石塚教授は、EUROCRIM 2022では、テーマセッション「Research for Better Policy and Law-Making: Evaluating Needs, Diagnoses and Designs(より良い政策と立法に向けた研究:ニーズ・究明・設計の評価)」に参加し、「Penal Reforms in Japan: Prison Sentences with Forced Labor and Rehabilitative treatment as Punishment.(日本における刑罰改革:懲役刑と刑罰としての改善更生)」について報告。今年6月に日本で、懲役刑と禁錮刑を一元化した「拘禁刑」を創設する改正刑法が成立したことを紹介しながら、「懲役刑が維持されたこと」や「改善更生指導が義務付けられたこと」について批判的に検討した報告を行いました。石塚教授は新しい制度の問題点について指摘し、今回の法改正は「明らかな重罰化」であると評しました。さらに、国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)による勧告を十分に配慮しない当制度は世界の流れに反していると言う説明も加えました。
石塚 伸一教授(本学・法学部、治療的司法ユニット長)による報告の様子
津島 昌弘教授(本学・社会学部、犯罪学研究センター長)は、石塚教授の説明を補足する形で、ヨーロッパ犯罪学会の歴史について説明しながら、世界でも有数の規模を誇るヨーロッパ学会の重要性を強調しました。津島教授は、「Procedural Justice and Police legitiimacy(手続き的公正と警察の正統性)」 というセッションに参加し、「Trust in the Police Force, Police Legitimacy, and Compliance with the Law: A Study of Japanese Teenagers(警察・警察の正統性に対する信頼、そして法令の遵守:日本の青少年の研究)」を発表しました。これは、中学生を対象とした国際比較調査(ISRD)のデータを用いたものであり、「警察の正統性」と「市民からの信頼」や「法令遵守」との関係性を説明する理論仮説の検証、そして少年非行の発生への影響力について検討を行ったものです。津島教授は『警察への信頼と警察の正統性、両者の繋がりは確認できた。しかし、日本の青少年の多くは警察と触れ合うことが少ない。そのため体験ではなく少年たちの想像に基づく回答が多かったのではないか。よって、警察活動が、少年たちの法令遵守に寄与しているとまでは言い難い』と述べました。
津島 昌弘教授(本学・社会学部、犯罪学研究センター長)による報告の様子
大江 將貴 氏(京都大学大学院教育学研究科・研究員)は、「Offending and Rehabilitation in Japan(日本における犯罪と更生保護)」というセッションで、「Schools and Delinquency Deterrence in Japan: Results from the International Self-Report Delinquency Study(日本における学校と非行抑止力:ISRD〔国際自己申告非行調査〕の結果)」を発表しました。大江氏は、ISRDの調査データを用いて、社会的ボンド理論のキーワードである4つのボンド(愛着〔attachment〕、投資〔commitment〕、巻き込み〔involvment〕、規範観念〔belief〕)が、日本の教育現場でどのように作用・顕現しているのかを分析しました。主な結果として、学校に対する愛着、学校における活動が、男子はそうでもないが、女子については、非行への抑止につながっていることが統計上有意だと認められることを報告しました。
竹中 祐二准教授(北陸学院大学・人間総合学部社会学科)は、大江氏と同じテーマセッションで、「Perspectives towards volunteers in offender rehabilitation in Japan(日本における更生保護ボランティアの展望)」を発表しました。保護司制度を中核とする日本の更生保護ボランティア、およびその長所と問題点について、日本社会の在り方に照らして検討し、更生保護におけるボランタリーな仕組みは、「共助」の意識によって中心的に維持されていることを統計による分析を用いて示しました。
ディビッド・ブルースター 氏(金沢美術工芸大学・講師) は、日本犯罪社会学会において日本語で研究成果を発表した経験を踏まえながら、国際学会において外国語で報告をすることの困難について言及し、海外報告に積極的に取り組む本日の研究会の報告者らを労いました。
ブルースター氏は、テーマセッション「Criminalization and decriminalization: drug policies in historical and comparative perspective(犯罪化と非犯罪化:歴史的そして比較的視点における薬物政策)」において、「Illegal drug policy in Japan: Perspectives of practitioners(日本における違法薬物政策:実務家の見解)」について発表しました。これは4年間にかけて日本で進めてきた研究の成果となるものです。ブルースター氏は、『違法薬物政策に携わる実務家は、政策の目的として「薬物の無い自律的な生活を促進する」ことに見解の一致が認められるにも関わらず、その目的が「なぜ重要なのか」また「望ましい在り方が何であるか」について意見が分かれている。私は実務家を3つのタイプに分類し、それぞれの関係性や日本の採るべき方向性、実務家間の協働の可能性について検討した』と発表内容を紹介しました。
森久 智江教授(立命館大学・法学部)は、テーマセッション「International and comparative prison research(刑務所に関する国際・比較研究)」に参加し、「A consideration of new scheme of social welfare support for suspects with special needs in Japanese criminal justice system(日本の刑事司法制度における特別なニーズを有する被疑者への福祉的支援に関する新たな枠組みの検討)」を発表しました。森久教授は『海外学会において発表する際に、報告の核心的な話をする前に必ず触れる必要のあることがある。例えば日本刑事司法制度の全体の仕組みや検察官の権限の大きさなどを説明しなければ、問題関心を理解してもらえない』と指摘します。森久教授は、刑事司法と福祉の連携が進んでいる近年の傾向に触れながら、特別調整制度(出口支援)と定着支援センター(入口支援)の機能について紹介。これらの取り組みについて、福祉の専門家ではない検察官が大きな権限を持ち、再犯防止を第一目標とした制度として運用されていることの問題点について批判的に検討をおこないました。