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【本件のポイント】
・コロナ禍により、オンラインで現地とつないだプログラム
・フィリピン/タイのそれぞれの新型コロナウイルス感染状況をはじめ、現地の声をリアルタイムで聴く機会
・海外に行く機会が減少している学生が「オンラインでも海外のことが知りたい」と参加を希望

【本件の概要】
 龍谷大学ボランティア・NPO活動センターが実施する体験学習プログラムは、学生がその地域の抱える問題に触れることを目的としたプログラムです。地域貢献、福祉、環境関連のNPO・NGOとの交流を通して、ボランティアなどの体験学習を行うことにより、異文化間における相互理解と共生を学ぶことを目指しています。例年は、海外に渡航・滞在してプログラムを行ってきましたが、今回は、完全オンラインにより現地とつないで実施します。


1 海外体験学習プログラム オンラインスタディツアー ※視聴希望者にはZOOMのURLをお送りいたします。

 ●3月9日(火) 14:00~16:00 フィリピン スラムに暮らす若者の声を聴く (参加者約20名)
 ・都市スラム「トンド地区」に暮らす若者のライフストーリーをお聞きします。貧困を緩和するフェアトレード事業についてNPOアクセスより解説いただきます。
 ▽協力団体・ファシリテータ:認定NPO法人アクセス-共生社会をめざす地球市民の会(京都市伏見区) 
  URL・・・https://access-jp.org/

当日のスケジュール(予定)
14:00~14:20    オープニング・導入( 現地と中継)
14:20~14:45    都市スラム・トンド地区とは(録画放映)( 現地と中継)    
14:45~15:15    都市スラムの若者のインタビュー(通訳あり)( 現地と中継)    
15:20~16:00    フェアトレード生産地・生産者のメッセージ(録画放映) 他


 ●3月15日(月) 14:00~16:00 タイ 農村コミュニティリーダーの声を聴く(参加者約20名)
 ・コミュニティベースドツーリズムを実施しているタイ南部タレーノーク村から、村のリーダーの想いをお聞きします。また、持続可能なツーリズムについてツナミクラフトより解説いただきます。
 ▽協力団体・ファシリテータ:ツナミクラフト(兵庫県西宮市) 
  URL・・・http://tsunamicraft.asia/

当日のスケジュール(予定)
14:00~14:25    オープニング・導入( 現地と中継)
14:25~14:55    タイのコロナ事情、今のまちの様子( 現地と中継)    
15:00~16:00    ・「ステイナブルコミュニティベースドツーリズム」持続可能なツーリズムについて( 現地と中継)・タイ南部の村ホームステイ先、旅行会社インタビュー(通訳あり)( 現地と中継)  

問い合わせ先 : ボランティア・NPO活動センター (担当者:上手(かみて))  
         Tel 077-544-7252


ポイント       
・日本全国の265の河川で調査を行い,ウナギは太平洋側で多く,日本海側で少ないことを発見。
・生物を捕獲することなく,生態系にやさしい,環境DNA法による調査を実施。
・産業上重要種でありながら絶滅危惧種でもあるニホンウナギの天然資源の保護と管理に貢献。

