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理工学部 物質化学科 内田欣吾 教授が光照射で超親水性表面を作成できるシステムを開発

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2016年6月6日

理工学部物質化学科の 内田欣吾 研究室は、光を照射すると色を可逆的に変える「フォトクロミック化合物」を改良して、光照射で可逆的に超親水性表面を作成できるシステムを開発しました。
内田研究室では、20年余りにわたってジアリールエテンと呼ばれるフォトクロミック化合物を用いた研究をおこなってきました。この化合物は、無色の開環体と呼ばれる状態に紫外光を照射すると分子中心部が閉環し、着色した閉環体を与えます。これに可視光を照射すると元の開環体を再生します。
今回、作製に成功した「超親水性表面」は、カタツムリの殻に見られるセルフクリーニングという性質をもち、水滴が表面に付くや否や広がり、水滴の接触角は0°となります。このような表面は、付着した油汚れと表面の間に水が入り込み、汚れが自発的に流れていきます。この性質をもつ材料は、最近では家屋の壁材等に普及しています。今回、光応答材料であるジアリールエテン化合物を用いて、そのような超親水性材料に光応答性をもたせることに成功しました。また、超親水性表面では培養細胞が剥がれ落ちることから、光で細胞を剥離する細胞シートへの応用も期待できます。光印刷などの用途への応用が期待できます。
内田研究室では、これまでにハスの葉のように水滴の接触角が150°以上になり、水を転がす性質をもつロータス効果を示す光応答膜を報告してきました。今回は、これと対をなす光応答性「超親水性表面」を作成し、光で変化する表面機能のバリエーションを増やしました。このような表面形状を可逆的に変えて表面の濡れ性を変える光応答材料についての研究について紹介します。
なお、本研究成果は、2016年4月12日発行の英国ジャーナル「Chemical Communications」に掲載されバックカバーピクチャーにも採用されました。


■発表論文について
英文タイトル:Photoinduced reversible formation of a superhydrophilic surface by crystal growth of diarylethene
和訳:ジアリールエテンの結晶成長により光照射で可逆的に生成する超親水性表面
掲載誌:Chemical Communications
著者:内田 欣吾 他7名

以上

問い合わせ先:龍谷大学学長室(広報) 田中 Tel 075-645-7882


<研究の背景>
光を照射すると色を可逆的に変える化合物をフォトクロミック化合物という。従来、フォトクロミック化合物は、一つの分子が色の異なる二つの状態を取りえるため、分子レベルの記録媒体として注目され、研究が活発に行われてきた。内田研究室では、ここ20年余りにわたってジアリールエテンと呼ばれるフォトクロミック化合物を用いた研究を行ってきた。この化合物は、無色の開環体と呼ばれる状態に紫外光を照射すると分子中心部が閉環し、着色した閉環体を与える。これに可視光を照射すると元の開環体を再生する。この化合物の特徴は、開環体と閉環体という二つの状態が共に安定であること、さらにフォトクロミズムを何回も繰り返せること、更に結晶状態でもフォトクロミズムができることである。内田研究室では2006年に、開環体の結晶表面に紫外光を照射すると表面に閉環体の針状結晶が成長し、表面が超撥水性になることを報告した。超撥水性とは、そこに落とした水滴の接触角が150°以上になり、ハスの葉の様に水を転がす性質である。その性質とは逆に、カタツムリの殻には超親水性という性質がある。これは、水滴が表面に付くや否や表面に広がる性質であり、前述の水滴の接触角は0°となる。このような表面では、油汚れと表面の間に水が入り込み、汚れを洗い落とすためセルフクリーニング機能をもつとされ、最近ではこの機能をもつ家屋の壁材などが普及している。今回、我々は光照射で可逆的に超親水表面を作成できるシステムの作成に成功した。


<研究の結果>
有機系の分子材料で超親水性を発現させる時の問題点は、水との親和性が増すと同時に接触面積が大きくなるため、水に溶解し易くなる欠点があった。水との親和性が高いにもかかわらず、水に溶解しない特性をもたせるため、ジアリールエテン分子の両側に有機イオン性液体の構造を導入し、置換位置や、対イオンを選択することにより目的の性能をもつ化合物に到達した。この膜の表面は最初、開環体であるが、紫外光を照射すると表面に閉環体の割合が増加し、表面は平らになる。この時の水滴の接触角は60°である。これに可視光を照射後、ジアリールエテンの結晶成長を促すよう暗所下70℃に一日保存すると表面が凸凹構造となり超親水性が発現する。この時の表面粗さは平面の約2倍で、これはカタツムリの殻の表面粗さと同じで理論式と一致する。これに紫外光を照射すると、表面は平らな膜へと変化し接触角は60°に戻る。この表面形状変化と濡れ性の変化は繰り返される。


<研究の意義と今後の展開>
超親水性材料は、酸化チタンを使って実用化されている。しかし、有機分子が集合状態を変えて表面形状を変化させることにより誘起される可逆的な超親水性発現は世界初である。
分子そのものの光応答は10ピコ秒であるが、それに続く結晶成長、分子の集合化に時間がかかっている。応答速度を早くすることや、安定した動作特性の向上など課題は多い。しかし、分子の集合形態を変えて表面の超親水性を制御するシステムは全く新しく、分子構造の更なる改良は必要だが、光印刷や、細胞吸脱着の光制御など幾つかの分野への応用が期待される。


<参考図>
図 左:超親水性を示す時の表面の電子顕微鏡写真(水滴の接触角は0°)、右:平らになった時の表面の電子顕微鏡写真(水滴の接触角は60°)。



<発表論文>
Photoinduced Reversible Formation of a Superhydrophilic Surface by Crystal Growth of Diarylethene

K. Takase, K. Hyodo, M. Morimoto, Y. Kojima, H. Mayama, S. Yokojima, S. Nakamura, K. Uchida
Chemical Communications, 2016, 52 (42), 6885-6887. (Selected as a Back Cover Picture)
DOI: 10.1039/C6CC01638C


<研究に関する問い合わせ先>
520-2194 大津市瀬田大江町横谷1-5
龍谷大学理工学部・教授 内田欣吾
Tel: 077-543-7462 / Mail: uchida@rins.ryukoku.ac.jp

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