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本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長の田邊 公一教授と、本学農学部、奈良文化財研究所らの研究グループは、同じサイズの2種類の陶器容器(釉薬のかかった陶器と素焼きの陶器)を使用して小規模な日本酒の醸造を行い、釉薬が発酵特性に与える影響を評価しました。結果、素焼きの陶器で醸造された日本酒は、釉薬のかかった陶器と比較して、エタノールや特定の元素の濃度が高く、風味に影響を与える可能性が判明。本成果は、2023年12月29日に国際ジャーナル『Foods』にオンライン掲載されました。

【発表論文】
英文タイトル:Glazing Affects the Fermentation Process of Sake Brewed in Pottery
タイトル和訳:陶器で醸造された日本酒の発酵過程における釉薬の影響
著者名:田邊 公一1・2・林 穂乃花1・村上 夏希3・吉山 洋子1・島 純1・2・庄田 慎矢3・4
所 属:1 龍谷大学農学部 2 発酵醸造微生物リソース研究センター 3 奈良文化財研究所 4 ヨーク大学考古学部(英国)
掲載誌:Foods 2024, 13(1)(MDPI社)
URL:https://doi.org/10.3390/foods13010121 ※2023年12月29日Web公開済

詳細は、こちらのプレスリリースを参照してください。


実験に使用した陶器容器の外観(写真左:釉薬、写真右:素焼き)

実験に使用した陶器容器の外観(写真左:釉薬、写真右:素焼き)


田邊 公一教授(本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長)

田邊 公一教授(本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長)

今回の研究成果に関して、田邊 公一教授(本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター長)のコメントを紹介します。

 これまでに酵母株、米、水、または温度管理など、日本酒醸造において直接的に関連する要因が調査されてきましたが、もろみ容器の影響は徹底的に調査されていませんでした。本研究では、釉薬が陶器で醸造された日本酒の発酵特性や味覚に影響を与えることを発見しました。この結果は、現代の日本酒醸造で多く使用されるホーロータンク(鉄製の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたもの)であっても、容器の表面が発酵特性に影響を与える可能性があることを示唆しています。
 最近、一部の日本酒蔵では、伝統的な手法を守りながら、独自の風味を持つ日本酒を製造するために、もろみ容器として陶器を使用し始めています。本研究の結果は、古代と現代の技術をつなぎ、日本酒醸造に新しい洞察を提供しています。
 今後の展開としては、今回の結果をふまえ、さらに清酒もろみを発酵させる容器の素材を調べていきたいと考えています。容器の保温性、透湿性、揮発性を既存の容器のものと変化させることで、発酵速度を調節したり、新たな風味をもつ清酒製造も可能になるかもしれません。


【本件のポイント】

  • 素焼きの陶器で醸造された日本酒は、釉薬①)のかかった陶器と比較して、エタノールや特定の元素の濃度が高く、風味に影響を与える可能性が判明。
  • 日本酒の発酵過程における容器の影響は従来考えられていたよりも重要であり、伝統的な手法と現代の技術を結ぶ新たな知見を提供。


【本件の概要】
 日本酒は、大きな醸造量を得るために木樽が採用される以前から、千年以上にわたり陶器で醸造されてきました。最近行われた陶器で醸造された日本酒の分析では、素焼き陶器で醸造された日本酒には、釉薬のかかった陶器で醸造されたものよりもエタノールが多く含まれていることが示されましたが、陶器で醸造された日本酒の特性についてはほとんど知られていません。
 本学農学部・発酵醸造微生物リソース研究センター②)長の田邊 公一教授と、本学農学部、奈良文化財研究所③)の研究者らのグループは、同じサイズの2種類の陶器容器(釉薬のかかった陶器と素焼きの陶器)を使用して小規模な日本酒の醸造を行い、釉薬が発酵特性に与える影響を評価しました。比較実験の結果、素焼きの陶器ではもろみの温度が低く、蒸発による重量減少が多く見られました。また、素焼きの陶器で醸造された日本酒のエタノール、Fe3+、およびCa2+の含有量は、釉薬のかかった陶器で醸造されたものよりも高い傾向がありました。味覚分析では、素焼きの陶器で醸造されたサンプルのうま味と塩味が高かったことが明らかになりました。これらのことから、日本酒醸造におけるもろみ容器が発酵特性に影響を与える可能性が考えられます。本成果は、2023年12月29日に国際ジャーナル『Foods』にオンライン掲載されました。



左)実験に使用した陶器容器の外観(写真左:釉薬、写真右:素焼き)
右)表1. 釉薬のかかった陶器(+Glaze)と素焼きの陶器(-Glaze)で醸造した日本酒サンプル中の元素組成。元素分析の結果では、素焼きの陶器サンプルには釉薬の陶器サンプルよりも1.5倍多くのNa+が検出されました。釉薬がかかっていない状態での長期発酵期間中に容器から元素が溶出する可能性が考えられます。


1.発表論文
英文タイトル:Glazing Affects the Fermentation Process of Sake Brewed in Pottery
タイトル和訳:陶器で醸造された日本酒の発酵過程における釉薬の影響
著者名:田邊 公一1・2・林 穂乃花1・村上 夏希3・吉山 洋子1・島 純 1・2・庄田 慎矢3・4
所 属:1龍谷大学農学部 2発酵醸造微生物リソース研究センター 3奈良文化財研究所 4ヨーク大学考古学部(英国)
掲載誌:Foods 2024, 13(1)(MDPI社)
URL:https://doi.org/10.3390/foods13010121 ※2023年12月29日Web公開済