概要
 北海道大学大学院水産科学研究院の笠井亮秀教授,龍谷大学先端理工学部の山中裕樹准教授,国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの亀山 哲主任研究員,京都大学フィールド科学教育研究センターの益田玲爾教授,弘前大学農学生命科学部の東 信行教授,東京大学大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所の木村伸吾教授,東北生活文化大学短期大学部生活文化学科の黒川優子准教授らの研究グループは,全国265河川365地点で環境DNA(※1)調査を行い,これまで謎の多かったニホンウナギ(以下,ウナギ)の分布を調べました。その結果,ウナギは関東以西の本州太平洋側や瀬戸内海,そして九州西岸の河川で多く生息していることがわかりました。一方日本海側では,能登半島以西には生息していますが,北陸東北地方にはほとんど生息していないことが明らかとなりました。そして北海道の河川にも,ウナギはほとんどいませんでした。
 また,南方から海流によって日本まで運ばれてくるウナギの仔魚(シラスウナギ)の輸送状況をシミュレーションによって調べたところ,仔魚が到達する場所と環境DNA調査でウナギが生息していると推定された場所がよく一致しました。このことから,海洋でのシラスウナギの輸送状況が日本国内の河川におけるウナギの分布を決める主要因になっていると考えられます。また,ウナギの環境DNA濃度が高かった河川は全窒素(※2)濃度も高い傾向にありました。これは高栄養環境にある河川ほどウナギの生残や成長が良いことを示唆しています。本研究結果は,日本人にとって重要な水産物でありながら絶滅危惧種にも指定されているウナギの保護と資源管理に重要な知見を与えるものといえます。
 なお,本研究成果は, 2021年2月25日(木)公開のFrontiers in Ecology and Evolution誌にオンライン掲載されました。


シラスウナギ


河川に生息するニホンウナギ

【背景】
 ウナギは,蒲焼などのご馳走としてとても馴染み深い魚です。しかし現在では,その漁獲量はかなり少なくなっており,環境省やIUCN(※3)によって,絶滅危惧種に指定されています。今後もウナギを保護しながら,水産物として持続的に利用していくためには,その資源を適切に管理することが重要です。しかしこれまで,ウナギがどこに,どれくらいいるのかすらよくわかっていませんでした。それは,普段ウナギが岩陰に隠れたり砂泥中に潜って暮らしていたりするので,捕獲したり見つけたりすることが難しいからです。また,河川や湖沼から河口域,沿岸域まで様々な環境に生息しているため,統一した手法で生息量を調べることが難しかったという問題もあります。
 そこで笠井教授らの研究グループは,環境DNA解析と呼ばれる最新技術を用いて,統一した手法で全国の河川におけるウナギの分布を詳細に調べました。

【研究手法】
 最近の技術の進歩により,ごくわずかなDNAでも,環境中に存在しているかどうかを判断することができるようになりました。本研究で用いた環境DNA解析は,対象生物を捕獲しないため,絶滅危惧種など貴重な生物の分布調査にとても有効な手法です。それだけでなく,短期間のうちに広範囲にわたる調査を行うことができるという利点もあり,環境DNA解析は対象の生物の分布を調べる上で非常に役立ちます。また生物の個体数が多ければ環境DNAも多く放出されると予想されるため,環境DNAの濃度から,その環境に生息している生物量も把握できる可能性があります。過去の研究では,ウナギについては,従来の捕獲による方法よりも,環境DNA解析の方が精度よく生物量を調べられると報告されています。
 本研究では,北海道から沖縄に至る全国の265河川,365地点で環境DNA調査を行いました。現場で行ったことは,水温や塩分の測定,堰の有無の確認,そして河川水を数百ml採って,その水をフィルターでろ過をする(図1)だけです。従来の手法に比べると,現場での作業はさほど大掛かりなものではありません。河川水をろ過したフィルターは研究室に持ち帰り,フィルター上に捕集されているDNAを抽出しました。そして,ウナギのDNAを検出できる定量PCR(※4)解析によって,環境DNAの濃度を調べました。
 全国のウナギの分布が何によって決まるのかを考える際には,ウナギの生活史も考慮に入れなければなりません。ウナギは日本から2,500 kmも離れた太平洋マリアナ海溝付近で産卵するといわれています。生まれたばかりのウナギの卵や仔魚は,北赤道海流に乗って西方に運ばれフィリピン付近に達したのち,黒潮によって北方に輸送されます。その後行きついた東アジア各国の河川に遡上して数年から10年ほどかけて河川,湖沼または河口域付近で成長します。よって,海にいる仔魚期にどのように運ばれてくるかが,その後の生息場所を決めるうえで重要になると考えられます。
 そこで本研究グループは,まだ海にいる段階で,ウナギの仔魚がどこにどのように運ばれるかをシミュレーションによって調べました。シミュレーションには,気象庁が2020年秋に運用を開始したMRI.COM-JPNモデルによって計算された流れを用いました。このモデルは,東アジアの沿岸域を広く網羅しているにもかかわらず,水平解像度が2 kmととても緻密で,これまでにないほどの高精度で沿岸域の流れをよく再現できます。ウナギの仔魚に見立てた8万個の粒子を台湾東方の黒潮域に放流し,日本のどの地域に運ばれてくるかについて,2008年から2017年の各年12月から翌年4月までのシミュレーションを9回行い,各河川に運ばれてくる粒子数を計算しました。

