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武田 俊信 本学文学部教授・犯罪学研究センター「司法心理学」ユニット長

武田 俊信 本学文学部教授・犯罪学研究センター「司法心理学」ユニット長

武田 俊信(たけだ としのぶ)
本学文学部教授・犯罪学研究センター「司法心理学」ユニット長
<プロフィール>
本学文学部・臨床心理学科教授。研究分野は精神医学、発達障害で、現在は成人期のADHDの研究が中心。また医療施設で発達障害専門外来の精神科医師として診療も行なう。

将来的には社会にも啓蒙を
研究を通じて、ゆくゆくは「ADHDには薬物依存や犯罪に手を染めてしまうシナリオがあるかもしれない」ということを社会に啓蒙できれば、と思っています。これがADHDの早期発見や治療に繋がるかもしれない。そのためにも、刑務所に入った人を対象にまずADHD傾向の人を抽出し、矯正教育をすることでどのような結果が出るのか、再犯防止へ繋がるいい結果が出るのかを見てみたいですね。
これは精神科医としての実感ですが、クリニックに通っている子どもは成長してから問題を起こしにくいと感じています。大人も同様に、発達障害に特化した施設で当事者グループやピアグループで訓練や治療すると一般社会に戻っていく人が多いのです。このような訓練や治療を増やし、社会復帰を実現していくためには多方面から考え、支える必要があります。
当センターのプロジェクトは、学際的な研究になっているので、ユニークでとても意義があると思います。

生きづらさを軽減する方法を応用
実際には、薬物依存者は行動観察上においてADHD傾向があると言われているだけで、いわゆる認知検査や生物学的な検査、知能検査などで確かめられていない部分があります。そこを研究の中できちんと調査することで、新たに得るものがあるのではないかと思います。
ADHDと薬物依存は失敗体験を繰り返し、自己評価が低いという共通点があります。また行動には衝動性もあり、特に新規で面白そうなものに手を出す傾向がみられます。このような特性も薬物依存の行動に繋がりやすいのではと考えます。
ADHDは生得的な傾向なので完治は難しいですが、自分を知り、苦手な部分を補うことを覚えればコントロールができます。私がADHDに興味を覚えたのも、適切な行動療法や薬の服用で良くなる部分が多いからです。できない、やれないと負のスパイラルに陥る前に、本人や周囲の人がポジティブな面や行動に注目し、対応するトレーニングをすることで生きやすくなります。
薬物使用者がADHD傾向を有するならば、私が長年、研究者、医師として取り組んできた経験や知識を応用し、薬物依存から脱出する一助になれるのではないかと思います。

薬物依存や犯罪傾向を医学的見地から考える
私は長年、脳機能障害の一種である発達障害「ADHD(attention deficit hyperactivity disorder:注意欠陥多動性障害)」の臨床研究をしています。薬物依存の人の行動にはADHDのような特性があるとも言われており、専門性をいかして犯罪学研究に貢献できることはないかと思っています。
日本は薬物依存者に対して刑罰主義に重きを置いており、その結果として、再犯で刑務所を行ったり来たりしている、回転ドア現象のような状況があります。私は研究を通じてこの状態に歯止めをかけるアプローチができないかと考えています。また、ADHDへの非薬物療法の一つとしてニューロフィードバックが古くから研究・実践されており、最近になって犯罪分野への応用も散見されるようになっています。犯罪、特に不法薬物の使用者にはADHDの薬物は使用しにくく、また前述した心理療法で改善せず、いわゆる累犯者となる場合も多いことから、ニューロフィードバックの効果が期待されます。ただしADHDへの効果についてもエビデンスの点で不確かなところがあるため、現在はADHDの成人に対してのニューロフィードバックの効果研究の用意を進めています。



赤池 一将 本学法学部教授、犯罪学研究センター 教育部門長・「司法福祉」ユニット長

赤池 一将 本学法学部教授、犯罪学研究センター 教育部門長・「司法福祉」ユニット長


赤池 一将(あかいけ かずまさ)
本学法学部教授、犯罪学研究センター 教育部門長・「司法福祉」ユニット長
<プロフィール>
刑事法学を研究。フランスの刑事法や刑事施設などにも造詣が深い。近著にセンター長・石塚氏との共著『宗教教誨の現在と未来 矯正・保護と宗教意識 』(龍谷大学研究所刊)など。