2. 波及効果、今後の展開
 これまでに酵母株、米、水、または温度管理など、日本酒醸造において直接的に関連する要因が調査されてきましたが、もろみ容器の影響は徹底的に調査されていませんでした。本研究では、釉薬が陶器で醸造された日本酒の発酵特性や味覚に影響を与えることを発見しました。この結果は、現代の日本酒醸造で多く使用されるホーロータンク(鉄製の表面にガラス質の釉薬を焼き付けたもの)であっても、容器の表面が発酵特性に影響を与える可能性があることを示唆しています。
 最近、一部の日本酒蔵では、伝統的な手法を守りながら、独自の風味を持つ日本酒を製造するために、もろみ容器として陶器を使用し始めています。本研究の結果は、古代と現代の技術をつなぎ、日本酒醸造に新しい洞察を提供しています。
 今後の展開としては、今回の結果をふまえ、さらに清酒もろみを発酵させる容器の素材を調べていきたいと考えています。容器の保温性、透湿性、揮発性を既存の容器のものと変化させることで、発酵速度を調節したり、新たな風味をもつ清酒製造も可能になるかもしれません。

3.用語解説
①釉薬(ゆうやく)

釉薬(ゆうやく、英語:glaze)とは、素焼の陶磁器の表面に光沢を出し、また、液体の浸透を防ぐのに用いるガラス質の粉末で、焼成によってガラス質の層となる。「うわぐすり」とも言われる。

②龍谷大学 発酵醸造微生物リソース研究センター
滋賀県の発酵醸造産業を支援することを目指して2021年度に開設。発酵醸造に有用な微生物の収集とデータベースの構築、およびそれらを活用した応用研究の展開を目的として研究活動を展開している。

③独立行政法人 国立文化財機構 奈良文化財研究所
昭和27年(1952)に設立された奈良市所在の文化財調査研究機関。特別史跡平城宮跡や飛鳥・藤原宮跡の発掘調査をはじめ、文化財の保存・修復、整備・活用の研究など、文化財の学際的、総合的な調査研究を行なっている。また、これらの成果を生かし、国内外の文化財研究や学術交流、国際支援、地方公共団体の文化財担当職員や海外の研究者を対象とした研修、文化財情報の公開などを推進している。


問い合わせ先:龍谷大学 発酵醸造微生物リソース研究センター
Tel 075-645-2154  hakko-jimu@ad.ryukoku.ac.jp  https://hakko.ryukoku.ac.jp/


犯罪学研究センター法教育ユニットは、第2回法教育ユニット公開研究会を、下記のとおり開催します。
今回は、「冤罪教育の確立に向けて~甲山事件の教材化計画」という全体テーマに基づき、佐藤岬平氏(大阪暁光高校地歴公民科教諭)と山田悦子氏(甲山事件冤罪被害者)をお招きして授業の様子をご報告いただき、えん罪をテーマにした学習教材作成の試みについて議論を深めます。
ぜひ奮ってご参加ください。

【>>お申込みフォーム(Googleフォーム)】
※お申込期限:2月22日(木)正午


第2回法教育ユニット公開研究会

日時:2024年2月25日(日) 14:00-16:00(終了予定)

実施方法:オンライン
■司会 :札埜和男准教授
    (本学・文学部、犯罪学研究センター法教育ユニット長)
■報告者:佐藤岬平氏(大阪暁光高校地歴公民科教諭)
■コメンテーター:山田悦子氏(甲山事件冤罪被害者)

■概要
大阪暁光高校地歴公民科教諭の佐藤岬平氏は、HRや授業を通じて「冤罪」の学習を熱心にされている。
佐藤氏は生徒を引率しながら2023年8月22日に本学深草キャンパス至心館にある法廷教室などを見学された。同年9月19日には札埜が大阪暁光高校にて甲山事件についてレクチャーし、22日には甲山事件冤罪被害者の山田悦子氏と教室をオンラインで繋ぎ、生徒からの質問に山田さんが答える形で学習を行った。生徒たちは冤罪学習の成果を文化祭で発表した。
研究会では、佐藤氏より「冤罪学習」実践の動機や内容、成果と課題についてご報告いただき、ゲスト講師を務めた山田さんからも実際に授業に関わって考えられたことについてお話を伺う。そして、佐藤氏の取組に関わった札埜からも、今回の気づいた点についてコメントを述べる。
公民の授業だけでなくHR活動にも冤罪を取り入れる今回の実践を通じて、法教育としてどうであったのか総括しながら、現場における甲山事件の教材化についても協議していく。


法学部の川角 由和教授が2023年3月末日をもって、定年退職されることになりました。ご退職を記念して、1月15日(月)3講時に最終講義が開催されました。

川角先生は、1996年に龍谷大学法学部教授として着任され、2005年からは龍谷大学に新たに設置された法務研究科(法科大学院)に籍を移されました。同研究科が閉鎖されたことともない、2016年4月から再び法学部教授として教育・研究に貢献していただきました。
川角先生のご研究は、法解釈学と法社会学の交錯を視野に収めて市民法の観点から法現象を深くかつ鋭く分析されるものです。先生の研究手法と研究成果は、他の追随を許さないものとして、民法学の発展に大きな影響を与え、また今後も与え続けるものと思われます。
これまでの本学での教育・研究、組織運営へのご貢献に対して心から感謝申し上げるとともに、先生の益々のご健勝とご活躍を祈念いたします。






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