【研究成果】
 ウナギの環境DNAは,関東以西の本州太平洋側や瀬戸内海そして九州西岸の河川において,高濃度で確認されました(図2)。一方日本海側は,能登半島以西では低濃度ながら検出されましたが,能登半島以北ではほとんど検出されませんでした。そして北海道の河川からも,ほとんど検出されませんでした。この結果はウナギ仔魚の輸送シミュレーションの結果とよく一致しています(図3)。
 このことから,海洋での仔魚の輸送状況が日本国内の河川におけるウナギの分布を決める主要因になっていると考えられます。一方ウナギは,北海道を除く全国の様々な地域で放流されています。そこで都府県別のウナギの放流量と環境DNA濃度を比較したところ,両者はまったく一致しませんでした。これらのことから,日本の河川に生息しているウナギの多くは天然のウナギであり,その分布は仔魚期の海洋での輸送状況によって決まると考えられます。
 また,ウナギの環境DNA濃度が高かった河川は全窒素濃度も高い傾向にありました。これは高栄養環境にある河川ほどウナギの生残や成長が良いことを示唆しています。全窒素濃度は富栄養化の指標とされ,水質の良し悪しの判断に用いられています。高度経済成長期に日本の水環境が著しく悪化したことに基づき,かつては全窒素濃度が高いといわゆる汚れた川と判断されていました。しかし近年の下水処理技術の発達や,様々な面から水環境に対する配慮が行われてきたおかげで,日本の河川は目を見張るほどきれいになりました。そのため本研究で得られた全窒素濃度が高い河川というのは,一昔前のように汚れた河川ではなく,むしろ生産性が高く豊かな河川ととらえた方がよいでしょう。つまり本研究で,全窒素濃度とウナギの環境DNA濃度の間に正の相関が得られたことは,豊かな河川にウナギが多く生息していることを反映していると考えることができます。

【今後への期待】
 ウナギのような貴重な生物を,捕獲したり傷つけたりすることなく,広範囲にわたる分布を詳細に明らかにできる環境DNA解析は,ほかの生物の調査にも広く適用できるでしょう。絶滅危惧種だけでなく,例えば外来種がどの程度生息域を広げているか,といったことも調べられます。
 本研究の成果は,今後ウナギを保護したり増やしたりするためには,どこで漁獲するのがよいのか,またどこで放流すればよいのか等の資源管理に繋がると期待されます。また堰の設置や河川改修を行う際に,生態系にフレンドリーな方法をとる際の参考になることも期待されます。

【謝辞】
 本研究は,科研費基盤研究(A)「環境DNA を用いた全国の河川におけるニホンウナギの分布・生息量推定(17H01412)」の助成を受けて行われました。

論文情報
論文名: 
Distribution of Japanese eel Anguilla japonica revealed by environmental DNA(環境DNAにより明らかにしたニホンウナギの分布)
著者名:笠井亮秀1,山崎 彩1,安 孝珍1,山中裕樹2,亀山 哲3,益田玲爾4,東 信行5,木村伸吾6,唐木達郎1,7,黒川優子8,山下 洋4(1北海道大学大学院水産科学研究院,2龍谷大学先端理工学部,3国立環境研究所生物・生態系環境研究センター,4京都大学フィールド科学教育研究センター,5弘前大学農学生命科学部,6東京大学大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所,7京都大学学際融合教育研究推進センター,8東北生活文化大学短期大学部生活文化学科)
雑誌名:Frontiers in Ecology and Evolution(生態学・進化学の専門誌)
DOI:10.3389/fevo.2021.621461
公表日:2021年2月25日(木)(オンライン公開)