後進の研究と教育のための蓄積を
本学は、犯罪学研究センターの設立以前より、「矯正・保護課程」や「矯正・保護総合センター(Ryukoku Corrections and Rehabilitation Center(RCRC))」において、刑務官や法務教官、保護監察官といった方たちとともに、40年以上に渡って非行や罪を犯した人の立ち直りについての研究プロジェクトや教育活動を行っています。
当センターは、これまでの知見や研究を基盤としながら、「犯罪と人間」「犯罪と科学」など学際的にさまざまな分野において更なる研究を、本学や矯正・保護総合センターと連携をしながら、積み上げていくことが求められています。
私が部門長を務める「教育部門」の目標は、後進の育成のための知識やノウハウを蓄積し、研究から得たものをカリキュラムにすることで、将来を担うスタッフや人材を育成することです。また、当センターでの研究成果を、法務教官などに資料として提供するなど、なんらかの形式で社会実装したいとも考えています。

司法福祉ユニットでの研究を通じて「建学の精神」を具現化
私は法学部で刑罰問題を中心に研究し、当センターでは、「司法福祉ユニット」のとりまとめ役を担っています。我々の観点で犯罪学を議論すると、法律や刑法に違反した点から始めますが、他学部ではまったく観点が違うはずです。「文学部の心理学の専門家は犯罪をどのようにみるのか」、「仏教学において犯罪はどのように扱われるのか」、など非常に興味深いところです。本学の「建学の精神」は「浄土真宗の精神」であり、その人間観は「悪人正機」の思想に基づいています。本学の法学部は、少数者の利益を奪うような法律であってはならないという視点で法律を研究しているという自負があります。犯罪者やその背景・心理・科学を研究する「犯罪学」は、まさに少数者に関心を寄せ、理解を示す本学だからこそ取り組むべき学問だと思っています。法的な定義や知見もあるけれど、それだけではない、浄土真宗本願寺派が母体の龍谷大学の伝統をベースに、学際的に犯罪学をみていきます。このようなアカデミズムの中での取り組みは、すべてが実務的、実利的ではないかもしれませんが、やがて「龍谷・犯罪学」という富を作ると考えています。
当センターは、大学として多角的に広い下地や教養をみせながら、多くの方に関わっていただける場を提供したいと思います。

政府の政策提言の対案を
当センターの事業の最終年度となる2020年に、日本では50年ぶりとなる「第14回国連犯罪防止・刑事司法会議(コングレス)」が京都で開催されます。実は日本の刑事司法が、死刑制度や受刑者の処遇問題など多くの点で国連から批判や勧告を受けていることを、社会ではあまり知られていません。こうした問題は、報道される機会が少ないため、そのことを知らない人が多いのです。
法務省は、2020年のコングレスの場において、ある程度、国際社会からの勧告にこたえる提案をするとは思いますが、この機会に当センターとしても法務省の回答案を再検討し、本来解決すべき課題を明らかにして世論を喚起する必要があると思っています。
国も私たちも再犯予防に目を向けていますが、政府の司法福祉の考え方が、私たちの考え方と決定的に違うのは、前者が犯罪者の個々の問題に寄り添う姿勢に欠けている点です。私たちはあくまでも一人ひとり本人の理解を得て、その社会復帰の試みが失敗しても支えうる支援をし、また、そのためのネットワークを広く作ろうとする点を大事にします。政府が主導する政策、社会を統治する観点のみではうまくいかない。研究も実際の活動も、少数者の弱い立場に立った見方が必要です。少数者サイドからものを見るということは、非常に批判的に日本を見つめることになり、それは時に現状追認の消極的な反応を引き起こし、嫌われます。しかし、あえて説得に回ることは仏教に支えられた本学の、そして当センターの責務であると考えています。



