 法律文化社)の著作のほか、『法学セミナー』(日本評論社)にて「刑事訴訟法の思考プロセス」を連載。

法改正に伴う影響とは
平成29年7月に強姦罪・準強姦罪など性犯罪に関する刑法の諸規定が110年ぶりに改正されました。これらの改正が、今後性犯罪に関する刑事手続における運用や犯罪者処遇にどのように影響するのか研究を進めたいと思っています。普段の学部等での講義でも性犯罪に触れざるを得ないのですが、学生からは「あまり触れないでほしい」「聞くのも嫌だ」という反応が増えているように感じます。そのような反応をみて、性犯罪をどう扱うべきなのかと思ったのも研究のきっかけのひとつです。性犯罪は身近に起こりうることで、考えなければいけない問題です。性犯罪だけでなく痴漢などもテーマになりえます。今回の法改正で大きく変わったことの1つは、性犯罪を行う主体が男性に限定されなくなったという点です。男性から女性、女性から男性、さらに踏み込めるかは分かりませんがLGBTなども含め、まずは時代ごとに変遷している「性犯罪」「性犯罪者」のイメージをつかむことから研究を進めていきます。

歴史や国際比較で将来を予測
研究を通じて、法律を含めた社会において性犯罪や性犯罪者がどのように捉えられていたかという社会意識の変遷、日本と同じく最近性犯罪の法改正が行われているドイツや北欧諸国の現状などを調べて国際比較にも踏み込みたいと思っています。台湾や韓国は、日本の戦前の法律をモデルとして発展している点で日本と同じですが、現状は異なります。その理由を検討することは、性犯罪者や性犯罪者像に関する日本の特徴、今後の対応策の手がかりを明らかにすることにつながるでしょう。以上のような問題意識で歴史研究や国際比較することで、日本の性犯罪規定や性犯罪者処遇のあり方を考える手がかりにしようと考えています。
犯罪とは個人の「権利(法益)を侵害」する行為です。一例ですが、昔は既婚女性を強姦した場合、「本人の権利の侵害」ではなく「夫の権利の侵害」であるという考え方でした。現在は、その考え方は変わり「個人の性的自由」の権利を侵害すると理解されています。刑法との関係でも、性犯罪のイメージは変わっており、それに伴い性犯罪者のイメージも変わってきていると考えられます。もっとも、時代とともに変わる性犯罪像は、今までそれほど深く研究されていません。この点についても、社会意識の変遷、国際比較を研究することで、今後どうすべきかの予測もできるのではないでしょうか。

性犯罪の処罰像と法律のズレを見極める
法改正がほとんどなかった刑事訴訟法が改正されたり、裁判員制度が施行されたりするなど、10数年前には予測できなかった動きが日本では起きています。今回の改正では、性犯罪の悪質さや重大さに比較して法定刑の下限が低いという意見が反映され、以前は3年だった懲役刑が5年へと厳罰化されました。このように社会が性犯罪者に対し求める処罰と、実際の法律にズレはないのか検討することも本研究テーマのひとつです。そして、性犯罪や性犯罪者像を明確にした上で、将来的には、性犯罪者の処罰だけでなく、性犯罪の再発防止のためにどう支援するのがベストかといった点についても考えなければならないと思っています。



石塚 伸一 本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長

石塚 伸一 本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長


石塚 伸一(いしづか しんいち)
本学法学部教授、犯罪学研究センター センター長・「治療法学」「法教育・法情報」ユニット長
<プロフィール>
犯罪学研究センターのセンター長を務めるほか、物質依存、暴力依存からの回復を望む人がゆるやかに繋がるネットワーク“えんたく”(アディクション円卓会議)プロジェクトのリーダーも務める。犯罪研究や支援・立ち直りに関するプロジェクトに日々奔走。

「犯罪学」の面白さを広くアピール
私が犯罪学研究センターを立ち上げた経緯は、犯罪学を科学的な学問としてまじめに研究をしている先生方とのネットワークの拠点を作ることで、犯罪学という学問領域を日本でも認知してほしいとの思いがあったからです。
龍谷大学には矯正・保護総合センターがあり、日本の矯正保護や刑事政策の研究に貢献しています。当センターも同様に、人間科学、社会科学、自然科学の分野でバランスよく「知」を融合した研究で貢献し、かつ「犯罪学って面白い!」と興味を持ってもらえる学問となることを目標としています。
罪を犯さざるをえなかった社会背景や成り立ち、国家のあり方を考えることで、世界情勢にも思いを馳せる――。犯罪をつぶさに見つめると、人と世界がいかに密接につながっているかに気づくはずです。そう考えると、犯罪学はあらゆる方向からアプローチできる面白い学問だと思いませんか?
各メンバーが調査や研究成果を踏まえて教育や人材育成、政策提言としてアウトプットしていくことも当センターの目標ですが、犯罪学の面白さを学生や一般の方に広く知ってもらうことも大きな目標のひとつです。犯罪学を学ぶことで扇情的な犯罪ニュースに惑わされない、犯罪学リテラシーを培って欲しいですね。

犯罪者一人ひとりを支える支援活動
私自身の研究は「治療法学」で、主に薬物問題を取り上げ、日本の薬物問題に適合する薬物政策を構築することです。以前の日本は薬物の乱用者・所持者に長期の拘禁刑を科す厳罰主義政策でしたが、近年は再犯防止対策として行政や民間が連携し、社会回復を支援する方向になっています。しかし、“薬物使用者“や“知的障害者”、“高齢者”など一律的にカテゴライズした法律で支援するだけでは、結局自立をさまたげることになります。
必要なのは「その人が何をやりたいか」を理解し、その人らしく生きていくための支援です。犯罪という石につまずき転んでしまっても、次は転ばないように本人も努力し、そこからまた人生を歩き出せるよう、周囲の人間や社会が支えていく。イソップ寓話の『アリとキリギリス』で例えるなら、アリだけが正しい生き方だとするのではなく、アリにはアリの、キリギリスにはキリギリスの生き方があるという考えのもと、それぞれの人生を尊重することが大切だと思います。このような方針で研究や支援活動を通じて犯罪者に寄り添い、オンリーワンの生き方を保障する政策提言や支援活動を今後も継続していくつもりです。

「龍谷・犯罪学」を世界に発信
日本においてはまだ認知度が高いとはいえない犯罪学ですが、本学が掲げる「すべての存在は“縁”によって存在する」という「共生(ともいき)」の仏教精神、ありのままの姿を認めることから始まる親鸞聖人の人間観が根底にある本学ならではの犯罪学を日本や世界に発信していくことが目標です。
世界的に見れば日本は犯罪発生件数が非常に少ない国ですが、今の段階ではその理由ははっきりと分かっていません。この理由を解明することで他の国の犯罪減少に役立つ可能性もあるので、ぜひ国際的にも役立つ研究に育てていきたいと考えています。



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