お問い合わせ先
北海道大学大学院水産科学研究院 教授 笠井亮秀(かさいあきひで)
TEL 0138-40-8807   メール akihide@fish.hokudai.ac.jp
URL https://www2.fish.hokudai.ac.jp/faculty-member/kasai-akihide/?key=jp
https://lab-kasai-jp.jimdosite.com/

【参考図】


図1. 採水した河川水をろ過している様子。注射筒の先についている白い物が,フィルターの入ったカートリッジ。


図2.河川下流域におけるニホンウナギの環境DNA濃度(河川水中のDNA断片の数)。


図3.ニホンウナギ仔魚が海流によって各地の沿岸域に輸送されてくる数。2008年から2017年のシミュレーション結果の平均値。

【用語解説】
※1 環境DNA … 生物の糞やはがれた表皮などによって,環境中に放出された生物由来のDNAの総称。本研究では,河川水中に含まれるDNAのことを指す。
※2 全窒素 … 水中のアンモニウム,亜硝酸,硝酸に相当する無機態窒素と有機物に含まれる窒素の合計。全窒素濃度は,湖沼・河川・沿岸域の富栄養化や水質汚濁の指標として用いられており,環境省は全窒素濃度を測定し,水域の富栄養化のモニタリングを行っている。
※3 IUCN … International Union for Conservation of Nature and Natural Resources,国際自然保護連合。種の保存や環境教育などに関する活動を行っており,絶滅のおそれのある野生生物のリスト(レッドリスト)を作成していることで有名。
※4 定量PCR … DNAを増幅させて,サンプルに含まれる対象種のDNAの量を推定すること。


2021年度特別研修講座「矯正・保護課程」(本学学生対象)/矯正・保護教育プログラム(社会人等対象)の受講者を2021年3月22日から募集します。

龍谷大学では、特別研修講座のひとつとして「矯正・保護課程」を開設しています。この課程は、刑務所、少年院、少年鑑別所等で働く矯正職員や犯罪をおかしたり非行をおこなった人たちの社会復帰の手助けをする保護観察官などの専門職やボランティアを養成することを目的としています。
1977年の開設以来、受講者の数は2021年2月現在、延べ3万1千人を超えています。その中から、警察官や刑務官、法務教官、保護観察官などの公務員はもちろん、関連する民間施設職員、保護司、教誨師など、多数の人材を輩出しています。所定の要件を満たした本学学生には、「矯正・保護課程修了証明書」(本学独自の課程修了証明書)を卒業時に交付しています。
特別研修講座「矯正・保護課程」の科目の中には、文学部、法学部、政策学部、社会学部、短期大学部の専攻科目と合同開講しているもの等があります。それらの科目は、当該学部において、卒業要件単位として認められるものがあります。(詳しくは、各学部の「履修要項」又は学部教務課にご確認ください)

また、矯正・保護課程では、本学学生や卒業生だけでなく、社会人等にも広く門戸を開いております。これまで、保護司や社会福祉関係者など、延べ760名を超える社会人が、本課程を受講しました。
現在、社会人等については、特別研修講座「矯正・保護課程」を文部科学省が推奨する履修証明プログラム(矯正・保護教育プログラム)として開設しています。これに伴い、所定の要件を満たした方には、学校教育法第105条に基づく「履修証明書」を交付しています。