浜井 浩一 本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長

浜井 浩一 本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長


浜井 浩一(はまい こういち)
本学法学部教授、犯罪学研究センター 国際部門長・「政策評価」ユニット長
<プロフィール>
法務省時代に矯正機関などで勤務。法務総合研究所や国際連合地域間犯罪司法研究所の研究員も務め、国内外の犯罪や刑事政策に精通。犯罪統計や科学的根拠に基づいて犯罪学を研究中。

必要なのは、科学的根拠に基づく議論
私が犯罪学や犯罪に関する議論、政策決定などに科学的根拠の必要性を感じたのは、統計から見る犯罪像と、現場で見た犯罪者や刑罰のあり方にズレがあると感じたことがきっかけです。以前、犯罪白書を作ったり、刑事政策に関する研究を行ったりする研究所から、現場である刑務所に異動した際、刑務所は満員で拘置所に確定受刑者が滞留している状況でした。受刑者は認知症の高齢者や障害者が多く、懲罰刑としての労働ができないうえ、出所後の受け皿も少なく、再犯率も高い。そのような状態で果たして犯罪者への懲罰や厳罰化に効果があるのか、そもそもなぜこの状況が生まれたのか、と疑問に思ったことが研究の出発点でした。日本の刑事法学は縦割りかつタコつぼ型で、受刑者である人物がどんな人でなぜ犯罪をしたのか、刑務所に入れたらどうなるのかという一連の流れを考える人が少なく、研究している人もいないのが現状です。
私の専門は犯罪統計学で、犯罪白書を編集したり、刑務所等の現場も経験したりしているため、“検挙率の増加”が“日本の治安の悪化”を意味しているわけではなく、統計の取り方であることに研究初期から気付いていました。統計を科学的に見ず、根拠のない「べき論」のまま犯罪対策や日本の刑事政策を論じていては、間違った方向に進みかねません。そこで、キャンベル共同計画日本代表の静岡県立大学の津富宏さんと協力して、科学的統計や根拠に基づき、刑罰や刑事司法の機能を議論するために必要なエビデンスのレビューを有する「キャンベル共同計画(Campbell Collaboration )」*プロジェクトのレビューを日本語に翻訳・分析する活動を本格的に進めることにしました。

キャンベル共同計画(Campbell Collaboration)とは
国際プロジェクト「キャンベル共同計画(Campbell Collaboration)」は、研究テーマに基づいて世界各国で同じ手法、同じ基準で実験を行ない、そこから得たデータをメタ分析して、エビデンス(科学的根拠)の系統的レビューを発表しています。このレビューはホームページで見ることができ、教育や刑事司法、犯罪、社会福祉の分野で最善のエビデンスを知りたい人のニーズに応えるように考えられています。そして、新たなエビデンスが現れれば速やかに更新・修正もなされます。現在、ホームページのレビューは英語での科学的論文と、そのエッセンスを表した2種があり、主に日本に伝える必要があるエッセンスを厳選し、日本語に翻訳していく予定です。
日本では法学者や法律関係者などの有識者が、科学的・統計的なエビデンスに基づいた議論をほとんどしていません。レビューを共有できるこのプロジェクトの存在と意義を理解してもらい、良質なエビデンスが政策評価や決定者に届くようにしたいと思っています。
【>>Link:犯罪学研究センター>キャンベル計画】

経験と強みを生かして犯罪学を科学的にとらえる
私の強みは、法務省時代の経験から少年、成人すべての処遇現場を知っていること。そして、統計を作る現場を知っていること。さらに「犯罪白書」を作った経験から、現場で作られた統計をすべて集めて分析できることではないでしょうか。かつて各国から統計を集めて分析する国連機関にも出向していたので、日本の刑事政策が世界からどう見えているのか、日本の犯罪をとりまく状況を俯瞰的に捉えることもできます。
欧米諸国とは異なり、日本には犯罪学部が存在しないため、犯罪学の議論や政策決定に有用なデータが何を意味しているか、そのデータの作られ方や数字の持つ意味を分析できる人が少ないのが現状です。統計学の見地から犯罪を科学的に検証し、議論するためのベースを作っていくことで、当センターが日本の犯罪学研究の拠点となり、同時に世界のカウンターパートとなる場所にしたいと思います。



