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Ryukoku Strategic Plan 400

龍谷大学基本構想400

学生が光り輝く大学へ

いま大学を取り巻く状況は厳しく、日本の高等教育は大きな転換点をむかえています。龍谷大学はこれからどのような道を歩むべきか、しっかりとした将来ビジョンが必要です。

龍谷大学学歌に「吾等が学府 光輝あれ」という歌詞が出てきます。大学の光輝、その光源はなんといっても学生です。活力が満ち魅力溢れる大学というのは学生が光り輝く大学のことです。「龍谷大学に入学して本当によかった」と在学生および卒業生に実感してもらえる大学になることが急務です。

いまや在学生の輝きは高校生を惹きつけます。本学オープンキャンパスにおける学生スタッフの評判は高く、受験生の志望動機に大きな影響を与えています。近年はまた、社会貢献に関心を示す学生が増えており、学生の活動は地域や行政から注目を浴びています。一方で、悩みや生きづらさを抱えている学生に寄り添うことが課題となっています。すべての学生が光り輝くために必要なもの、それが教育です。

周知の通り、本学は「浄土真宗の精神」を建学の精神とする大学です。建学の精神を基盤に据えた教育・研究、ここにこそ龍谷大学の大きな特徴があります。

建学の精神である「浄土真宗の精神」とは「生きとし生けるもの全てを、迷いから悟りへと転換させたいという阿弥陀仏の誓願」のことです。阿弥陀仏の誓願に出遇われ、真実の教えを開顕し真実の道を歩まれたのが親鸞聖人です。「浄土真宗の精神」とは親鸞聖人の精神に他なりません。親鸞聖人の生き方に学び、「真実を求め、真実に生き、真実を顕かにする」という人間を育成することが本学の教育理念・目的です。

本学の学生が建学の精神を通して、人間の究極的価値はいずこにあるかを問い、自己を見つめなおし、豊かな生き方を考える場を提供するのが龍谷大学です。その意味で、本学に入学した学生一人ひとりには「人生の扉」が用意されています。

龍谷大学の建学の精神は「すべてのいのちを尊ぶ」という地平に学生を誘います。そこでは人々のもつ様々な価値観に対して寛容であるという姿勢を培います。「多様性」を尊重する、このことも龍谷大学の大きな特質です。

龍谷大学は総合大学として発展を遂げてきました。先人たちの努力の賜物です。380年という時間の中で醸成されてきた「校風」はわが国の公教育にあって独特な彩りを具えるものとなっています。「龍谷大学の建学の精神」に根差した教育理念・目的のもと、各学部において3ポリシーに基づく教学マネジメントが遂行されています。そして本学は課外教育にも力を入れており、スポーツ・文化活動・ボランティア活動などを通して、学生が主体性・協働性を養っています。さらには大学が今以上に、学生の保護者や卒業生、行政、産業界と信頼関係を築き、共に次世代を育成していくという気運を醸成していく必要があります。この度の「龍谷大学基本構想400」(以下、「構想400」という)においては、正課・課外を通じ学生が身につける素養として「育むべき力とマインド」を提示しています。

学生は多様化してきています。「多様性」を尊重する龍谷大学であればこそ、学生が主体的に学ぶ意欲を、大学をあげて引き出さねばなりません。本学の教職員も多様です。価値観の違いを認めつつ互いに学び合いながら、大学全体の質向上に向け努力している姿は学生に大きな感化を及ぼします。「構想400」を策定するにあたり、改めて本学すべての構成員の多様性を尊重することを誓い、個人の尊厳、思想、信条、学問の自由、基本的人権を守り続ける大学であることを目指します。

「構想400」で基調としたのは創立380周年の基本コンセプトとして掲げた行動哲学「自省利他」です。利己的自己を絶えず見つめ、他者への思いやりを発動することは建学の精神への回路ともなり、自己変革の契機にもなります。建学の精神の学びを日常の大学生活の現場にいかに展開するかが私立大学の帰趨を決すると言っても過言ではありません。大学の将来計画を策定するにあたっても「自省利他」という考え方が求められると考えました。「自分たちは果たしてこのままでいいのか」「自分たちの考えは間違っているのではないのか」「自分たちに欠けているものは何なのか」と、このように自分たちの組織の在りようを省みて、学生の利益を最大限考慮しながら前に進んでいく。この「構想400」では4年毎の「見直し」「振り返り」が大きな鍵となっています。

地球的視野で現代社会を見つめるならば、あまりに多くの深刻な課題があることに気づきます。これからの学生はそうした課題を避けては通れません。課題の多くは人間の「自己中心性」に由来します。龍谷大学で学ぶ学生が人間のもつ「自己中心性」を凝視して、課題解決に向けて努力するならば大きな社会貢献に繋がっていくでしょう。まさしく「自省利他」の実践です。すでにその動きは「仏教SDGs」として顕在化しつつあります。

「構想400」で将来ビジョンとして「まごころ Magokoro ある市民を育む」を掲げました。龍谷大学の教育成果の表出とご理解いただきたいと思います。では、何故に「まごころ」か?よく知られた日本語「まごころ」は「他人のために尽くそうという純粋な気持ち」(『大辞林』)とあるように、まさしく「自省利他の心」を示す語であるのです。若年層に「自省利他」を浸透させるべく「まごころ」を、世界に向けては「Magokoro」を発信していきたいと考えます。

Magokoroのような広く高い心をもった人は、距離的、文化的に遠く離れた、宗教も言葉も異なり、異なった歴史を持つ人々とも相互理解と友愛を育み、人々の幸福に尽くすことができるようになります。龍谷大学の教育は世界の平和に寄与する人の育成へと繫がっていくのです。

本学の根幹である建学の精神は未来永劫にわたって守り伝えていくべきものであり、世運の流れが遷ってもそれは変わりません。本学の学歌三番の歌詞に「世運の流れ遷るとも 正法萬古変わりなし 公孫樹の陰に法幢を まごころこめて守りゆく」とあるように、建学の精神(ここでは「正法」「法幢」の語で示される)を「まごころ」込めて次世代に守り伝えていかねばなりません。

龍谷大学で学んだ学生が自分の手で「未来への扉」を開き、「まごころある市民」となって巣立っていく。そして社会に出た彼らが在学生に強い影響を与えていく。そうした好循環で学生が光り輝き、「光輝ある大学」が創り上げられていくと確信しています。

龍谷大学 学長 入澤 崇