当課程の受講を希望される方は、「2021年度受講要項・シラバス」を請求のうえ、所定の受講手続きを行ってください。資料の請求は矯正・保護総合センターホームページのトップメニューにある「講演会等のお申し込み・資料請求」からお申し込みください。
(注)社会人等の学外受講者の場合、「2021年度受講要項・シラバス」の巻末にある「受講希望理由書」等の提出が必要です。

矯正・保護分野に興味・関心のある方の受講を心よりお待ちしています。

<申込期間>
通年・前期科目:2021年3月22日(月)~4月1日(木)<※3月30日(火)、31日(水)を除く>
後期科目:2021年3月22日(月)~9月9日(木)
※上記申込期間のうち、土日・祝日、大学が定める休業日は除きます。
※前期科目の講義は、4月7日(水)、後期科目が9月16日(木)から順次開講されますので、お早めにお申し込みください。
※申込期間終了後の申込みに関する問い合わせは、矯正・保護総合センター事務部まで。

【申込先窓口および受付時間】
大宮学舎:文学部教務課、深草学舎:法学部教務課、瀬田学舎:社会学部教務課、大阪梅田キャンパス:大阪オフィス<ヒルトンプラザウエストオフィスタワー14階(大阪市北区)>

【相談窓口】
矯正・保護総合センター事務部  深草学舎至心館1階
 TEL 075-645-2040
 E-mail:kyosei-hogo@ad.ryukoku.ac.jp
 
【パンフレット・冊子等】
・『受講要項・シラバス』
この冊子は、特別研修講座「矯正・保護課程」/矯正・保護教育プログラムに関する科目内容や受講料、申込の期間・方法などの手続きの情報と、各授業科目担当者のシラバスを掲載しています。受講を希望する人は必ず参照してください。

※上記の資料は、文学部教務課(大宮学舎)、法学部教務課(深草学舎)、社会学部教務課(瀬田学舎)及び大阪オフィス(大阪梅田キャンパス)の各窓口、ならびにキャリアセンター(全学舎)に設置しています。

【矯正・保護課程について】

https://rcrc.ryukoku.ac.jp/educate/study.html


ポイント
・日本全国の265の河川で調査を行い,ウナギは太平洋側で多く,日本海側で少ないことを発見。
・生物を捕獲することなく,生態系にやさしい,環境DNA法による調査を実施。
・産業上重要種でありながら絶滅危惧種でもあるニホンウナギの天然資源の保護と管理に貢献。

概要
本学先端理工学部山中裕樹准教授(生物多様性科学研究センター長)らの研究グループは全国265河川、365地点で環境DNA調査を行い、これまで謎の多かったニホンウナギの分布を調べました。その結果、ウナギは関東以西の本州太平洋側や瀬戸内海mそして九州西岸の河川に多く生息していることがわかりました。一方日本海側では、能登半島以西には生息していますが、北陸東北地方にはほとんど生息していないことが明らかとなりました。そして北海道の河川にもほとんどいませんでした。
また,南方から海流によって日本まで運ばれてくるウナギの仔魚(シラスウナギ)の輸送状況をシミュレーションによって調べたところ,仔魚が到達する場所と環境DNA調査でウナギが生息していると推定された場所がよく一致しました。このことから,海洋でのシラスウナギの輸送状況が日本国内の河川におけるウナギの分布を決める主要因になっていると考えられます。また,ウナギの環境DNA濃度が高かった河川は全窒素*2濃度も高い傾向にありました。これは高栄養環境にある河川ほどウナギの生残や成長が良いことを示唆しています。本研究結果は,日本人にとって重要な水産物でありながら絶滅危惧種にも指定されているウナギの保護と資源管理に重要な知見を与えるものといえます。
なお,本研究成果は, 2021年2月25日(木)公開のFrontiers in Ecology and Evolution誌にオンライン掲載されました。