中根 真 本学短期大学部 こども教育学科教授、犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長

中根 真 本学短期大学部 こども教育学科教授、犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長


中根 真(なかね まこと)
本学短期大学部 こども教育学科教授、犯罪学研究センター「保育と非行予防」ユニット長
<プロフィール>
社会福祉学を研究。子ども家庭福祉や保育、地域福祉の研究のほか、大正期の大阪の福祉教育、出征軍人児童保管所の歴史などから保育を考察する論文等を執筆。

非行予防の観点で保育を考える
最近10年は保育に特化した研究を進めています。社会福祉学では子ども家庭福祉の研究において社会的養護を取り上げることは多いのですが、保育を取り上げることは意外に少ないのが現状です。私は保育園や幼稚園、認定こども園の保育室内の様子よりも、むしろ降園後にどのような家庭や地域社会の中で子どもたちが過ごしているかに着目し、地域福祉の観点で保育を研究しています。
昨今では「働く女性の子どもの受け皿を増やす」ために保育所の整備が喫緊の課題となっています。しかし、問題は保育所の数だけではありません。家庭格差から生じる子どもたちの成長や発達の格差を保育所等が親とは違った形で関わり補う必要があるのに、そのことが議論から抜け落ちているという点が問題だと考えています。
幼児期の親のしつけや教育的配慮・関心の不足、格差が成長にも影響した結果、信頼関係にもとづく良好な人間関係の形成につまずき、非行に走る子どもがいるならば、そこには本人の努力だけではどうしようもできない家庭や社会環境の制約があったのではないでしょうか。本学の犯罪学研究センターや矯正・保護総合センターでは「更生」や「社会復帰支援」に重きを置いていますが、私は非行や犯罪に至る前の「予防」もまた重要であると問題提起をしたいと思っています。そこで、予防研究の第1段階として幼児期に注目し、どのような保育が必要なのか、歴史的考察を通して考えていきます。

子どもを通して家庭を見ていた過去の保育者たち
私が現在進めているのは、大正2年から大阪市内9ヶ所に保育所を開設した「財団法人弘済会」の史料研究です。大正期も今と同じく保育所に子どもを預けて両親ともに働き、生活を安定させようとした家庭が多くありました。弘済会は子どもを預かるだけでなく、「子どもに与える駄賃は子どもの教育のために貯金を」と親に指導するなど、子どもの育ちのために親は何ができるのかを伝えていたのです。具体的には2ヶ月に1回、各保育所で家庭会が開催され、子どものしつけのよろず相談、健康相談などに幅広く対応しながら、家庭内の悪習慣の是正や改善を促していました。つまり、保育者が子どもを通して家庭全体を見て、生活を指導するという状況があったのです。
また、神戸では日露戦争中に夫の出征に伴い、働かなければならない母親のための出征軍人児童保管所が設けられ(1904年)、日露戦争後も戦役紀念保育会として保育事業が継続されました。「母子家庭は時間的に育児が放任されがちであるため、非行に繋がるかもしれない。非行予防の観点からも児童保管所や保育所は必要だ」と考えられていたようです。すなわち、当時から親の就労等の事情によって、家庭教育が十分行えない場合、保育所の保育で代替・補完しようとする意識があったわけです。このように過去の時代と現代の保育状況を慎重に比較対照させながら、保育事業が果たす非行予防の機能・役割について研究を進めていきます。

幼少期の教育が重要であるという経済学の知見
幼少期の重要性を認める経済学の知見があります。ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授は「恵まれない家庭に育ってきた子どもたちの経済状態や生活の質を高めるには、幼少期の教育が重要である」と主張しています。彼が研究で主に用いたのは1960年代アメリカで実施されたペリー就学前プロジェクトの実験結果です。具体的には、経済的に恵まれない家庭の3~4歳の子どもを無作為に選び、就学前に教育を受けた子どもと受けなかった子どもを40歳まで追跡調査したところ、就学前に教育を受けた子どもは受けなかった子どもより学力検査の結果や学歴が高く、生活保護受給率や逮捕者率が低いという結果が出ました。
つまり、就学前の教育がやる気、忍耐力、協調性といった社会的・情動的性質を現す「非認知スキル」を高め、成人後もその効果が継続したと考えられ、保育や保育者の果たす役割は、子どもの成長だけでなく、経済的・社会的にも好影響を与えるということを明らかにしました(J.ヘックマン=古草秀子訳『幼児の教育経済学』東洋経済新報社、2015年)。
このような研究の裏付けもふまえ、幼少期への社会的介入のあり方、そのための仕組みをどうつくるかも考えていきたいと思っています。