背景
ウナギは,蒲焼などのご馳走としてとても馴染み深い魚です。しかし現在では,その漁獲量はかなり少なくなっており,環境省やIUCN*3によって,絶滅危惧種に指定されています。今後もウナギを保護しながら,水産物として持続的に利用していくためには,その資源を適切に管理することが重要です。しかしこれまで,ウナギがどこに,どれくらいいるのかすらよくわかっていませんでした。それは,普段ウナギが岩陰に隠れたり砂泥中に潜って暮らしていたりするので,捕獲したり見つけたりすることが難しいからです。また,河川や湖沼から河口域,沿岸域まで様々な環境に生息しているため,統一した手法で生息量を調べることが難しかったという問題もあります。
そこで笠井教授らの研究グループは,環境DNA解析と呼ばれる最新技術を用いて,統一した手法で全国の河川におけるウナギの分布を詳細に調べました。


シラスウナギ

研究手法
最近の技術の進歩により,ごくわずかなDNAでも,環境中に存在しているかどうかを判断することができるようになりました。本研究で用いた環境DNA解析は,対象生物を捕獲しないため,絶滅危惧種など貴重な生物の分布調査にとても有効な手法です。それだけでなく,短期間のうちに広範囲にわたる調査を行うことができるという利点もあり,環境DNA解析は対象の生物の分布を調べる上で非常に役立ちます。また生物の個体数が多ければ環境DNAも多く放出されると予想されるため,環境DNAの濃度から,その環境に生息している生物量も把握できる可能性があります。過去の研究では,ウナギについては,従来の捕獲による方法よりも,環境DNA解析の方が精度よく生物量を調べられると報告されています。
本研究では,北海道から沖縄に至る全国の265河川,365地点で環境DNA調査を行いました。現場で行ったことは,水温や塩分の測定,堰の有無の確認,そして河川水を数百ml採って,その水をフィルターでろ過をするだけです。従来の手法に比べると,現場での作業はさほど大掛かりなものではありません。河川水をろ過したフィルターは研究室に持ち帰り,フィルター上に捕集されているDNAを抽出しました。そして,ウナギのDNAを検出できる定量PCR*4解析によって,環境DNAの濃度を調べました。
全国のウナギの分布が何によって決まるのかを考える際には,ウナギの生活史も考慮に入れなければなりません。ウナギは日本から2,500 kmも離れた太平洋マリアナ海溝付近で産卵するといわれています。生まれたばかりのウナギの卵や仔魚は,北赤道海流に乗って西方に運ばれフィリピン付近に達したのち,黒潮によって北方に輸送されます。その後行きついた東アジア各国の河川に遡上して数年から10年ほどかけて河川,湖沼または河口域付近で成長します。よって,海にいる仔魚期にどのように運ばれてくるかが,その後の生息場所を決めるうえで重要になると考えられます。
そこで本研究グループは,まだ海にいる段階で,ウナギの仔魚がどこにどのように運ばれるかをシミュレーションによって調べました。シミュレーションには,気象庁が2020年秋に運用を開始したMRI.COM-JPNモデルによって計算された流れを用いました。このモデルは,東アジアの沿岸域を広く網羅しているにもかかわらず,水平解像度が2 kmととても緻密で,これまでにないほどの高精度で沿岸域の流れをよく再現できます。ウナギの仔魚に見立てた8万個の粒子を台湾東方の黒潮域に放流し,日本のどの地域に運ばれてくるかについて,2008年から2017年の各年12月から翌年4月までのシミュレーションを9回行い,各河川に運ばれてくる粒子数を計算しました。