斎藤 司 本学法学部教授、犯罪学研究センター「性犯罪」ユニット長

斎藤 司 本学法学部教授、犯罪学研究センター「性犯罪」ユニット長


斎藤 司(さいとう つかさ)
本学法学部教授、犯罪学研究センター「性犯罪」ユニット長
<プロフィール>
大学では刑事訴訟法を研究。『校正な刑事手続と証拠開示請求権』(2015年 法律文化社)の著作のほか、『法学セミナー』(日本評論社)にて「刑事訴訟法の思考プロセス」を連載。

法改正に伴う影響とは
平成29年7月に強姦罪・準強姦罪など性犯罪に関する刑法の諸規定が110年ぶりに改正されました。これらの改正が、今後性犯罪に関する刑事手続における運用や犯罪者処遇にどのように影響するのか研究を進めたいと思っています。普段の学部等での講義でも性犯罪に触れざるを得ないのですが、学生からは「あまり触れないでほしい」「聞くのも嫌だ」という反応が増えているように感じます。そのような反応をみて、性犯罪をどう扱うべきなのかと思ったのも研究のきっかけのひとつです。性犯罪は身近に起こりうることで、考えなければいけない問題です。性犯罪だけでなく痴漢などもテーマになりえます。今回の法改正で大きく変わったことの1つは、性犯罪を行う主体が男性に限定されなくなったという点です。男性から女性、女性から男性、さらに踏み込めるかは分かりませんがLGBTなども含め、まずは時代ごとに変遷している「性犯罪」「性犯罪者」のイメージをつかむことから研究を進めていきます。

歴史や国際比較で将来を予測
研究を通じて、法律を含めた社会において性犯罪や性犯罪者がどのように捉えられていたかという社会意識の変遷、日本と同じく最近性犯罪の法改正が行われているドイツや北欧諸国の現状などを調べて国際比較にも踏み込みたいと思っています。台湾や韓国は、日本の戦前の法律をモデルとして発展している点で日本と同じですが、現状は異なります。その理由を検討することは、性犯罪者や性犯罪者像に関する日本の特徴、今後の対応策の手がかりを明らかにすることにつながるでしょう。以上のような問題意識で歴史研究や国際比較することで、日本の性犯罪規定や性犯罪者処遇のあり方を考える手がかりにしようと考えています。
犯罪とは個人の「権利(法益)を侵害」する行為です。一例ですが、昔は既婚女性を強姦した場合、「本人の権利の侵害」ではなく「夫の権利の侵害」であるという考え方でした。現在は、その考え方は変わり「個人の性的自由」の権利を侵害すると理解されています。刑法との関係でも、性犯罪のイメージは変わっており、それに伴い性犯罪者のイメージも変わってきていると考えられます。もっとも、時代とともに変わる性犯罪像は、今までそれほど深く研究されていません。この点についても、社会意識の変遷、国際比較を研究することで、今後どうすべきかの予測もできるのではないでしょうか。

性犯罪の処罰像と法律のズレを見極める
法改正がほとんどなかった刑事訴訟法が改正されたり、裁判員制度が施行されたりするなど、10数年前には予測できなかった動きが日本では起きています。今回の改正では、性犯罪の悪質さや重大さに比較して法定刑の下限が低いという意見が反映され、以前は3年だった懲役刑が5年へと厳罰化されました。このように社会が性犯罪者に対し求める処罰と、実際の法律にズレはないのか検討することも本研究テーマのひとつです。そして、性犯罪や性犯罪者像を明確にした上で、将来的には、性犯罪者の処罰だけでなく、性犯罪の再発防止のためにどう支援するのがベストかといった点についても考えなければならないと思っています。



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