採水した河川水をろ過している様子。注射筒の先についている白い物が,フィルターの入ったカートリッジ。

研究成果
ウナギの環境DNAは,関東以西の本州太平洋側や瀬戸内海そして九州西岸の河川において,高濃度で確認されました。一方日本海側は,能登半島以西では低濃度ながら検出されましたが,能登半島以北ではほとんど検出されませんでした。そして北海道の河川からも,ほとんど検出されませんでした。この結果はウナギ仔魚の輸送シミュレーションの結果とよく一致しています。
このことから,海洋での仔魚の輸送状況が日本国内の河川におけるウナギの分布を決める主要因になっていると考えられます。一方ウナギは,北海道を除く全国の様々な地域で放流されています。そこで都府県別のウナギの放流量と環境DNA濃度を比較したところ,両者はまったく一致しませんでした。これらのことから,日本の河川に生息しているウナギの多くは天然のウナギであり,その分布は仔魚期の海洋での輸送状況によって決まると考えられます。
また,ウナギの環境DNA濃度が高かった河川は全窒素濃度も高い傾向にありました。これは高栄養環境にある河川ほどウナギの生残や成長が良いことを示唆しています。全窒素濃度は富栄養化の指標とされ,水質の良し悪しの判断に用いられています。高度経済成長期に日本の水環境が著しく悪化したことに基づき,かつては全窒素濃度が高いといわゆる汚れた川と判断されていました。しかし近年の下水処理技術の発達や,様々な面から水環境に対する配慮が行われてきたおかげで,日本の河川は目を見張るほどきれいになりました。そのため本研究で得られた全窒素濃度が高い河川というのは,一昔前のように汚れた河川ではなく,むしろ生産性が高く豊かな河川ととらえた方がよいでしょう。つまり本研究で,全窒素濃度とウナギの環境DNA濃度の間に正の相関が得られたことは,豊かな河川にウナギが多く生息していることを反映していると考えることができます。

今後への期待
ウナギのような貴重な生物を,捕獲したり傷つけたりすることなく,広範囲にわたる分布を詳細に明らかにできる環境DNA解析は,ほかの生物の調査にも広く適用できるでしょう。絶滅危惧種だけでなく,例えば外来種がどの程度生息域を広げているか,といったことも調べられます。
本研究の成果は,今後ウナギを保護したり増やしたりするためには,どこで漁獲するのがよいのか,またどこで放流すればよいのか等の資源管理に繋がると期待されます。また堰の設置や河川改修を行う際に,生態系にフレンドリーな方法をとる際の参考になることも期待されます。

用語解説
*1 環境DNA … 生物の糞やはがれた表皮などによって,環境中に放出された生物由来のDNAの総称。本研究では,河川水中に含まれるDNAのことを指す。
*2 全窒素 … 水中のアンモニウム,亜硝酸,硝酸に相当する無機態窒素と有機物に含まれる窒素の合計。全窒素濃度は,湖沼・河川・沿岸域の富栄養化や水質汚濁の指標として用いられており,環境省は全窒素濃度を測定し,水域の富栄養化のモニタリングを行っている。
*3 IUCN … International Union for Conservation of Nature and Natural Resources,国際自然保護連合。種の保存や環境教育などに関する活動を行っており,絶滅のおそれのある野生生物のリスト(レッドリスト)を作成していることで有名。
*4 定量PCR … DNAを増幅させて,サンプルに含まれる対象種のDNAの量を推定すること。

論文情報
論文名 Distribution of Japanese eel Anguilla japonica revealed by environmental DNA
(環境DNAにより明らかにしたニホンウナギの分布)
著者名 笠井亮秀1,山崎 彩1,安 孝珍1,山中裕樹2,亀山 哲3,益田玲爾4,東 信行5,木村伸吾6,唐木達郎1,7,黒川優子8,山下 洋4(1北海道大学大学院水産科学研究院,2龍谷大学先端理工学部,3国立環境研究所生物・生態系環境研究センター,4京都大学フィールド科学教育研究センター,5弘前大学農学生命科学部,6東京大学大学院新領域創成科学研究科/大気海洋研究所,7京都大学学際融合教育研究推進センター,8東北生活文化大学短期大学部生活文化学科)
雑誌名 Frontiers in Ecology and Evolution(生態学・進化学の専門誌)
DOI 10.3389/fevo.2021.621461
公表日 2021年2月25日(木)(オンライン公開)


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